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第三十八話 浄化の火炎

1階層のボス部屋にあった階段から2階層に上っているが、ゴンちゃんから質問だ。


ゴンちゃん 「主様、ボス部屋を移動しましたが、2階層へ行けるのでしょうか?」


紙 「ん?ああ、それは問題無い。ダンジョンは亜空間に展開している領域だからな。部屋位置を移動してはいるが、階段は元々繋がっている場所へ出るようにしているから移動距離も変わらんよ。」


ゴンちゃん 「2階層へ上がった瞬間、攻撃を受けるとかはどうでしょうか?」


紙 「大丈夫だ。俺の魔力による障壁をゴンちゃんには展開しているから問題は無い。俺は攻撃など有害なモノは無効化してしまうからな。」


ゴンちゃん 「なるほど。安全対策は万全という事ですね。」


紙 「まあな。それに2階層は、調整していないのに壁が発光しているようだ。ぼんやりと明かりが見えるし。あの感じだと松明とか火を使うモノでは無いな。」


お面 「警戒はしておきやしょう。手間が増えやすよ。」


赤熱 「我らの出番があると良いが…。」


白熱 「赤熱よ。魔剣である我らの出番が無い方が良いだろう?」


赤熱 「少しは活躍したいでは無いか、白熱よ。」


白熱 「まあ、それはそうだが。我が主は、戦闘目的では無いのでなぁ。」


紙 「お前ら文句言うな。賢者の石付き錫杖を回収する為に来ているんだから、効率優先だ。1階層の消防服モドキもそうだが、変に使われるとこの星の環境に影響があるアイテムも多いからな。あの消防服モドキも放火に利用でもされたら問題だろう?街や村だけでなく、森なんかでも放火自由なアホ装備なんだから。」


ゴンちゃん以下 「なるほど、了解です!」


この世界にも消防服のようなモノはある。難燃性素材はあるから。

この世界の原初の惑星系にあるこの星の環境がおかしくなると、この世界にはクリミナルの存在が結構溶け込んでいる為、仕事が増えると根神さんが言ってたからね。クリミナルの存在が希釈されて、この世界に馴染まないと不味いんだって。だから他の惑星系がある程度できるまでは、管理上この惑星の環境を持たせる必要があるそうだ。そうしないと他の世界に影響が出るだろうって。そんな状況になったら、俺にも協力要請が来るだろうと言ってたし。迷惑な話だよ。

次元管理局に正式所属までは仕事増やしたくない。報酬は出るとは言ってもさ。今でさえ面倒臭いんだから。使用可能な力や知識・情報も制限あるのにさ。

愚痴を言ってしまったが、こんな感じで話しながら、余裕を持って2階層まで上がってきた。

いきなり落とし穴とか罠の類は無いようだ。矢が飛んでくるとかも無かったし、いきなり魔物とご対面も無しだ。千里眼連動型地図(マップ)も使用しているから、問題が無いのは知っていたけどね。お面が言うように用心はしておく方が良い。五感を使って警戒もしているし、魔法で索敵なども併用中だ。

2階層は予想通り松明では無く、壁が発光している。まあ、亜空間で洞窟的環境を再現しているなら、照明に火は使わないか。酸欠や不完全燃焼による一酸化炭素中毒も問題になりそうだ。それだと魔物が駄目になる可能性も高い。ダンジョンの魔物は、ダンジョンコアからの魔力供給によって、食事が不要になっているとは言っても他は普通の魔物と同じだし。あ、死んだ探索者などはダンジョンに吸収されるよ。スカベンジャーがいる階層だと食われるけどね。

1階層に照明が無かったのは、蝙蝠とスライム、蛭に鼠の魔物どもは視覚以外の感覚で周囲を認識できるからだろう。本来探索者が照明を使うだろうし、2階層から明るいのは、魔力切れや照明器具の燃料切れをダンジョンが想定しているのかもしれん。”照明”魔法は以前説明したように一般的な魔法だしね。魔法を使える者なら習得しているはずだ。照明用魔道具は比較的入手しやすいし、油を使うランタンも普及していたはずだ。珍しいところでは”蓄光石”と言う明るい場所で光を蓄えて、暗くなると発光する石があるのだが、それを使った照明もある。但し、日中晴れていないと十分に蓄光されないので使い勝手が悪い。日中光に当てておく必要もあるしね。

話がそれたな。

…1階層より通路が広くなっているな。大型の魔物を配置しているのかな?まあ、気にしないで調整してしまおう。


紙 「1階層同様、完成図書と施工図を使用する。注意してくれ。」


1階層同様2階層も調整する。

…だが、完成図書の情報で気になる事がある。


紙 「2階層も1階層同様ボス部屋まで一本道にしたけど、この階層の魔物って本来群れの奴じゃねーの?」


ゴンちゃん 「地上では群れですね。人型は単体行動もします。ここみたいなダンジョンでは獣型が2,3匹で行動するのが多いですが、単体の時もあります。環境が環境ですから。地上と同じ行動をするのは、フィールド型ダンジョンです。」


お面 「旦那、あまり気にしても仕方がありやせんぜ。」


赤熱 「出番はまだか?主よ。」


紙 「焦るなよ。なあ、魔剣を使って魔物は処理できるけどさ、宝箱って高温とか大丈夫なのか?」


白熱 「温度にもよるだろうが、普通は消し炭だ。中身もな。罠を警戒した探索者が、魔法でこじ開けようとして木端微塵にすることもある。まあ、火属性魔法で爆破したりだからな。”開錠”魔法はあるんだが、持っている者は少ない。魔導書は発見されていて解読もされているが、秘匿魔法になっているぞ。”開錠”魔法の魔法スクロールもドロップアイテムで稀に出るしな。」


おい!駄目だろう。俺たちはヤヴァイアイテムの回収できたんだぞ。

戦力を誇示する必要もないのに、無駄に戦闘する必要は無いし。そういうのはアクション系小説の担当だ。


紙 「それじゃあ駄目だろう。1階層同様魔法で処理するよ。アイテム回収目的もあるから。”開錠”魔法が秘匿なのは仕方が無いだろう?犯罪者扱いされる可能性が高いからな。開錠技術は鍵屋が持っていないと問題だから、技術者の犯罪者扱いはそうされないだろうが、魔法はなぁ。因縁付けられるだろう?冤罪とかもあり得る。」


赤熱・白熱 「仕方が無い。普通に切るなら活躍できるんだがな。」


文句言うなよ。

1階層同様”石化”魔法を使って処理をする。

気になる事があるので、ちょっと確認しておくか。


紙 「なあ、ゴンちゃん。2階層では”石化”魔法を砕けるほど強めに掛けていないんだが、魔物が全部砕け散るのはダンジョンの仕様か?」


ゴンちゃん 「そうですよ。普通に倒しても消えて、アイテムをドロップしますから。石化だと砕けて消えるんですよ。」


紙 「なるほどねぇ。完成図書には、その情報が記載されていなかったからな。ダンジョンの情報は詳細までチェックしなかったし。」


赤熱 「ああ、この世界のダンジョンの共通仕様だからだろう。”石化”魔法を使えるモノも限られるし、実績もほぼ無いからな。普通は他の魔法を使って探索だ。」


白熱 「普通はそのようなことを気にしないからな。探索者の目的は、倒してアイテムが得られれば良いだけだろう?」


お面 「まあ、問題は無いので気にしないでOKでやすよ、旦那。」


紙 「それもそうだ。アイテムの回収をしよう。1階層同様に、ドロップアイテムをカードサイズで紙変換”カード紙”」


お面にチェックして貰ったが、問題無しだ。


出てきた魔物とアイテムは以下の通り。


ミノタウロス:ドロップアイテムは角、魔石、肉、斧。牛の頭を持つ人型の魔物だ。生体武装として戦斧と呼ばれる大型の斧を装備する。普通の鋼鉄製だ。肉体が変化した物なのに、摩訶不思議な力で鋼鉄になっている。原理を気にしてはいけない。科学世界の者にとっては理解できない現象だ。神域の情報でも”世界の仕様”になっていたし。ゾンビ化したのとグール化した個体もいた。


牛頭(ごず):ドロップアイテムは角、魔石、肉、突棒(つくぼう)。仏教の地獄の獄卒にそっくりな人型の魔物。ミノタウロス同様頭部が牛。突棒(つくぼう)と言う変わった武器を使う。これって江戸時代の捕物で使うやつだよな。T字型の樫の木の棒の先端部に、鋼鉄製の棘が付けてある武器で拷問用って感じがする。これは、ゾンビ化したのとグール化した個体はいなかった。アンデットモンスター化していないのは、地獄の獄卒だからか?


化け物キノコ(幻覚):ドロップアイテムは魔石、キノコ。牛糞に生える幻覚作用を持つキノコが魔物化したもの。地球で言うマジックマッシュルームの化け物だ。幻覚作用がある胞子を飛ばしてくる。吸い込むと危険だ。幻覚を見せて混乱している隙に寄生されて養分にされる。ドロップアイテムのキノコは薬の材料。何の薬かはノーコメントだ。


軨軨(れいれい):ドロップアイテムは角、魔石、肉。普通の牛と見た目や大きさは同じだが、虎の様な縞模様がある。魔法では無いのだが、角が一種の魔道具になっており、”高圧放水”の攻撃をする。中国の”山海経”に出てくる牛の怪物と同じ様な魔物かもね。これはゾンビ化したのとグール化した個体もいた。地球にもアフリカにストライプ模様の牛がいて、ボンゴって言うんだったか?牛では無くてレイヨウだったかも。


犀渠(さいきょ):ドロップアイテムは角、魔石、肉。見た目は普通の牛だが、全身青黒く発光している。赤ん坊の様な声で鳴く。こいつは人食い牛の一種だ。人食いと言うよりも雑食だけどね。この牛の怪物も山海経に出てくるのと同じ様な魔物かもね。これもゾンビ化したのとグール化した個体がいた。


この階層の宝箱だが2個あった。中身は両方”下級突撃薬”だ。こいつは麻薬の一種で、飲むと恐怖心を麻痺させる効果がある。1回や2回程度では習慣性は無いが飲まない方が良い代物だ。この薬みたいな問題あるのは、売却しても良いかもな。廃人まっしぐらだぜ。この世界の連中がおかしくなるのはウエルカムだし、複製して大量に売りつけるかな?まあ、後で考えよう。下級だと効果も少ないしね。

…そう言えば”突撃薬”って、通称”赤牛”とか呼ぶんだっけ?この世界では。地球の翼が生えそうなエナジードリンクっぽい感じの通称だなぁ。あの手の飲料は、カフェインとか砂糖が大量に入ってるから、体の負担になるんだよねぇ。一時的な覚醒作用はあるだろうけど。


紙 「アンデットモンスター化したのも結構いるなぁ。”石化”魔法で処理しているから、臭いは問題無いけど、階層ボス部屋はどうする?団体さんがいるぞ。」


ゴンちゃん 「私が1階層同様”浄化”魔法で対応しますよ。」


赤熱 「ボス部屋では、宝箱は階層ボスがドロップするだろう?我は出番が欲しいぞ、主よ。」


白熱 「主よ、念話で話せば臭い対策になるだろう?我も戦いたい。」


うーん、どうするかな。


紙 「まあ、戦うのは良いけど、念話を使うのか?微妙な気もするが…。あ、念話と言えば、前に魔剣を紙変換してマジックバッグに仕舞おうとしたことがあるが、俺のマジックバッグは時間停止の奴だけど、仕舞った場合念話とか使えるのか?あの時の紙変換は時間停止とかしていないから、念話使えたんだろうけど。」


生物を紙変換する場合は時間停止状態で変換しているんだよ。俺の紙変換は時間停止しても死ぬわけでは無いから。無生物の場合は時間停止しているわけでは無く、状態保存になっているんだよ。この辺は意識しないと自動で処理されるんだ。


赤熱 「無理だ。時間停止では自我も停止する。」


白熱 「我らは確かに摩訶不思議な自我を持つ魔剣だが、そこまで自由に力が使える存在では無い。主の様な神の同類では無いのだ。」


こらこら!神の同類とか言うなよ。ゴンちゃんは他の者に教えることは出来ないから大丈夫だけどさ。


紙 「ゴンちゃん、以前説明したと思うけど、俺は神様の仲間で同類だ。だが、人でもある。ゴンちゃんは俺の名付けの儀式により、俺に関する情報を認識できるが、他言は出来ないからな。俺の正体を知っているモノとなら話せるが、俺の行動に支障が出る為、この制限は解除できないぞ。」


ゴンちゃん 「大丈夫です。他言しませんよ。主様が力を抑えているのは分かりますし、そういう存在なのは理解していますから。」


流石は知能の高いドラゴンだな。助かるよ。


紙 「ゴンちゃん、頼むな。話がそれたけど、階層ボス部屋では戦闘するか。剣に慣れる方が良いかもしれんし。」


お面 「旦那は神レベルの使い手でやしょう?別に必要無いのでは?」


紙 「まあ、道具は使ってこそだ。魔剣の要望に応えるとしよう。階層ボス部屋では、アンデットモンスターを処理するまで念話を使用する。」


そう言って、階層ボス部屋へ入った。



◇◆◇◆◇◆



そうそう、ここのダンジョンは洞窟型だが、部屋などにドアが付いている。押して開けるドアに見えるんだが、引き戸だ。

…何なんだろうね?この微妙な感じは。

洞窟と言うより地下にある宗教施設とかに近いのかなぁ?地球の遺跡でそんなのがあった気がするけど、確かトルコのカッパドキアの渓谷とかだったか。

アレは引き戸じゃないだろうけど。

まあ、そんなのはどうでも良いか。くっさい団体さんがお待ちかねだ。


紙 『魔剣ども打ち合わせ通り行くぞ。』


赤熱 『了解!』


白熱 『承知!』


魔剣を双剣として構え、アンデットモンスターのくっさい団体さんに突撃した。

…くせえ。無茶苦茶くせえ。接近戦は避ける方が正解だ、コレ。


紙 『くそう。汚物は消毒だぁ!喰らえ!浄化の火炎。』


赤熱・白熱 『浄化炎刃(じょうかえんじん)!』


アンデットモンスターの間を一瞬で駆け抜け、一刀両断にする。火属性の対アンデットモンスター用攻撃”浄化の火炎”を剣に纏わせ切り伏せる技”浄化炎刃”を使用することで、アンデットモンスター化した魔物は灰も残らずに燃え尽きて消滅した。


ゴンちゃん 『”浄化”』


ゴンちゃんが消臭処理をしてくれたぞ。有難い。


紙 「あー、臭かった。近接戦闘は駄目だコレ。くっさい団体さんは魔法処理で行くからな!おっと、残りが来やがった。”石化”」


アンデットモンスター以外を石化して処理完了だ。


赤熱 「戦えたので良しとしよう。」


白熱 「我らも主が嫌な思いをしてまで、使って欲しくは無いからな。」


ふざけんな!出番が欲しいって言うから、無駄に近接戦闘したのに!


紙 「ふざけんなよ。出番が欲しいって言うから、近接戦闘したのに。臭いの嫌なのは知ってるだろう?」


ゴンちゃん 「主様、ドロップアイテムを回収して次の階層へ行きましょう。」


揉めても仕方が無い。1階層同様アイテムを回収した。


階層ボス部屋の魔物は以下の通り。


ミノタウロス:ドロップアイテムは角、魔石、肉、斧。通路にいたのと同じだ。多少強くなっている。ゾンビ化・グール化とスケルトン化した個体がいた。スケルトンは速いのな。腐臭はしないが、死臭がしたぞ。どちらにしても不快な臭いだ。


呲鉄(じてつ):ドロップアイテムは角、魔石、鉄鉱石、皮。見た目は水牛に似て、巨大な角を持ちその毛は漆黒。鉄を食べる魔物だ。鉄を食べるせいか皮が鋼鉄と同じ強度がある。中国の”神異経”に出てくる怪物の同類みたいな感じだな。ゾンビ化・グール化とスケルトン化した個体がいた。


領胡(りょうこ):ドロップアイテムは角、魔石、肉。見た目は瘤牛だ。こいつの肉は精神異常の治療薬になる。中国の”山海経”に出てくる怪物っぽい感じだな。ゾンビ化・グール化とスケルトン化した個体がいた。


牛鬼(ぎゅうき):ドロップアイテムは角、魔石、宝箱。階層ボスで見た目は牛頭の蜘蛛だ。こいつは妖精の成り損ねだ。二種類の生物が、精霊誕生時に取り込まれて中途半端な魔物になったモノだ。日本の妖怪の牛鬼と同じ感じで、性格は獰猛かつ残忍極まりなく、人や生物を食い殺すことを好み、口から毒を吐き散らす。蜘蛛が取り込まれているのに、何故か六本脚だ。


宝箱の中身はガントレットグローブで土属性の魔晶石が付いている。装備すると筋力が3割ほどアップする効果がある。漫画のヒーローみたいに蜘蛛の糸を出すことも可能。糸の強度は炭素繊維並だ。耐物理・耐魔法防御力も結構高い。大人の事情で装備できないね、コレ。文句言われそう。


紙 「このガントレットグローブは、装備できないな。俺が装備しても意味が無いし、特殊能力で調整しないと力を増幅しようとして壊れてしまう。まあ、俺の世界の革手袋を使ってるから必要は無いんだけど。コレも脳筋に渡すとヤヴァイアイテムだな。土属性魔法で岩石を拳に纏わせる攻撃が可能だ。岩石の形状も調整出来るし、毒蜘蛛の毒の効果も付加できる。…麻痺毒だな。使い方によっては危険極まりない手袋だ。糸を武器として振り回されたら、危なすぎる。細くて強度があるから刃物以上に切断力がある。」


ゴンちゃん 「我々なら問題になりませんが、現在の人族や亜人には過ぎた性能のアイテムですね。」


お面 「アイテムをどうするかは、後で相談しやしょう。次の階層へ行きましょうぜ、旦那。」


魔剣ども 「それが良いぞ、主よ。」


そうだな。3階層へ行くとしよう。

しかし、妖怪・怪物って感じの魔物が出るのは消滅した世界の残滓の影響なんだろうけど、微妙な気持ちになるよね。

俺も作業着のおっさんだしさ、ファンタジーの世界観と違うよ。金属生命体もいるし。

まあ、そんなことは気にしないで、さっさと錫杖の回収をするとしよう。



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