人は時として想像以上に
「さあ、入ってきたのは闘技場初参加!! その実力は一切未知数! ノゾムゥゥゥ!!」
ぴーぴーと口笛の音が聞こえたり、ちらほらとやれーだのがんばれーだのといった声が聞こえるものの、どちらかと言えばひょろいだのブーイングの多い声の中闘技場に入る。中はある程度想像していた通りの円形闘技場で、ぐるりと囲んでいる観客席はほぼ満席だった。暇人が多いのかとも思ったが、考えてみれば娯楽もそんなに発展していない世界で、しかも仕事は奴隷にやらせてともなれば大概暇なのかもしれない。売れない見世物小屋よろしく初戦は閑古鳥が鳴くものだと思っていたがちょっと緊張する。
「対するは、強いやつには負けるけど、弱いやつなら甚振るぞ! 誰が呼んだかルーキー刈り! イジムスゥゥゥ!」
相手として出てきたのは、決して筋骨隆々というわけでもなく、かといってひょろいわけでもない、現代で言えばスポーツマン体型とか言われそうな男だった。観客席からの歓声に身振りで答えながら入場してくる。歓声の中にそんなひょろいガキだのいつもみたいにだの混じってるということは、ひょっとしてベテランというやつなのだろうか?
「ひひっ、しっかしお前も運が無いなぁ。俺様はルーキー刈りなんて言われるくらい数多くの闘技場に来たばかりのひよっこを潰してきた男で、お前は初参加な上に加護も殆ど無いってことは別に外で経験があるってわけでもなさそうだ」
「そういうあんたは何で俺なんかと闘うくらい加護がないの?」
そう、いかにルーキー刈りなんて名前がつくような弱いやつばかり相手にするやつだとしても、数多く試合をこなせば自然と加護が身につくはずだし、闘技場の実力の判断基準は経験や技術ではなく加護の大きさだと聞いていた。
「そりゃお前、いくら勝っても化け物みたいに強い奴には勝てねえだろ? だから俺様はある程度強い奴らと闘うくらいになったらワザと加護を押し付けるみたいに負けて、お前みたいなルーキーを相手にしてるってわけさ。脳筋共とは頭の出来が違うのよ」
「うわぁ」
素でうわぁって口から出た。いや確かに作戦としてはいいのかもしれないけど、人間としてどうかと思う。ここまでなんとも言いがたい人がいるなんて思わなかったというか、本当にこういう感じの人って存在してるんだ。
「お前今うわぁとか言ったか? ふざけやがって……まあいい、どうせ今から泣き叫びながらズタボロになるんだからなぁ!」
「おおっと、イジムス突っ込んでいく! ルーキー相手に速攻で決めるつもりかぁぁぁ!」
あ、ゴングとか無いんだ。




