努力とは楽するための苦労
とはいえ現代人の軟弱ボーイである僕が数キロ先から槍投げて化け物をハントするような連中相手に、死なないからと言って何度挑んだところで毎回ミンチよりひどい事になるだけなのは明白である。詳しく調べるまでは、それこそなんとか一財産稼いで強い人を雇って代わりにやってもらう位の気持ちで考えていた。
そもそもこの世界の人間がみんなスーパーマン的な身体能力を持っている訳ではなかった。どうやら神様の祝福とやらで冒険野郎どもはその努力やら成果やらに応じて『存在の格』的なものが上がっていき、その結果として超絶体力の持ち主になるそうな。
じゃあ冒険者やればラノベの主人公みたいになれるじゃんって? 甘ぇよスカタンめウサギやらスライムやらみたいな弱小生物をこつこつ狩って俺ツエー? そもそも初めて遭遇した3メートルクラスの化け物が初級の糞雑魚ナメクジらしいんだってさ無理ゲー乙! 集団で狩りとか異世界出身のぼっちには無理だよ。
とまれ闘技場に出る人間が全員強いわけではなく、更に闘技場で勝った人間は負けた人間から力を奪って、神様に『格』をプレゼントされるそうな。更に更に超強いやつが超弱いやつと戦っても、強いほうは力が増えない、弱いやつは蹂躙されるだけで得るものがない、神様も喜ばないから勝ち数カウントも変わらないということで、神様の使徒が闘技場を運営して同じような強さ同士で戦うことになるそうだ。
つまり、戦う事を知らない現代人である僕でも勝つ事が出来るのでは無いかというのは希望的観測かもしれないが、可能性があるんだからなんだってやってやろうじゃ無いかと思う次第であるのだ。
まあ暴力の振るい方なんてさっぱり知らないし、取り敢えずは何処かでそういう事の勉強なり特訓なりが必要なわけです。
聞いた話だと剣闘士なる奴隷は主人なりパトロンなりがそういう環境を整えているそうだし、下準備無しでワンちゃんに賭けた所で0%が1%に変わった位の勝率しかないだろうというのは夢より現実が見えてる現代人風な思考から導かれる答えな訳で。
「だからってまた解放されて早速奴隷になるたぁ坊主も中々おかしい奴だ」
「そうは言ってもこれが最適だと思うんですよ」
じゃあ同じ土俵に上がれば良いじゃないか? そう考えるのは極自然な流れだと思うんですよ。
稼ぎがあったお陰で多少なりとも良い食事、1人部屋、先達からの指導に訓練場の自由な使用と、勝つ為の準備を着々と進める為にはまずは環境から整えてみた。
嫌々訓練している同業に比べて、現代知識的なアドバンテージがせっかくあるんだからとタンパク質だの何だのといった栄養的な所から筋トレ、休憩などにも出来るだけ効率が良くなるよう考えている。
「まあ筋は良いんだがな。剣は言われた振り方が出来る、槍も最初から突くだの払うだのが出来る、なかなか居るもんじゃない」
「えへへ、そうですかね」
帰る為に努力するのは当然だし、そもそもどうせ他にする事がないから、大半の時間を訓練に当てられる。大概の奴隷は意外と寝たり遊んだりみたいな時間をとっているみたいなので、初心者ウェルカムキャンペーンよろしくせっせと差を詰めるように努力すればそれだけ勝率も上がるはずという目論見は、実際功を奏しているのかわかるまでもうすぐだ。
「で、だ。坊主の初戦なんだがな、もうすぐここに来て半月だろ? そろそろやれってことで早速だが明日やってもらう事になったんだわ」
もうすぐとか言ってみたらいきなり明日だった件について。




