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第四十九話 討酔撃

13階層目へ向かっているが、気になる事があるので確認だ。


紙 「なあ、この世界のダンジョンの仕様だとダンジョンボスの階層は、いきなりダンジョンボスの魔物がいるんだよな?」


お面 「神域の情報だとそうでやすね。」


赤熱 「精霊からの情報だと次が最終階層だ。」


白熱 「ゴンちゃんの因子から作られた混沌・始源竜カオス・オリジナルドラゴンが一匹いるだけだな。」


雷壁 「空中戦も可能な広い空間になってる様だぞ。」


遊弋 「ドロップアイテムは、主が調整しないと確実には落とさんのだろう?」


貪婪 「我らはダンジョン踏破が目的では無く、賢者の石とやらの回収が目的だったな。」


ゴンちゃん 「主様、ここから次の階層の調整は可能でしょうか?可能なら調整した方が良いと思います。」


そうだな。調整するか。

ここからでも影響は無いだろう。階段もあと少しで出口だからな。


紙 「分かった。俺もダンジョンの設定調整をした方が良いと思って、確認したんだよ。調整してしまおう。」


完成図書と施工図を使って調整を行う。


紙 「かなり広いな。広さは一瞬で片付けるから変更無しで良いや。ダンジョンボスのドロップ品の設定を調整しておこう。ん?賢者の石付き錫杖はドロップ品じゃ無いぞ。…ダンジョンボスのドロップ品を回収すると召喚されるのか。」


お面 「召喚でやすか?転移じゃねーんで?」


紙 「ああ。実質は転移させるようだが、召喚と言うことになってるようだ。気になるので根神さんに確認しておこう。」


神託通信で根神さんを呼び出す。


紙 『根神さん、応答願います。』


根神 『創平さん、どうされました?』


紙 『確認したいことがありまして…。』


根神 『確認ですか?次の階層がダンジョンボスの階層ですね。普通に倒して問題無いですよ。創平さんの力も影響出てないです。』


紙 『いえ、そうではなくて、賢者の石付き錫杖の出現説明に違和感がありまして。』


根神 『違和感ですか?ちょっと待ってください。…あ、なるほど。転移なのに召喚となってるからですか。これは錫杖の管理をダンジョンコアと星の両方で行っているせいですね。気にしなくて大丈夫です。』


紙 『回収したのに、星に再度吸収されるとかは?』


根神 『その辺は問題無いです。資格が無い者は錫杖に触れることも出来ません。錫杖に触れた時点で所有者として認められます。星は複製も出来ませんから、普通に回収して貰えば問題ありません。創平さんが特殊能力で複製するのは可能ですけど。』


紙 『分かりました。回収後の取り扱いについては、神域で相談で良いですか?』


根神 『それで大丈夫です。まあ、創平さん管理で良いですよ。創平さんが所有している分には、特に問題無いですから。』


紙 『面倒な仕事が増えるのは勘弁なんですけど。』


根神 『あはは。そう言わずにお願いします。では、回収お願いしますね。』


神託通信切られた。

問題無い事は確認できたけど、仕事を増やされた。

まあいいか。


紙 「皆、この世界の管理担当の女神様に確認したら、普通に回収で問題無いそうだ。転移なのに召喚になっているのは、錫杖の管理がダンジョンコアと星の両方で行っている影響だってさ。」


お面 「なるほど。管理上の問題でやすか。」


紙 「呼び方だけなので、気にする必要は無いってよ。」


ゴンちゃん 「主様、どうやって倒しますか?」


紙 「そうだなぁ。ダンジョンの魔物とは言え、ゴンちゃんの複製だ。成仏できるように倒してやろう。」


ゴンちゃん 「成仏ですか?槍聖の勇者が信仰していた”仏教”の教えに出てくる奴ですか?」


紙 「ああ。心安らかに死んで貰おうと思う。」


ゴンちゃん 「どう死んでも死は死だと思いますけど。」


紙 「まあ、苦しまずに一瞬で倒されると思ってくれればいいよ。」


ゴンちゃん 「ああ、そう言うことですか。複製とは言え、自分の断末魔を聞くのは気分が良く無いですからね。」


紙 「まあ、倒し方は考えたから大丈夫だ。」


そう言って最終階層へ向かう。



◇◆◇◆◇◆



最終階層の13階層へやって来た。

ゴンちゃんの複製が寝転んでいる。

既に気付いてはいるようだが、おっさんの俺を矮小な存在と判断しているようだな。

そう感じるようにしているんだが、ダンジョンコアから情報提供やコントロールは受けていないって事か。

まあ、ダンジョンコアはダンジョン踏破されても別に困るわけでもないからだろう。

錫杖の封印結界で力を使ってるしな。余力が無いのかもしれん。


紙 「さて、こいつでサクッと処理してしまおう。」


猿棍”酩酊酒乱”を取り出した。


ゴンちゃん 「主様、それでは倒せないのでは?」


紙 「そんなことは無いさ。見ればわかる。」


そう言って、ダンジョンボスのゴンちゃんコピーの首を一瞬で刎ねる。


紙 「猿棍”酩酊酒乱”、”討酔撃(とうすいげき)”。美酒に陶酔しながら成仏せよ。」


ゴンちゃんコピーは美酒に酔ったようなイイ笑顔で倒れていった。

陶酔状態であるので、苦痛は感じなかっただろう。断末魔も無かったし。

今回はドイツのフルーツワインで、10種類の果実の果汁を発酵させて作られる甘口の酒の味をイメージした。

ゴンちゃん好みかと思ってな。カクテルと迷ったんだけどね。

俺は酒嫌いだが元工事屋だったので、付き合いで飲むことが多かったから、酒もある程度は飲んだことがあるんだよ。

これでも大手と言われる会社にいたんでね。海外の現場に行ったこともあるから、変わった酒や食い物を飲み食いすることもあってさ。


ゴンちゃん 「あ、主様、レアアイテムの猿棍”酩酊酒乱”とは言え、猿棍ですよ!?その切れ味は一体…。」


紙 「ゴンちゃん、俺は神の同類だぞ。神レベルの達人技も使える。もしかして、鋼の様な金属の刃物じゃないと物質を切断できないと思ったのか?」


ゴンちゃん 「い、いえ。風属性の魔法で切り刻むことは出来ますし、牙や爪で切断できますから、そのようには思いませんが、使ったのは猿棍なので打撃武器のはずでは?」


紙 「まあ普通はな。だがな、良く練った氣や研ぎ澄ました魔力を通せば、紙や布でも肉を切り裂き骨を断つ。こんな芸当は達人しかできないが、俺はこれでも神の同類なんでね。竜種であろうと真っ二つだ。ゴンちゃんは俺が手刀で、竜や亜竜を切り裂けるの知ってるだろう。体験してるし。」


赤熱 「我が主は相変わらず出鱈目だ。」


白熱 「我らとは存在自体が違うからな。」


雷壁 「我らの主は何なのだ?」


遊弋 「主は神の同類と言ったが…。」


貪婪 「主の正体が何であろうと、我らの所有者よ。武具である我らは所有者と共にあるのみだ!」


紙 「気にする必要は無い。その内分かる。一応人でもあるからな。異世界人ではあるが…。」


説明していたら、ダンジョンボスのドロップ品が出たようだ。

回収しないとな。


紙 「ドロップされたのは、宝箱に魔石、肉か。皮は無いんだよな。宝箱に革製品その他が入っていると完成図書に書いてあったけど…。」


宝箱を開けて中身を確認する。


紙 「本と何だこりゃ?竜の皮の革手袋と革の作業服上下にブーツか。でもデザインが変わってるな。」


鎧一式じゃ無くて、革の作業着一式とか俺専用装備かよ?

デザインが変と言ったが、溶接作業用の革製作業着上下みたいな感じだ。こんなの久々に見たぞ。プラント設備の大規模燃料配管の溶接をやる作業員が着ていたのに似ている。溶接やる人は耐火エプロン使う方が多いんだけど、作業によっては耐火服の作業着を着る時があるんだよ。俺の仕事は施工管理だったんで、作業は基本的にしなかったけどね。書類作成とか図面描いたり、作業調整が仕事だからさ。溶接の資格も持っているけど、得意では無い。

ドロップアイテムの作業着は素材がドラゴン素材なので、とんでもない防御力だな。サイズ自動調整などの魔法が色々付与されている。素材と付与魔法で伝説や神話に出てくる装備と遜色無い。

使わないから死蔵されるけどね。

さて、本の方は何の本だ?


紙 「この本は魔導書か。”竜の叡智”となってるな。竜の皮で装丁されているが…。」


お面 「その魔導書は、ドラゴンが使える魔法が一通り載ってる様でやす。読まないと使えない様でやすよ。」


紙 「別に要らないよ。必要な魔法は使えるし。俺はゴンちゃんより魔法使えるだろう?」


ゴンちゃん 「主様と比べられるのは困りますよ。神様でもあるじゃ無いですか。」


紙 「違うよ!神の同類でもあるだぞ!?まだ一応は人間だからな。」


お面 「その内神になりやすがね。」


下らんことを言い合っていると、賢者の石付き錫杖が現れた。


紙 「来たな。目的の品。」


お面 「さっさと回収しやしょう。」


封印結界で守られていたが、問題無く錫杖を掴んだ。

錫杖を掴んだ瞬間に結界は無くなった。


紙 「これで所有者と認識されたのか?意志がある装備の割に何も言わんが…。」


錫杖 「…何故?何故おっさんなの?勇者はイケメンなのがお約束でしょう!!」


紙 「うるせえ!第一声がそれかよ!おっさんで悪かったな。俺の能力で存在を消去してやろうか?カードサイズに紙変換”カード紙”」


錫杖を紙変換してやる。

ヤヴァイと思ったんだろう。念話で謝って来た。


錫杖 『すみませんでしたぁ!我が主は、ナイスミドルのおじさまです!存在を消すのは勘弁してください!』


紙 「全く。危険物の癖に文句言うんじゃない。仕事増やすなよ。」


錫杖を元に戻す。


錫杖 「主様、文句言ってすみませんでした。お詫びに美女に変身しますから!」


錫杖が輝き、身長160センチ程の人型が現れた。

他の装備と違ってデカいな。

…美女?これがか。


錫杖 「うふ~ん。どうよ?この”豊満ぼでぇ”は?おばちゃんサービスしちゃう!」


胸を腕で挟むポーズをしやがった。

おい!自分でおばちゃんとか言いやがったぞ。

それに豊満だとう?肥満の間違いだ!


紙 「何が美女だよ!自分で言ったように”恰幅の良いおばちゃん”じゃねーかよ。ふざけんな!」


そうなのだ。錫杖の見た目は正式名が分からんが、おばちゃんパーマと呼ばれる髪型の太ったおばちゃんなのだ。

服装は何故か巫女装束に似た感じになってる。

太っちょおばさんの巫女さんは、見ていてキツイものがある。


錫杖 「主様、冗談ですよ!ちゃんと美女になれますから。あ、自己紹介がまだでした。我は、あ、この姿の時は私と言う方が良いですね。私は星屎石(ほしくそいし)と賢者の石で出来た錫杖”(あらがね)”です。主様が凄まじい力の持ち主なのは、そこの混沌・始源竜カオス・オリジナルドラゴンの巣にいた時に解っていました。」


錫杖の素材である賢者の石は説明を省くが、星屎石(ほしくそいし)について説明しよう。

星屎石(ほしくそいし)は惑星が出来る時に集まる小惑星そのものだ。大きさが違うが隕石と考えて間違いない。但し、錫杖”礦”に使われている星屎石(ほしくそいし)は、この世界の原初の惑星であるこの星に存在する全ての鉱石や元素が合わさった合金の様なモノで、ある意味原初の惑星そのものだ。色々と環境が出来る前の状態の惑星と同様な感じだ。とんでもない素材なのは、分かって貰えると思う。星屎石(ほしくそいし)だけでも問題がある素材なのに、賢者の石が付いているんだから危険極まりない。


紙 「そうかよ。所有者の俺に迷惑掛けることはするなよ。取り合えず仕舞っておくから、錫杖に戻れ。」


礦 「待ってください!この姿なら文句ないでしょう?」


礦が輝き、漫画とかに出てくる感じのとんがり帽子とローブの魔女の姿になった。見た目は、15歳位の女の子だな。

まあ、美少女と言える見た目だ。


紙 「別にどうでも良いが、杖無しでは目立つだろう?お前自体が魔法の発動媒体とは言え。魔剣と同じぐらいの大きさにはなれないのか?」


礦 「大丈夫です。指輪型の発動媒体もありますから。人型の時は、錫杖の(かん)が指輪になるので問題ありません。私自身も魔法を使えますから。」


お面 「旦那、どうするかは後で考えやしょう。取り合えず、ダンジョンから出やしょうや。礦も大きさは調整可能ですぜ。とぼけてやすが。」


そうだな。

外に出る転移魔法陣があるので、それを使うとしよう。

後は、ダンジョンコアに管理権限を自動で戻すようにして、設計変更した各階層を戻しておく。

取り合えず、外出たらドロップ品の確認してから城に戻るとしよう。

錫杖”礦”は、この世界に存在する魔法は一通り使える。星屎石(ほしくそいし)自体が全属性の魔晶石も含んだ素材だからな。

但し、星と違って生命体では無いので魔力を生み出すことは出来ない。無理矢理魔力を生み出すことも可能だが、その場合は賢者の石を消耗して魔力を生み出すことになる。

基本的には魔晶石に蓄えられた魔力を使うことになるが、所有者がいる場合は所有者からの魔力供給で賄われる。

賢者の石から魔力を生み出すのは危険が伴う。制御が困難だし、暴走する可能性が高い。俺や根神さん達の様な存在でないと扱うのはヤヴァイだろう。自立活動して、周囲や地脈からエナジードレインなどで魔力を際限なく集めることも出来るからな。…まあ、許容量が無限では無いので、途中で暴走するけどね。暴走すると錫杖”礦”は周囲を巻き込んで消滅するだろうけど、空間に歪が出来て次元管理局の仕事が増えるし。隣接している世界に影響も出るから迷惑だ。


…外出たら休憩しようか。

色々と疲れたよ。精神的にさ。

肉体的には疲労しないから、無理をしてしまうので困るよ。

余り頑張りたくないんだけどねぇ。

やれやれだ。




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