第四十五話 酩酊状態?
9階層へ上がって来た。
!!
いきなり攻撃されたぞ。
投石だったが、”熨斗紙返し”の設定を調整しておいたので、投げられた石は猛スピードで敵魔物へ跳ね返された。
…死んだな。
紙 「魔物がいるのは分かっていたが、いきなり投石とはな。」
お面 「”熨斗紙返し”の設定調整しておいて正解でやすよ。」
攻撃無効化もあるから問題は無いんだが、設定調整したのは理由がある。この階層が猿系の魔物の場合、ゴリラ系の魔物がいると嫌だったからだ。
読者さんは動物園のゴリラがいる檻に注意書きがあるのをご存知だろうか?
注意書きには”ゴリラは糞を投げる場合がある。”と書いてあるのだ。
そのことを思い出したので、”熨斗紙返し”の設定調整をしたんだよ。障壁を張っていたので問題は無いけど、保険でね。
ゴンちゃん 「ここの階層はジャングルですか。見通しが悪いですね。」
赤熱 「我らでは戦いにくいな。」
白熱 「ああ。火を使うのは不味いな。剣で倒すにしても木が邪魔だ。」
雷壁 「我の電撃も不味いぞ。」
遊弋 「我も効率的ではないな。」
貪婪 「我も同じだ。」
鬱蒼としたジャングルでは、手持ちの武器だと効率が悪い。どうするかな?
取り合えず、さっき倒した魔物のドロップ品を回収するか。
紙 「さっきの魔物のドロップ品は魔石だけかよ。」
お面 「保存データのデータシートによると”ゴウ”と言う、テナガザルの魔物のようですぜ。」
ゴウ?山海経に出てくる怪物かな?手が長くて物を良く投げるんだったな。
特殊な漢字なんだよな”ゴウ”って。確か喧々囂々の囂の異字だっけ?
それはどうでも良いか。
この階層もフィールド型では無くて洞窟型だが、鬱蒼としたジャングルになってるので、天井が良く見えない。今いる場所に洞窟の壁があるので、分かるんだけど。
紙 「取り合えず、完成図書でこの階層の確認をしよう。可能なら邪魔なジャングルの植物を消して撤去だ。」
ん?よく考えたら植物だから、”吸い取り紙”で水分を吸い取れば一気に枯れるか。…でも、その後始末が面倒だな。”紙変換”するのも同じようなもんだし。
素直に施工図で調整しよう。
紙 「ゴンちゃんさ、特に貴重な食用植物は無いようだから消しても問題無いよね?」
ゴンちゃん 「主様、気にしなくて良いですよ。暗黒大陸の過酷な環境に植物も対応して成長が早いですし、雑草並みに繁殖力も高いですから。必要ならダンジョン出てから採取できますよ。」
そう言うことなら気にせず処理してしまおう。植物のデータは保存したから、もし必要なら後で用意するか。
他の階層同様処理を行った。
この階層にいた魔物は以下の通り。
ゴウ:ドロップアイテムは、魔石。中国の山海経に出てくる怪物の魔物。いきなり投石してきた魔物だ。お面が説明したようにテナガザルの魔物だ。投石以外に中国拳法の通背拳の様に、腕を鞭のように伸ばし、柔らかく素早く遠くへ伸びる打撃を特徴とする攻撃をしてくる。
朱厭:ドロップアイテムは、魔石。中国の山海経に出てくる怪物の魔物。見た目は一般的な猿で、頭部が白色で足は紅色。精神攻撃をしてきて、同士討ちさせようとする。
足訾:ドロップアイテムは、魔石。これも中国の山海経に出てくる怪物の魔物。見た目は猿に似ているが、鬣がある。さらに牛の尻尾を持ち、両腕の全体には花紋がある。馬と同じ蹄を持つ。こいつは叫ぶ声で平衡感覚を麻痺させる攻撃をしてくる。
挙父:ドロップアイテムは、魔石。中国の山海経に出てくる怪物の魔物。見た目は猿のようで腕には模様があり、豹と同じ尻尾を持つ。投擲が得意な魔物だ。
ここまでが他の階層で言う通路の魔物だ。ここの階層では、宝箱は3つで中身は酒だった。それぞれの宝箱にワインの赤白ロゼの450リットルサイズ(パンチョンタイプ)が一樽ずつ入っていた。合計三樽だ。宝箱を開けたら、いきなり樽になったから驚いたよ。
ゴンちゃんが言うには、酒が好きな賢い猿の魔物がいるので、このワインも猿酒の一種になるそうだ。
紙 「このワインって猿酒なの?例の樹液とかが酒の植物の奴じゃ無くて?」
ゴンちゃん 「恐らくは。ワインを生み出す植物もありますが、これは猿酒です。赤い印が樽にありますよね。これが目印です。酒を造る猿が同じ印をつけますので。」
確かに印の様な酒を造ったであろう、猿の似顔絵みたいなのがある。
紙 「植物の酒を入れたわけじゃ無いのか?」
ゴンちゃん 「その場合は植物の絵が描いてありますよ。」
なるほどね。
話がそれたが、階層ボスの魔物と周囲にいた魔物は以下の通り。
通臂猿猴:ドロップアイテムは、秘伝書、魔石。中国の伝説上の猿の魔物。通臂猿猴の左右の腕は1本に繋がっていて、右腕を伸ばせば左腕が短くなり、左腕を伸ばせば右腕が短くなる性質を持つ。中国拳法の通背拳の名の由来の猿だ。ドロップアイテムの秘伝書は、武術・格闘系の魔導書みたいなもので、通臂猿猴の秘伝書は所有すると通臂猿猴の様に左右の腕が1本に繋がった状態になるので、トリッキーな攻撃が出来るようになる。所有者登録は、秘伝書の巻物に魔力による拇印を押すみたいだ。
長右:ドロップアイテムは、水属性の魔晶石、魔石。中国の山海経に出てくる怪物の魔物。見た目は猿に似ているが、耳が四つある。この猿は水属性の魔法を使ってくる。
猩猩:ドロップアイテムは、猿棍、秘伝書、魔石。地球の古典書物に登場する架空の動物の魔物。見た目は猿に似ていて、人語を話すことが出来る知能の高い赤い毛の獣。酒好きで猿酒を造ったりする。ドロップアイテムの猿棍は酒を生み出す竹・蟒蛇竹製の棒で、魔力を与えると酒を生み出すことが出来る魔道具になっている。前に酒を生み出す魔道具なら作れると考えたが、まさかドロップアイテムで出てくるとはな。付与魔法が色々掛かっているので、武器としても超一級品のレアアイテムだ。意志を持つ装備では無いが、”酩酊酒乱”と言う銘が付いている。これで攻撃を受けると酩酊状態になるようだ。秘伝書は”酔棍”の秘伝書だ。中国拳法にある奴だな。これも所有することで技が使えるようになる。棍の使い方だから、武器持っていないと意味無いけど。猿棍がドロップアイテムなのは、その辺が理由だろう。秘伝書とセットで所有者登録される仕組みになってるし。
山魈:ドロップアイテムは、秘伝書、魔石。中国神話に出てくる怪物の魔物。こいつが階層ボスだな。見た目は黒い巨大な猿で、腕力は非常に強力だ。豹よりも早く走ることが可能で、徒手で虎を切り裂くことが出来るほどだ。ドロップアイテムの秘伝書は”酔猴拳”の秘伝書だ。猿の動きを真似た象形拳の一種”猴拳”の一つで、酒に酔った猿をあらわす拳法だ。秘伝書を宝箱に入れて無いとか、ダンジョンコアが地脈の力を節約したのか?完成図書の情報通りだから問題は無いけど。
紙 「うーん。この階層は酒関係のドロップが多いな。秘伝書の巻物まで出るとは思わなかったが。」
お面 「ダンジョンボスがゴンちゃんコピーだからでは?」
皆の視線がゴンちゃんに向く。
ゴンちゃん 「な、何ですか?酒は好きですよ。悪いですか?私はドラゴンですからね!」
悪くは無いけど、ゴンちゃんに酒の罠や攻撃は効果がありそうだね。
まあ、それは置いておいて、次の階層へ行くとしよう。
◇◆◇◆◇◆
ダンジョン探索後、ウォーワゴンの確認が終わった時に、ゴンちゃんがおかしなことを言いだした。
ゴンちゃん 「主様、お願いがあります!」
紙 「ん?何だ。時間かかるやつなら城に戻ってからでいい?」
ゴンちゃん 「出来れば城へ戻る前にお願いしたいんですけど…。」
紙 「別にいいけど、お願いって何?」
ゴンちゃん 「ダンジョンのドロップアイテムに猿棍”酩酊酒乱”があったじゃ無いですか。あれで私を攻撃してくれませんか?避けませんので。」
紙 「待て待て!何で味方を打ち据えないといけないんだよ?」
ゴンちゃん 「あの猿棍で打たれると、使用者が考えた酒を飲んだ状態で酩酊状態になるんですよね?飲まなくても酒の味を感じて、酩酊状態になれるのを試してみたいんです!」
紙 「いやいや、酒飲みたいなら”酩酊酒乱”に魔力を与えれば出せるから。わざわざ攻撃受けなくても良いって!」
ゴンちゃん 「主様、せっかくなのでお願いしますよ!」
物好きだなぁ。
まあ、確かに他の奴には見られたくないだろうね。酒好きとは言え、この行為は理解できないからなぁ。
仕方が無いので、軽~く叩いてみた。考えた酒は”取り合えずビール”と言うことにした。
ビール好きに怒られそうだけど、城に戻る時は酔いを醒まさないといけないしさ。
パシッ。
ゴンちゃんを軽~く叩いてみた。
ゴンちゃん 「はああ。いい気分ですぅ~。美味い酒の味ですよ~。」
いきなりほろ酔い気分になったぞ。
紙 「一応試したから、終わりね。」
ゴンちゃん 「そんなぁ。ワインもお願いしますよぉ。」
ゴンちゃんが縋りついてきた。
…仕方が無い。
ワインを考えて軽~く叩く。
紙 「これで終わりだからね!」
パシッ。
ゴンちゃん 「ああっ~。気持ちいい。打たれて気持ち良くなるとか、変な趣味に目覚めそうですよ~。」
問題ありそうなので状態異常回復の魔法を掛けて、酔いを醒ましてやる。
紙 「はい!もう閉店だよ。」
ゴンちゃん 「むう。残念ですが仕方がありません。」
妙なことを言いだすからだよ。全く。
変な事をするのは根神さんや神代さんでお腹いっぱいだからね!
やめてくれよな。
装備品どももゴンちゃんを可哀相な生物を見るような視線を送ってるし。
従魔が変な事をすると主の俺も変に見られるだろう?
悪名を広めるのも仕事だけど、変な評判は困るよ!
勘弁して欲しい。




