第二十九審 山奥への巻
家具屋であり寿司屋でもある
「今のは......まるで......」
「四季映姫のスペルカード、審判『ラストジャッジメント』!」
個人的にもちょっと予想外の威力だったが、内心ハッピーだ。コレ1つで相手をビビらせられる威力ということに違いないからだ。
「コレが!オレのスペルカード、『アウトジャッジメント』だ!この弾幕にはすこ~し細工してあっての~」
「あの太いレーザーのような弾幕は、細かい弾をあたかも夜空の天の川のように並べて、1つの帯状にしたもの。ざっと1列に5万発、中心の大きい物は30万発程度はあるかしら?」
たった1回だ。オレはたったの1回しか使っていない。その1発で、この巫女は見破りやがった。やっぱり敵には回したくない女だぜ。自分の中じゃ、かなりの恐怖の対象だ。わかりやすく言えば妖夢より2個上のとこにある。
「......まあいい!解説ご苦労ちゃん、ミスレイム、ハクレイ。威力の点は『ちりも積もれば山のごとし』って思っていただこうか」
「さすが...これが世間の注目の矛先にいる人間...ここまでできるなんて...」
勝負はついた。深く解説して吟味する間もなくオレの勝ちだ。ひょっとして、けっこうやれる男なんじゃないの?ヨユーで勝ったし、ほぼ無傷だったし。
「霊夢ちゃん達は先に行ってな。オレは雛ちゃんに聞きたいことがあるんでネ」
「わかったわ、私らはいいけど、あなたが危険じゃないの?」
この巫女......完全にナメている。子供じゃねーっての。それゃ歳では子供かもしれんが、15だぜ?オレ。
「......雛ちゃんに案内させ...してもらうよ。問題0だろ?それに2人で行ったほうが飛べるし楽だと思ってね。後で追いつくさ。山頂で会おうぜ」
「そうね、それじゃ。とばすわよ、魔理沙」
「ああ、準備はできてるぜ!」
2人はバイク並のスピードで、樹海の中を駆け抜けていった。やっぱり速いのね。やっぱりね。
見送った後で雛ちゃんを探して回る。
「どこ飛んでいった?ひーなちゃーん!鍵山ちゃーん」
「こ...ここですよ......」
木の根本の盛り上がっている部分に倒れていた。多少の傷が目に映る。
「どれ、傷見せな。この傷は、弾幕でなったものじゃない。ふっ飛ばしたときについたものだ。治してやるからよ。暴れんなよ?」
どんな生物も最小の単位で考えると細胞というところにたどり着く。この細胞を『組み変え』る。傷の付近の細胞を、大きくする。足りない部分をこれで一時的に補う。その内大きくなった細胞は分裂して、元のサイズとなる。5〜6分間はかかるが前のよりは楽だ。
「治って......る?一体これは?」
「そんなのは明日にでも話してやる。お前に話してもらうのは、ここ(妖怪の山)にいる要注意人......要注意妖怪のことだ」
「?え?それはどういう...?」
「ここの山は初めてでな。予備知識が無いんだ。ここに住んでいる極悪妖怪野ことのな。人食い妖怪とか人を襲う妖怪とか」
「もしかして......ビビってます?」
「......ああ、そうだよ!早く教えてくれ!」
バツが悪いというか、調子狂うっていうか。聞きにくくなった。気づくと雛ちゃんから目をそらして、左手で耳をいじっている。
「まあ、いいわ。教えてあげる。危険か安全かと言われれば、確かではないかもしれないけどね」
「それでもいい。危険因子はいるのか?」
「いくらかね。まず......えーと、射命丸文。知ってるでしょ?」
嫌いな奴の名前がでてきた。ああいうグイグイくるタイプ苦手なのよね、この茨戸は。
「おい待て、たしかアイツは新聞屋さんだろ?何がヤバいんだ?」
「あの天狗は新聞のネタのためになら捏造も平気でやるし、虚偽の記事、写真なんかもしょっちゅうで......」
「......やっぱりオレ、あの女のことキライだ......」
ぼーっと遠くを見る。この山のどこかにいるわけたが、できれば会いたくねーな。友達と一緒に歩いてる時に、親が来たみたいな、そんな気分になるからな。
「あ、あともう1人いる。一応」
「聞いとくが、どんな奴だ?」
雛ちゃんが話し始めたのは、ある河童の話だった。河童までいるのかよって言う間もなく、話を続けられた。
「別にその娘が極悪とか、人をとって食うようなことはしないわ。むしろ人間には友好的に接していて、親しみやすいという感じだけど」
「待てよ、だったら問題ないだろ。オレはれっきとした人間だ。いや、まあ彼岸に住んでて、地獄の加護受けてるし、能力もあるけどな。その娘は人間好きなんだろ?じゃあオレは好かれる訳だ。違いますかぁ?」
「うん、普段なら...ね。だから一応なの。河童が何か作っていなければの話なの...」
雛ちゃん曰く、河童たちは技術力に溢れた者達、わかりやすく言うとエンジニアみたいなものだそうだ。
「一応覚えておくよ。たしか渓流にいるって言ってたな」
「ええ、そう言ったわ」
「そこ通らないで、山頂まで行けるか?」
「無理ね」
「マ...マジかよ...行きたくねぇのによ~!」
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「なんでこんな目に合うのかな〜オレ。別に悪いことなんかな~んにもしちゃいねぇのによ〜」
愚痴を言いながら、歩いていると例の場所に着いた。樹海から抜けて明るいせいか、目がチカチカする。まぶたをこすって、あたりを見渡すと、キレイな水が視界の端から端まで流れてゆく。
「まー、こんだけキレイな川ならいるかもな。河童の1人、2人ぐらい......ハハハ」
「君......人間かい?こんな山の中で何をしてるんだい?」
声が聞こえて振り返ると水色の服を着た女の子だった。女性とは言わない。幼さを感じるからだ。
「用があってここに来た。気になさらないでくれ。これから連れを探しに行くんだ」
「ふーん、だったら警告しておくよ。早いとこしっぽ巻いて逃げ帰ったほうがいいよ。短い命のろうそくを風雨にさらすようなもんだよ」
「何が言いたい?」
その子は背中から何かの装置のようなものを取り出して、こう言った。
「この服は光学迷彩っていう科学の結晶でね。周りの景色に同化して透明になれるのさ。私の最新発明でね。ちょ〜っとテストさせて欲しいんだよ!」
瞬間、女の姿が消えた。これがさっき言っていた光学迷彩ってやつなのか?
「やろうっつーのか?ああ、やってやるよ!いつでもこい、こんにゃろーめ!」
『べチィ......!』右頬をはたかれた。女はここまで接近していた。さらに、今どこにいるかもわからない。
「く...全然痛くはねーけど、許さねぇぞ!テメェ、名を名乗れ!」
「フフフ、河城にとりさ。覚える必要もないよ。ここで実験台となってもらうからね!」
石をトビウオに生み変えた。飛ばした方向は声の聞こえた方角。全弾着撃しろ!
「うおっと!フー、アブない。手をかすったか。なるほど音で探していたわけか。なかなかの慣れてる人間だな。でもこれで自分がりこうだなんて思わないほうがいいよ」
「......なぁ、話変えるけどよ。その服よ......大きいサイズあるか?」
「あ?何を言ってるんだよ」
「その服でやりたいことがある!なあ、いいだろ!作ってくれよ!」
「ああ、いいよ。でも今から私に勝てたらね!」
「いいのか?そりゃありがてぇ。できれば防水性もつけてくれ!濡れるかもしんないから...フフフ...」
次は30話か......




