第二十四審 戦いの後での巻
茨戸は幻想郷の中でも珍しい回復できる僧侶キャラということに最近気づいた。
だってあとは永琳ぐらいだし。(ていうか回復必要ないやつが大勢いるし。)
〜紅魔館中庭〜
日も高くなり、体で昼という感じがわかるようだ。この照りつける日差しの中、傷を治し続けるというのはオレぐらいなものだろうが。
「よし、治ったぜ。映姫様っ!映姫様っ!」
起きないか。ま、寝かせておこう。映姫様の傷はあと数cmずれていたら、ホントに危なかった。なんて言えばいいのか......その......。今回の怪我は消化器官だけだったがそれよりも、もっと...ゴホン...し、下...の部分だったら治したくても治せなくなっていた......。おっと、鼻血が......。
「そ、そうだ。雁来のやつを治しにいかなくては......」
映姫様は背負っていくことにした。今日ぐらいは側にいてやりたい。それに放って置くと悪いことが起こるような気がしてならない。
廊下を歩いていると、石にされていたあのナイフメイドを見つけた。
「助けたほうがいいのかな〜......。こいつ、ちこっとめんどい娘なんだよな〜......。ハァー......しゃーねぇーな」
乗り気しないが、一応石化を解いてやった。やつが植物状態となり、能力のコントロール能力がほぼ0になった。そのため軽いショックをあたえれば石化は解ける。オレの場合は生命をあたえればいいから楽でいい。
「さ〜て、起きないうちにさっさと逃げるとするかなッ!お前なんかにかまってられないからな。忙しいんだ、オレは!」
ほんのりと火薬と燃えカスの匂いがする。あの時(ダイナマイト起爆事件)の名残だろう。やり過ぎたとは思ってはいないが、階がひとつ吹っ飛んだとなると、すごいことをしたと思う。
「さて、雁来くんは......どこかな。バラバラになってなきゃいいが」
生命を感じ取る。破片が1つ、2つ......。ざっと、50個ぐらいの破片になってるようだ。ガレキも混じっているが、オレならなんとか見分けられる。
「茨戸秀!そこで何をしている!」
呼んだ声の主は、ナイフメイドだった。しかも、すでにナイフを持って戦闘態勢真っ最中のご様子。
「少し、地獄でトラブルがあったんでね。後始末に来てたんだ、もう終わったけど。それより、お前も早くあの吸血鬼のところ行ったほうがいいぜ。あいつらも石にされてんじゃないのか?」
自分に向けていたナイフをおろして、こちらへ歩いて来た。
「お嬢様は無事なんですか?答えなさい!」
「知らねぇよ、お前しか見かけてないんだ。バラバラだったけどな。えーと、こっちのパーツがあっちとつながって......」
「じゃ、じゃあ、あなたが私を助けたんですか?なぜ?」
隣でゴチャゴチャとなにか言っているせいか、組み立てが進まない。
「うるっせぇな。ただ女を見殺しにはできない、って思ったんでよ。ただそれだけさ」
声が突然止まった。が、かまっているほど時間はない。また、破片を探しに歩き始めようとすると、またメイドに声をかけられた。
「茨戸秀、今回は見逃してあげます......。この事件のことと、それにともない、あなたがやったであろう、この爆破のことも」
「......感謝する。あとついでに頼むことがある。庭に新しい木がある。それの手入れしてやってくれるか。珍しい木なんだ」
「伝えておきます。それではお早くお帰りになってください」
そういって、メイドは姿を消した。パッといなくなった。そういえばあいつの能力のことをまだ聞いていないな。知る必要もないが。
「えーと、これが?こっちか......。にゃー!もう!パーツが多いんだよ!」
こんな難しい立体ジグソーできるか!もう粉塵になってんのもあるし、半月はかかるぞ!
「これでいいでしょうか?」
消えたはずのメイドが突然現れた。気づけば雁来が元通りになっている。
「これ、お前がやったのか?いつの間に?」
「あなたに貸しを作って置いたままにできませんから。これで、5分です」
「へッ、カワいくねーのな。でも、お礼はしておこう。......え〜〜っと、名前は〜〜......確か......」
「咲夜です。十六夜咲夜」
「それだぜ。サンキュー、咲夜ちゃん」
咲夜ちゃんはお礼の言葉も聞かずに名乗るだけ名乗ってまた消えてしまった。
「よし、これで.......元通りだぜ!」
石化が少しずつ解け始めた。胸に耳を当てると、しっかりと鼓動が聞こえる。よかった、生きている。
「......茨戸......か。生きてやがったか......」
「起きて早々にムカつくこと言うんじゃないぜ。危なかったんだぜ、お前よ」
「それより、死神と閻魔はどうした?」
「オレの女神はお休みだ。小町さんは武器庫の辺りにいるはずだが。今から治しに行く。お前もくるか?」
ああ、と雁来が頷いて立ち上がった。雁来もバラバラだったが、かけた部分をオレが補ったから問題ない。雁来のやつがいなければ小町さんがオレたちに野郎の能力を伝えられず、やられていたかもしれない。そう考えると、誰一人欠けても勝てなかっただろう。
「小町さんはどこも壊れてないな。じゃ、元に戻すぜ」
「......し、秀?あれ?アタイはどうなったんだい?」
記憶がないらしい。とりあえず、石化してからの話をすべて説明した。
「あ〜、言われたら思い出したよ。じゃ、あいつは倒せたんだね」
「倒したのはオレだが、勝てたのは映姫様のおかげだ。早く感謝の言葉を1000字ぐらいで述べたいんだが、石化解いてからずっと起きなくてな」
「じや、さっさと帰ろう!四季様が起きないうちに」
紅魔館を後にしようとした時、玄関にここの主人の吸血鬼が立っていた。
「ゲッ!お前ら、なんでここに!?」
「しかし、派手にやってくれたわね。まあ、私も結構危なかったし、これくらいは許してあげるわ。でも、次にこんなことやったらただじゃすまないことになるわよ」
「ああ、頭のどっかにメモしといてやるよ。じゃあな」
手を振りながらドアを開けて中庭に颯爽と出ていった。
「あの男、相当おかしな性格ね。いい意味でも悪い意味でも」
「ええ、そうでございますね」
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「......茨戸?ここは?」
「映姫様!!やっと起きた。心配してたんスよ。中々起きないんスから」
地獄に戻ってから4時間半、ようやく目を覚ました。寝てる時はまともに寝顔が見られないので(もちろん出血するためだ)、目のやり場に困った。あんな無防備な寝顔、オレにはヤバすぎる。
「そうです!黒麻は!?」
「そう言うと思いました。彼は今木となってもらってます。逃げることは出来ませんが、一応紅魔館のやつらに監視させてます。やつが地獄に来んのはその木が寿命を終えた時です。あの木の寿命はほぼ無限ですがね」
図とグラフでわかりやすく説明した。映姫様もそれでいいと言ってくれた。地獄を楽だったと思う刑の方があの男にはちょうどいいそうだ。
「そうっスね。あの野郎、映姫様のことを侮辱したんスよ。何も出来ない小さい女だ、とか。今思い出しただけでも腹が立つぜ!」
「......何もできない、ですか......。あながち間違いではないのかもしれませんね......」
「な、何言ってんスか、映姫様?」
深刻な表情をしている映姫様を見ていると、何か心に刺さるものを感じる。鋭くはないものが、深くズブッと刺さっていくようなものを。
「私はただ死者を裁く、地獄のトップという立場です。でも、その権力は表面だけのものです。それがない私はただの一人の女性です。ヤマザナドゥという役職がない私は無力なものですから......」
いたたまれない気分になってしまった。確かに映姫様は強いがそれは地獄での話だ。この世では力も出せないし、能力も実戦向きかと言えば仕事向きのものだ。
でも、違う。映姫様は...。
「そ、そんなことないですよ!映姫様は...映姫様は...なんつーか、強い女性ですよ。それでいて優しくて...部下思いで...えーっと、頼りになるし...」
「もういいですよ。茨戸はやさしいですね」
「ち、違いますよ!そんなんじゃなくて......映姫様が落ち込んでたから。ちょっと励まそう、って思ったんスよ......。(当たり前でしょうが!映姫様の悲しみはオレが取り除くんですから。)」
おぼろげに映姫様が立ち上がり、机に向かった。仕事をするわけでもなく、オレを机の前に立たせた。
「あなたは悪い人ではない、最初に会った時からそう思ってました。やはり、私の目に間違いはなかったです」
「ありがとうございます、うれしく思います」
頭を深々と下げ、顔を上げると映姫様が説教をするときのマジメな顔つきに変わっていた。
「しかし、そう、あなたは無茶をしすぎる」
やっべぇー!始まったぁー!病み上がりなのに、何だこの元気。
「あなたが頑張ることは止めない。しかし、その行動が周りに心配をかけているというのはわかってください。あなたが死なれては大勢が悲しみます。小町も雁来も、他の死神たちや、幻想郷の住人たちもです」
「......映姫様は?もしも、オレが死んだら悲しみますか?」
しばらく考え込んでから、映姫様が口を開いた。
「わかりきってるじゃないですか、悲しみますよ。だってたった一人の部下なんですもの。それに、泣いてしまうかもしれませんね......」
「映姫様を泣かせはしないっスよ〜〜〜。映姫様はいつも笑っていてください。微笑んでいてくれるだけでいいですから」
「こ、こうですか?(ニコッ)」
“その瞬間茨戸の脳裏に凄まじいエネルギーが流れ込んでいったッ!それは、一般人ならなんてことはないものだが、茨戸にとって、その笑顔は台風、火山や地震よりも凄まじいものなのだッ!”
「グッパァァァァ!」
「茨戸!?どうしたんです?しっかりしてください!」
こういう戦いと戦いの開放された漢字和をかくのは好きです。
日常でもないけど非日常的なものは書きやすいです。




