第四十三話 オーバーテクノロジー
7階層まで上って来た。
今までの階層と様相が違う。
紙 「ここのダンジョンはフィールド型では無い筈だが…。」
お面 「旦那、上を見えてくだせえ。フィールド型じゃありやせん。」
ゴンちゃん 「洞窟型ですが、フィールド型と見紛うのも無理ないですよ。」
7階層は洞窟ではあるのだが、無茶苦茶広い空間が広がっている。天井面は高く500メートル位で10km四方位の広さの階層が広がっている。曇りの日位の明るさもある。
…洞窟の中なのに草原と森、池があって川もある。まあ、池と川は良いとしよう。地底湖や地下水脈ってのはあるからさ。草原と森って何だよ?空の代わりに天井は鍾乳洞っぽい感じで発光している。
んん?よく見ると太陽っぽい照明らしきものがある。あの太陽っぽいのどこかで見たことがあるぞ。…あ、あれだ!アルゼンチンとかの国旗に書いてある顔つきの太陽だ!アレそっくりだ。表情はラリってる感じで可笑しいけど。国旗の奴は五月の太陽とか言うんだったかな?
紙 「うーむ。完成図書と施工図使えるかなぁ?」
お面 「大丈夫でやしょう。フィールド型でも見た目だけでやすから。」
紙 「まあ、そうだよな。気にしても仕方が無い。処理してみよう。」
特に問題無く処理できた。まあ、土木工事でも完成図書や設計図、施工図は使うんだし、使えて当然か。この階層は部屋が無いので洞窟の一本道にしたぞ。天井高さも50メートル程度にしてみた。道の途中を池にしてある。水辺の魔物がいたからさ。設計変更前は池の中に島になってる場所があったけど、そこに階層ボスはいた。
今は池の先に階層ボスはいる形だ。
魔物の出現数ぎりぎりの広さにしたので、魔物が身動きできない状態になってる。下手すると魔物同士で圧死するかもね。…あ、それでも良かったのか?でも小説的にそれは問題だな。
痛い!作者さん止めて!失言でした。
紙 「飛行可能な連中がいるなぁ。天井の高さをもっと下げた方が良いかな?」
お面 「大丈夫でやすよ。今回は”石化”で処理でやしょ?」
ゴンちゃん 「この階層の魔物は石化耐性は無いですよ。他の特殊な能力はありますけど…。」
赤熱 「今回は我らの攻撃が効かん魔物がいるな。」
白熱 「ああ。魔法を使うなら効果はありそうだが、我らの力は火属性だからな。」
雷壁 「主が対応する方が良いだろうな。我の電撃は水場の魔物には効果抜群だとは思うが…。」
遊弋 「我は今回見守るとする。前回勝手をやってしまったからな。反省だ。」
貪婪 「我の怪光線で対応するか?主よ。」
紙 「石化魔法で対応する。直線だからゴンちゃんの石化ブレスでも良いんだがな。」
ゴンちゃん 「宝箱があるようですので、ブレスは使わない方が良いと思います。」
そうか、忘れていた。宝箱があったんだっけ。まあ、潰れないように魔物から離してはあるけど、魔物を倒すと出現するのもあるからね。ブレスの巻き添えを食う可能性は高い。じゃあ俺の石化魔法で処理する方が良いな。ゴンちゃんの石化魔法は俺ほど細かく調整出来ないんだ。射程もそれほど長く無いしね。俺の神使になってるとは言え、世界に影響するような無茶苦茶な力が使えるわけでは無い。ドラゴンだから元々能力は高いけどさ。地球の原爆や水爆並みの力をホイホイ使えるわけでは無いんだよ。魔力が無限じゃ無いから。この世界の街とか簡単に破壊できるけど、亜人国の機竜とか比較的攻撃力の高い生物に多数で攻撃されれば倒される可能性はあるんだ。無敵では無いから。竜種は基本的に単独行動ってのもある。超人レベルだった歴代召喚勇者の同胞よりはずっと強いけどね。この世界で無敵とか無双出来るのは存在力の大きさの関係で、俺と根神さんだけだ。現状存在力が高くなりそうな生命体はいないし。魔物や大型生物は知能が高くても食欲などの本能を優先するしね。まあ、体が大きかったりする分、肉体を維持するのがそれなりに大変だから。機人は知能が高くて合理的思考をするけど、論理的過ぎて感情と言う面で精神的な成長がしにくい生命体だから、存在力が高まって高位存在にはなりにくいんだよ。分裂で増える生命体なのも影響しているらしい。科学力で肉体的・物質的強化は図れるとは言えね。次元管理局にも機人のような金属生命体出身の神はいるそうだけど、数は少ないそうだ。
話がそれたな。
紙 「さっさと処理してしまおう。”石化”」
他の階層同様、ドロップアイテムを回収する。水中にいた魔物もいたが、ドロップアイテムは水面に浮かんでた。…桶と言うかタライに乗ってね。木製の。仕様と言われれば、それまでだけど、微妙な気持ちになる。ダンジョンの水中にいる魔物のドロップ品って、シャボン玉の様な演出できなかったのかよ?タライは無いと思うんだが…。銭湯で見かける黄色い洗面器では無いだけ良いか。アレだと色々問題になりそうだ。
気を取り直して、出てきた魔物の説明をしよう。
馬面:ドロップアイテムは、”冷却”の魔法スクロール、魔石。地球の妖怪を扱った児童書に出てくる妖怪の魔物だ。人身馬頭の魔物で口から冷気を吐く。この冷気は麻痺効果があるブレスの一種だ。魔法スクロールの”冷却”の魔法は魔力によって威力が変わる。冷やす魔法なので生活魔法よりだな。攻撃魔法には”凍結”や氷系の魔法があるから。
野馬:ドロップアイテムは、蹄鉄、魔石。島根県邑智郡日貫村に伝わる馬の妖怪の魔物。人を食らう一つ目の馬だ。ドロップアイテムの蹄鉄は、純度の高い鉄製。ファンタジー金属では無い。
鹿蜀:ドロップアイテムは、精力剤、毛皮、魔石。中国の山海経に出てくる怪物の魔物。馬に似ていて、白い頭部・虎に似た模様が体にあり、一本の赤い尾を持つ。この魔物の毛皮はアレの回春効果がある。まあなんだ、男性自身に衰えがある奴には嬉しい毛皮だな。アレの回春効果であって、若返り効果は無いぞ。女性には不感症を治す効果とアレの快感アップ効果がある。
矔疏:ドロップアイテムは、角、魔石。中国の山海経に出てくる怪物の魔物。ユニコーンの様な一角馬だ。火や熱の攻撃を角で吸収する能力がある。魔剣が攻撃が効かないと言っていたのは、この能力のせいだ。普通に刃物で切れるけどね。
駁:ドロップアイテムは、角、”盾”の魔法スクロール、魔石。中国の山海経に出てくる怪物の魔物。これもユニコーンの様な一角馬だ。白い体と黒尾で一本角の見た目の馬だが、虎や豹をも捕食する肉食の魔物だ。武器での物理攻撃を角で展開する”盾”の魔法障壁で無効化する。徒手格闘や魔法攻撃は通用する。あ、武器を使った物理攻撃でも”氣”や”オーラ”を武器に纏わせる攻撃は防げない。結構強い魔物。魔剣の攻撃が効かないと言っていた魔物は、主にこれだな。因みに貪婪の攻撃は魔力を纏っているので通るぞ。エナジードレインでも倒せるし。
馬頭:ドロップアイテムは、袖搦、魔石。仏教で地獄の獄卒とされる怪物の魔物。馬の頭で人身を持つ。ミノタウロスの頭が馬版だな。袖搦は江戸時代の捕物で使う道具だ。
ここまでで紹介した魔物が他の階層で言う通路の魔物だ。この階層独自かは不明だが、水辺の魔物は以下の通りだ。
ケルピー:ドロップアイテムは、”水上歩行”の魔法スクロール、魔石。地球のスコットランドに伝わる水辺の幻獣の魔物。見た目は黒・灰・栗毛の普通の馬。地球の伝承同様に人食いだ。この魔物は知能が高く妖術が使える。限定的な変化術の”人化”で人に化けて水中に引きこんで捕食する。淡水の池や湖、川にいるが、活動域は水上・水中だけでなく地上も可能だ。但し、水分補給が定期的に必要だ。
アハ・イシュケ:ドロップアイテムは、”水中歩行”の魔法スクロール、魔石。ケルピー同様地球のスコットランドやアイルランドに伝わる水辺の幻獣の魔物。生息域がケルピーと違って海や塩水湖の中だ。この階層の池はいくつかあり、その中に塩水の池もあった。別に淡水や地上での活動も出来る。生息域が違うだけで他はケルピーと同じで、人食い馬だ。妖術が使えるのもね。
水馬:ドロップアイテムは、”水中呼吸”の魔法スクロール、魔石。”水中呼吸”の魔法は魚のエラでは無いが、水に含まれる酸素を皮膚から吸収して、水中でも呼吸できる魔法だ。水と接触する必要があるので全身濡れることになる。水馬は中国の山海経に出てくる怪物の魔物。水中に生息する。ケルピーやアハ・イシュケ同様地上での活動も可能だ。見た目は一般的な馬に似ているが、脚の上に花紋、牛の尻尾を持つ。鳴き声は人の怒鳴り声に似ている。
ここから紹介するのが階層ボスがいた池の中の島の魔物だ。他の階層の階層ボス部屋だと思う。
ケンタウロス:ドロップアイテムは、弓、矢、矢筒、魔石。馬の首から上が人間の上半身に置き換わった半人半獣の魔物。地球のギリシア神話に出てくる奴の同類。人族程度の知能がある。ドロップアイテムの弓一式は生体装備だ。好戦的なので危険。
孰湖:ドロップアイテムは、”飛行”の魔法スクロール、魔石。中国の山海経に出てくる怪物の魔物。ペガサスの様に翼のある馬だが、顔は人面だ。見た目は馬の体に鳥の翼を持ち、人面で蛇の尾がある。気色悪い見た目だが、人に抱擁されるのが好きと言う魔物。人を見ると抱擁されたくて近寄り、興奮して噛みつく。力が強いので、噛まれると死ぬ場合が多いから危険だ。孰湖に悪気が無いので困る。ドロップアイテムの”飛行”の魔法は初歩の飛行魔法で、地面から多少浮かぶことが出来る程度だ。魔力消費も多い。使い方次第の魔法だな。
戎宣王屍:ドロップアイテムは、宝箱、魔石。中国の山海経に出てくる怪物の魔物。こいつが階層ボスだ。見た目は、赤い体をしている普通の馬で頭は無い。肉食の魔物だ。
この階層の宝箱は3つで、中身は上級魔力回復薬だ。階層ボスの宝箱には本が入っていた。
紙 「この階層では魔法スクロールが出ているから、魔導書かな?」
お面 「…旦那、魔導書じゃありやせんぜ。神域で聞いたアレでやすよ。」
紙 「アレって?…あ、他神さんの世界で作られた奴か。」
他神さんと言うのは、この世界の基になった消滅した世界の内の一つ出身の神様だ。神域で情報を確認したら、根神さんの知り合いだったので連絡したんだよ。真面目な感じの男神だったよ。見た目は人間に似てるけど角と蝙蝠っぽい翼があった。…神様と言うより漫画に出てくる悪魔のイメージの方が近いかも知れない。他神さんの出身世界は、魔道科学と言う魔法と科学・錬金術が共存して高度な文明を誇っていた世界だったそう。但し、極端な事をする研究者も多く、研究者の色々な実験で環境破壊やら資源枯渇やらで消滅したそうだ。俺は閲覧制限があるので詳しく教えて貰えなかったよ。宝箱に入っていた本は、他神さんの出身世界の研究者の造った魔法と科学と錬金術の結晶と言えば聞こえは良いんだが、色々と狂っている研究者の研究成果らしい。危険は無いらしいんだけど、この世界にはオーバーテクノロジーの品だって。変な残滓が取り込まれたもんだ。
ゴンちゃん 「主様、その本は何ですか?」
紙 「えっ?これ?後で説明するよ。名称だけ教えておこう。これは、”魔道科学書 ウォーワゴン(馬)”だ。ここで中身を確認するのは問題があるんだよ。ウォーワゴンの名の通り馬車?ではあるんだけどな。詳細は確認しないと不明なんだよ。危険は無いそうだが…。」
ゴンちゃん 「魔法の馬車で、本の形状になれるという事ですか?」
紙 「そんな感じだな。意志を持つ魔導書とかあるだろう?アレを参考にしたらしい。賢者の石と同じで、消滅した世界の残滓が取り込まれたモノだ。ダンジョンから出た後じゃないと狭いからさ。」
ゴンちゃん 「なるほど、了解です。」
魔道科学書の確認は後にして、次の階層へ行く。
今回は階段ではなく、魔法陣式のエレベーターだった。フィールド型っぽい階層だったからね。
◇◆◇◆◇◆
ダンジョン攻略終了後、ゴンちゃんの巣の前で魔道科学書の確認を行う。
本文では探索中だが、魔道科学書の確認をした時の話を先にしておく。
紙 「移動手段はあるから別に要らないけどな。」
ゴンちゃん 「必要なら私が主様を乗せますよ。結界を張りますので、雨などの影響も受けませんし。ヴァンちゃんもいますから。」
そうなんだよねぇ。でも確認は必要だ。魔道科学書を開いて内容を確認する。
紙 「そうなんだけど、一応確認しておこう。…どれどれ。”ウォーワゴン・セットアップ”の呪文で起動・変形するのか。”チェンジ・ブックモード”で本に戻ると。」
呪文を唱えると魔道科学書が空中に浮かび上がり、変形して大きくなった。
…ナニコレ?馬車?
他神さんの情報で、この魔道科学書は魔法生物であり、ゴーレムであり、進んだ科学を活用した自我を持つ品だと聞いていたんだが、スゲー嫌な見た目をしている。
馬車? 「イニシャラ~イズ!所有者登録願いま~す!顔に触ってくださ~い。」
言い方がムカついたので、馬車?に付いている顔に目つぶしだ。
馬車? 「ぎゃあ!痛い。そこじゃない!もうちょっと下!」
何となくエロい台詞に聞こえないことも無いな。などと思いつつ馬車?の顔の鼻を触る。
…ベロ。でかい舌で手を舐められた。
紙 「何しやがる!キタネーな。」
馬車? 「所有者登録完了しました。これからよろし~く、オナシャス!!それでは、チェーンジ・ウォーワゴン第一形態!」
嫌な見た目と言ったが、8輪の付いた赤い人の頭みたいな形だったんだ。分かりやすく言うと赤い巨大な車輪付き生首だな。禿げ頭の。それが変形する。
…これって馬車なの?
紙 「なあ、これって馬車か?」
お面 「馬と言えば馬でしょうが、馬車と言われると微妙でやす。」
ゴンちゃん 「アレは輿と言うのでは?」
そうなのだ。お神輿見たいな感じのをケンタウロス型のゴーレム?魔法生物?どっちか分からんモノが井桁状の棒と言うか台?で持ち上げている。持ち上げているというより、馬の背に棒が載っている?みたいだな。ケンタウロスは連弩?みたいなのを装備してる。
近づくと馬(面倒なので”馬”と呼ぶ。)がお神輿みたいなのを下ろした。お神輿と言ったが、軽ワゴン車サイズで長方形の箱っぽい。…扉と顔が付いてるな。夜間走行用に照明も付いてるみたいだけど”目”が出てきて光るみたいだ。”貪婪”に近いのか?魔法生物でもあるらしいし。
扉を開けると地球のキャンピングカーみたいになっている。広さは大型バスより広い感じだ。個室や浴室まであるな。マジックバッグと同じように空間が拡張されているようだ。空調なども自動で快適な空間になっている。しかもゴンちゃんクラスのドラゴンブレスが十発程度耐えられる防御結界を展開できるようだ。
紙 「中は良いんだけど、目立ちまくって問題になりそうだ。」
馬車? 「見た目は問題あ~りません。普通の馬車に偽装できま~す。それと私のことは”ワゴン”とお呼びくださ~い。」
ワゴン?まあいいけど、話し方がイラッとするな。
色々確認したが、この魔道科学書は水陸空と行動が可能だった。陸上用は馬がケンタウロス、水上水中は水馬、空中は孰湖、偽装はバイコーンの八頭立ての馬車になる。バイコーンについては自分で調べて欲しい。
その他に”ホバーワゴン・モード”がある。これは機動戦闘車っぽい感じで、車輪の代わりにホバーが8個付いている。
武装は魔法生物の生体武装で”魔力砲”と言う魔力の弾を撃つ機銃の様なモノがついている。全方向自動攻撃対応だな。ウォーワゴンなのは嘘じゃないって事だ。
他はムカッとしたのが、”コンバーチブル・オープンカーモード”と言う奴だ。馬車にもオープンカーあるのは知ってるよ。日本だと皇族の結婚式パレードとかで使ったりした記録もあるし。普通あんな感じだと思うだろう?違うんだよ。俺の”ワゴン”は荷馬車になりやがった。トラックで言う平ボディって感じ。何がコンパーチブルだよ!確かに幌馬車の幌を畳んだ感じに偽装してるけどさ。違うと思うんだ。
…確かに性能は良いんだけどねぇ。乗っていて揺れとか全然無い。外の様子も全方向モニターの様なモノがあって分かるし。全環境対応でオーバーテクノロジーすぎる。普通馬車って道以外は走れないし。
紙 「取り合えず使わないから本に戻しておこう。」
だって、八頭立ての馬車とか目立ち過ぎだろう?馬車を見られただけで逃げられたら困るからさ。
使える場合は使うけど。
魔道科学書の確認も済んだし、仕事に戻るとしよう。




