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第十七話 魅了

三人の様子を見ていると、白髪頭の部下の金髪男がやって来た。


金髪 「失礼します。勇者殿、指示通り国内と他国へ通達を出しましたが、魔族対応の会合には出席していただけますでしょうか?」


白髪頭 「フッカー参謀、勇者殿は我らの味方では無いぞ。この世界は滅びる。」


フッカー 「ガリヤーン将軍、勇者殿が我らに協力しないのは理解しますが、この世界が滅びるとは一体?」


白髪頭はガリヤーンと言うのか。ガリヤーンが、日本に対する侵略行為を行ったこの世界に対して、俺が報復措置を取るつもりであることを説明している。しかし、ガリヤーンとかフッカーとか水煙草の名前かよ。名前とかも消滅した世界の残滓かもね。気にすることでもないが。

王族に芸をしろと無茶振りしたのも話してるな。


ガリヤーン 「フッカー参謀、魔族対策は既に意味が無くなった。」


フッカー 「ガリヤーン将軍、諦めるのはまだ早いですぞ。勇者殿、我らが魔族と戦っている間は、見物されるのですな?」


紙 「一応、そのつもりだ。俺に魔族などが攻撃してきたら、火の粉は払うが、助けて貰おうなどと思うなよ。被害状況を見て、召喚勇者がいなかった場合の人口までは、この世界の者を最低限間引かせてもらう。勿論、侵略行為分は別に虐殺する。メソポ王国は、亡ぼして全滅させる予定だ。」


フッカー 「…その行為に意味があるのですか?勇者殿の言われたことは、否定できない事実ですが、この世界の者を虐殺しても、歴代の召喚勇者は勇者殿の世界に戻れるわけでは無く、どちらの世界にも得はありません。」


紙 「得が無いだと?現状は、この世界の者が一方的に利益を得ている。勇者召喚魔法陣が破壊できないということは、これからも俺の世界への侵略行為が続くということだ。勇者召喚は危険な行為だと、この世界の者に知らしめる必要がある。異世界人の怒りを買う勇者召喚は、自分達に絶滅の危機が訪れることを教えなければ、これからも俺のような犠牲者を生み出すことになる。この世界では、盗賊や人攫いなどの犯罪者に襲われた場合、身を守るために殺して良いことになっているな?俺が虐殺を行っても何も問題はない。俺は、この世界(・・・・)に、勇者召喚と言う人攫いをされたんだ。損得では無く、身を守るために行うべきことをするだけのことだ。」


フッカー 「…勇者殿は、それが可能だとお考えか?召喚勇者が強力な力を持つとはいえ、この世界の者全てを敵に回して勝てると?」


紙 「ふっ、俺の力や能力を探っているな?挑発しても無駄だぞ。俺が自分の世界とこっちの世界へ移動が自由にできるのを忘れているな?」


そう言うと、フッカーと呼ばれた金髪は黙った。

保存データから、保温式の水筒に入れたコーヒーを複製して取り出し、見せつけながら飲む。(コーヒーは神域で準備したんだよ。普通に飲むつもりだったけど、役に立ったな。)

この世界にもコーヒーの木は植物として存在するが、人や亜人には知られていない。保温式の水筒も無いのは、神域で確認済みだ。

この世界の生活文明レベルは、中世から近代が混ざった感じだ。工業力や生産力などがそれほど高くないので、中世から近世寄りと言った感じではある。魔法などがある為、一概に比べることは出来ないがね。消滅した世界の残滓が存在する関係で、現代日本より進んでいたりするモノもあったりするし。

話がそれたな。地球の物を見せることで、異世界間移動が可能なことを理解させる。

コーヒーの香りが部屋に漂い、俺以外の者が香りを興味深そうに嗅いでいる。

勇者召喚魔法陣は、既に存在しないことは教えない。根神さんが対応したことであり、地上のこいつらとは無関係だからな。


紙 「まあ、暫くは見物するんだ。その間、悔いのないように生きることだ。先祖からのツケを支払う時が来ただけだからよ。俺を恨んでも良いが、それは筋違いだぞ。人攫いをしたお前らの自業自得だし。」


様子を見ていると、トレモが話しかけてきた。


トレモ 「勇者様、私達王族が芸を行い、勇者様を楽しませたり、笑わせることが出来たら、この世界の者を虐殺するのを思い留まって頂けますか?」


紙 「それは確約できんな。犯罪を犯した者が謝罪したからと言って、罪が無くなるわけでは無い。命と芸が等価だと思うのか?」


トレモ 「では、勇者様に何を差し出せば、この世界や我が国は、お許しいただけるのですか?私の命や体を差し出せと言うなら、私は身も心も喜んで勇者様に捧げます。どうか、この世界に慈悲をお与えください。」


トレモが土下座した。

色仕掛けと自己犠牲の合わせ技か。さっき嘘をついたくせに、良く言うよな。突っ込まなかったら、俺の能力がそれほどでもないと判断したか。やれやれ、舐められるのも馬鹿馬鹿しいな。


紙 「自惚れるな。トレモよ、お前は自分に価値があると勘違いしているぞ。俺にとって、この世界の者は、王族だろうが、奴隷だろうが、無価値な存在でしかない。そんなごみ屑のような存在に、慈悲は与えない。お前らが、下等な異世界人として、同胞を扱ったことは許されない行為だ。俺もアクチノにハッキリ言われたぞ。俺の故国は歴史のある国でな。国の者は全員が血族だ。勿論、人口も多いから、血族とは言え、直接の身内以外は、遠い遠い親戚になるがな。だから、歴代の召喚勇者は、ごく薄いとはいえ俺の血族だ。自分の身内が攫われて、ひどい扱いを受けたんだ。そんなことをした屑どもを許す理由があるのか?芸を考える時間が必要だろう、三日ほど与える。虐殺するのは、決定事項だ。魔族の攻撃が、長く続くことを祈るんだな。その間は見物するから、運が良ければ生きていられるだろう。まあ、お前らメソポ王国の王族は、先に処分するがな。人攫いの実行犯で、勇者召喚魔法陣の儀式に必要な魔力の持ち主だからな。一応、国の代表として魔族の攻撃が終わるまで一人は残すとするか。誰を残すかはお楽しみってな。芸を頑張ることだ。出来が良いと判断した奴でも残すとするからよ。まあ、その辺は、俺の気分次第だが。さて、グダグダ話していても仕方がない。案内を用意しろ!若い女だぞ。女の武官や魔導士などがいるだろう?美女にしろよ。むさ苦しい男の案内は御免だ。メイドのような女官もいる方が良いな。武官などより街に詳しそうだ。城の中を見物するのと街を見てくる。伽の相手をさせてもいいな。この国の者に拒否権は無いし。あ、この城は既に俺の所有だが、住むのを許可してやる。その代わり、仕事をして貰う。俺の部屋を用意しろ。ああ、国賓用の部屋で良い。他国の連中は、自国の屋敷がこの王都にあるだろう。魔族対応の会合で来ても、自国の屋敷に泊まるだろうからな。」


トレモは土下座したまま沈黙し、アクチノは自身の失態を悔やんでいるのだろう。涙を流している。

自身の不用意な発言や行為で、報復行為を受けることになったから、アクチノは黙っているようだ。

実は、文句で同胞を血族と説明したけど、それは事実ではあるが(USAなどは、建国300年程度だが、調査すると全員ごく薄い親戚関係になっている。)、極々薄い親戚は、ハッキリ言って他人だ。身内を酷い扱いをされたから許さんと言うのは、文句を言う為の材料でしかない。俺は、身内にもひどい目にあわされたことがあるから、同じ日本人だからと言って、同情とかはしないんだよ。ハッキリ言うと同胞の扱いが酷かろうが他人事だ。だけど、文句を言う場合は、俺の主観じゃなくて、一般論の方が良いからね。侵略行為に関しては、俺にも関わるから対応するけど。今は、次元管理局の仕事だから対応しているだけだ。勇者召喚魔法陣は無くなってるから、懸案事項は無いと言えば無いし。

ガリヤーンとフッカーは、指示されたことを手配に行った。フッカーの魔道具は、付けたままだ。何か仕掛けてくるなら、”熨斗紙返し”の確認が出来るから。本人にはできなくても、軍人などの仲間が察して、仕掛けてくるかもしれない。発言を自由にして正解だな。色々面白い反応をしてくれるぜ。

そうそう、性欲は減退しているが、行動予定に必要なことなので、案内に女性を指定した。

気が進まないが、仕方がない。

根神さんに効果的だと言われているし。(鬼畜行動としては、既婚者や恋人などがいる女を凌辱する方が良いんだが。俺はそう言う趣味は無いんだけどさ。この世界にいる魔物のゴブリンやオークなどは、人や亜人の女を凌辱して繁殖することも多い(この世界ではハーフ種は生まれない。ゴブリンやオークは人などの子宮を借りる形で、自己増殖しているだけだ。人間の妊娠と異なり、ゴブリンなどの魔物は、卵子に精子が受精するのではなく、子宮に精子が到達した時点でクローンを作り出すイメージだ。クローンが成長するための器として、凌辱された者の子宮が使われるといった感じだな。この辺は、生物としての特性が違っている。あ、この世界では、人と亜人、異なる亜人種間での交配は可能だが、母体側の種族になる。異なる種族での交配が不可能な種族もいるけど。)ので、同類の鬼畜と思われるから、効果的だって言われれば、やらないわけにはいかない。仕事だからな。)

愚痴を聞いてもらうので、お面に出てきてもらう。


紙 『お面出てきて。』


お面 『旦那どうしやした?』


紙 『予定行動とは言え、気が進まないよ。』


お面 『鬼畜行動をして、勇者召喚を行うのは危険だという認識を持たせる為でやすから、我慢してくだせえ。』


紙 『王女の二人は残ってるけど、予定だとこいつらもだよな。』


お面 『そうでやすが、こいつらには芸をさせて、つまらんと言ってから、罰の一つとするのが良いのでは?』


紙 『そうだな。情は湧くことは無いが、嫌だなぁ。』


お面 『見た目は良い方でやすから、頑張ってくだせえ。』


紙 『頑張らないで、さくっと早く済ませるのは駄目かな?』


お面 『不名誉な噂が立ちやすよ。』


紙 『それがあるよなぁ。そう言えば、根神さんが精神系の魔法で”魅了”と言うのがあるから使えって、言ってたけど…。』


お面 『データシート改変でも対応できやすがね。魔法のが手軽ですぜ。』


紙 『まあ、そうだな。恐怖を植え付けるのとは、逆効果になりそうだが、こいつらに試すか。練習だ。夜伽相手をさせている時に、魔法を解除するというのは、どうだろう?』


お面 『練習しなくても大丈夫だと思いやすが、面白そうでやす。』


お面も良い性格してるな。俺の一部だから、俺が良い性格なのか?”認めたくないものだな、自分の鬼畜な部分と言う物を。”などと聞いたことがあるような台詞を思いつつ、アクチノ、トレモに魅了を掛けてみた。

精神系の魔法は、時間がたてば自然に解除されるのだが、俺の場合クリミナルの力を引き継いでいるので、俺が解除しない限り永続的に精神支配をしてしまうらしい。


…魅了を掛けた二人の目つきが妖しくなった。発情期の興奮した動物の目と言うか、獲物を狙う感じの表情だ。(いやらしい意味でね。)隷属しているから襲ってはこないが、さっきまで気落ちしていたとは思えない感じだ。

二人ともモジモジしてるな。相変わらず、目つきは妖しい。

何か嫌なので、声を掛ける。


紙 「二人とも下がっていいぞ。モジモジしてるが、便所に行くなら遠慮しなくていい。芸を考えるように、他の連中に指示を出しておけ。アクチノも牢で無く自室に戻れ。」


不服そうだが、二人は出て行った。


紙 「お面よ、この魔法怪しいぞ。隷属に近い、術者に惚れる効果がある魔法だって、神域の情報だったけどよ。」


お面 「惚れたのは間違いなさそうでやすが、あんな状態になるとは情報に無かったでやすよ。あいつら、本当はいやらしい連中なんじゃ?」


紙 「まあ、王族とかは、虐殺、略奪、強姦を行っていた連中を先祖に持ってるからな。集団でそれを行っていた連中の親玉の血筋だし、血が騒いだのかもしれない。」


お面 「あれなら、旦那も気が楽になったんじゃねーですかい?」


紙 「複雑な気分だよ。」


お面と話していると、赤熱と白熱が話しかけてきた。


赤熱 「主は口をパクパクして、何をしておるのだ?」


白熱 「何かと会話しているようだが、声もしないし、相手も見えんな。おかしくなったのか?主よ。」


失礼だな。説明するか。


紙 「説明するが、他言無用だぞ。」


お面のことを説明する。

まあ、俺の一部で、別人格を持った俺をサポートする存在と言うだけだが。


赤熱 「何と!そのような能力を持っているのか?」


白熱 「自分を俯瞰的に分析する別人格を持っていて、情報交換ができるとは、不思議な能力だな。」


摩訶不思議な魔剣のお前らに、不思議とか言われたくない。

暫くグダグダしていると、フッカーが案内を手配したので、明日連れてくると言ってきた。

日も暮れたので、国賓用の客室へ移動した。

部屋案内にメイドが付いて、食事をどうするか聞かれたが、不要なので部屋に来ないよう申し付け下がらせた。

神域へ転移しないとな。

…部屋の周りの気配を確認し、神域へ転移した。

根神さんと色々調整しないとね。

きつい仕事だよ、まったく。



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