効率的な手段
元の世界のゲームで、特にRPGなんかで使われるHPというものが何か考えたことがあるだろうか。あれが生命力だの体力だのであった場合主人公たちキャラクターは万全の状態であれ999分の1までズタボロにされた状態であれ常に同じ力で攻撃できる戦闘マシーンか何かと考えられるが、何かの本でヒットポイントというのはいかに戦闘における致命的な傷を避けれるかの力であるという説を目にしたことがある。
じゃあライフポイント表記のRPGはどうなんだやっぱり頭のいかれた戦闘狂だのが脳内麻薬アッパラパーで武器振り回してんのかよなんて思ったものだが、つまり何が言いたいかというと人間は大小の差はあれど傷を負えばパフォーマンスが低下して、ゲーム風に言えばライフポイントの残量に応じて攻撃力が低下するようなものだ。
つまり戦いというのは、如何にダメージを受けないようにしつつ相手に傷を蓄積させるかが重要であるというのが僕が訓練の中で出した結論だ。というか常識的に考えれば殴られてぐわんぐわんしてるふらふらの人間がまともに喧嘩なんてできるはずがないと思えるだろう。
とはいえじゃあ先手をとって殴ったほうが勝ちかといえば、さっきのゲーム風なシステムで同じ能力のキャラクターが交互に殴り合えば先手がほぼ勝つだろう。しかし現実はそうもいくまい。お互いに仲良く交互に斬り合いなんざ演劇の中でもそうそうお目にかかれないだろう。
というわけで、僕が闘うにあたって特に訓練したことは2つ、ひたすらにどんな攻撃でも盾で防げるようにすることと、大振りみたいな隙の出来る攻撃法ではない、というか片手でぶんぶん振り回すのは無理な気がしたので確実に相手に傷を与えることに集中した突きだ。とはいえ盾で防ぐと言ってもだ。
「おらぁ、くらえやぁ!」
はたして大振りの一撃をまともに受けるように防ぐとして、どれくらいの衝撃が腕に来るだろうか。例えば鉄板で防いでいいよと言われたところで金属バットのフルスイングを受けたらどうなるか考えれば、逃げるに決まっているだろう。つまり低レベルのキャラクターが思い切りヒットポイントを減らすのは盾の使い方とかがうまくないとか、避け方が下手で体力が削れるだの態勢が崩れるだのが原因だと思った。
「ほいっ」
「あぁ?」
というわけで、大上段から振られた一撃を出来るだけぬるりと受け流すイメージで盾でいなす。とはいえ衝撃を殺すなんて高等技術が長年修練したわけでもない僕に出来るはずもなく、ある程度の衝撃を腕に覚える。
しかし殴った方も痛いんだなんてアホくさいセリフもあるが、肉にずぶりと受け止められるなり盾で防がれるなりの心構えをした人間が、大振りのインパクトの最大の瞬間を脇に流されて盛大に地面を切れば多少は手にダメージがいくものだ。というか素人が棒振りで物叩いても手を痛めるっていうのは文字通り痛いくらい学んだことだ。
「ふっ」
「ぬぉ!?」
そして、こうまでお膳立てされたように隙を晒してくれた相手に、カウンターよろしく突きをお見舞いする。狙いは頭や首……ではない。外れないよう避けるのが難しい胴体ど真ん中に向けて、こちらが態勢を崩すことの無いよう、しかし確実に当たれば傷を負う勢いで突き出した剣はなんとかかわそうと横に跳ぼうとした相手の左脇腹に、それなりの深さの切り傷を与えることに成功する。
「ぐぉぉ!?」
「そぉい」
痛みのためかうめき声を出し、わざわざ盾を持っている手で傷口を抑えてくれる。剣こそ手放していないものの、明らかに好機と思える状況に迷わず追撃することを選択する。
「糞がぁ!」
一旦態勢を整えるためか、距離を取ろうと後ろに下がる体勢で掬い上げるように剣を振ってくる。そんな状態でもしっかりと刃が振るわれるのは流石だが、いかんせん踏み込みが足りないどころの話ではない。先ほどに比べれば容易く受け流し、そのまま体の勢いを利用して戻していた剣をまた突き出す。傷を押さえていた腕を振り上げ盾で防ごうとするものの、滑るようにして上へと向かった剣は胸に突き立つことになる。
「ごぉっ」
「たぁっ」
脇に引き続いて胸まで傷つけられたその痛みはいかほどのものか、想像もしたくはないが効果は大きいようで、剣を取り落として胸に手を伸ばす相手にもはや脅威は感じなかった。




