第二十三審 ひとつで同じな命の巻
今回の話で思ったこと
・茨戸の弱点のこと
・雁来の冷酷さと少しの優しさ
・映姫様の生真面目さ
・小町さんの戦わせづらさ
・小町さんの戦わせづらさ
・小町さんの戦わせづらさ
「その閻魔はおまえが一人にしたからやられたのだ。あのままコンビで戦っていればやられることはなかったのにな!オマエが閻魔を倒したのと同じだ!閻魔は見捨てられたのだ!」
「クソが〜、黙って歯ぁ噛み締めとけ!」
「お、俺を殺そうと思ってるな?いいのかな〜?閻魔が悲しむぞ〜、あの世でね〜!」
たしかに、2人で戦っていれば不意をつかれて、映姫様が倒されはしなかったかもしれない。そこは全くのオレのミスだ。申し訳ない、映姫様......。
「やっぱり、恋人を失った片割れを見るのはスカッとするなあ!絶望と悲しみの底にまで真っ逆さまに落ちていくのは!うれしくってサイコーって気分になるなあああ!はっははははははははは!!」
「く...クソが...。テメェ!本当にブッ殺すぞ!映姫様の言葉の1つや2つなんだっつーんだぜ......。やぶったって別に正当防衛になるさ......。覚悟しろ!」
拳を固くし、頬へ殴りかかった。しかし、駄目だ。手が止まってそれ以上動かせない。不思議な感覚だ。催眠術でもかけられてるんじゃないかって感じた。手に見えないものがまとわりついて止められているのだ。
「やはり、お前ん中であの閻魔様の存在は大きいようだな......。ならば、これではどうだ!」
石にされた映姫様に、男は足を大きく降りあげた。
「テッ、テメェッ!やめろォーッ!」
とっさに背中で映姫様をかばった。足は背中に叩きつけられた。
「間違いない!お前は閻魔に惚れている!でなきゃ、そこまで情は生まれない!じゃあ......せっかくだから、能力は使わずに疲れて貧血になるくらいまで、蹴りを入れさせてもらうとしようかッ!」
ドゴオ!ドゴオ!ドガア!ドガア!
「大丈夫っスよ......映姫様。あなたにこれ以上の傷はつけさせませんから......ね。」
「なぜだ!?なぜその閻魔を見捨てない?見捨てないにしろ、さっさと別の場所に移すとかケガをしない方法はあるはずだろ?え?」
野郎は蹴りを止めてまで聞いた。そこまで聞きたいのだろうか。
「さっきは映姫様を1人にしたから、やられたんだ......。だから、オレはもうずっとそばにいる、ケガをさせないために!護るために!」
「どこまでも悲しいやつだ......。そんな薄っぺらい感情のために閻魔を守ろうっていうのか?それは気の毒なこったなぁ!」
ボタンを外して投げつける。ひるませるためだけじゃない。竹に産み変えて、花火のように成長させた。
「今の内だぜ......。せめて傷だけでも......なんとか。」
映姫様を背負い、門に向かって走った。ついでにトゲとかの茨を門に生み出した。多少の時間は稼げるだろう。
「こうやってると、最初にここに来た時のこと思い出すな。あんまり思い出したくないがな。」
湖の畔にそって歩いていく。何かやつを倒す方法を考えようとするが全く思いつかない。触れるのはダメ、じゃどうやって倒せっていうんだ?映姫様......どうか力を与えてください......。
突然、地鳴りが始まった。おそらく人為的なものだろう。
「来やがったな〜〜!映姫様に代わってオレがお前に判決を下す!!」
「やかましいぞ!お前ごときになんの権限もないだろうが!」
ヤツは地面を石にしていく。そこに生えていた名前も知られていない雑草も伝って石になっていった。
「(映姫様を背負ったままで戦えるだろうか......?いや、また放って置いたらと思うと恐ろしい......。何よりオレは映姫様を失いたくない。)」
「何考えてんだ?教えてくれよ、早く言わないとお前の口から声が聞こえなくなるからなあ。」
「......何を考えてるって?映姫様をどうやって守り抜くか......だ!」
バラを生み出し、イバラでやつの首を結んだ。
「なる...ほどなこのまま首を絞めて起きなくしようと。だがなッ!」
「まだ、能力を理解してなかったようだなあ。触れればもうその場で石になるんだよお!」
イバラが石になっていく。しかも、能力が伝わりどんどん自分の手の方まで伸びている。
「理解してなかった、だって?違うぜ!岩にするために首に引っ掛けたんだぜッ!」
イバラを思いっきり引っ張った。当然、石となり硬化しているイバラは首輪も同然。まるで、犬を引っ張って散歩するのと同じようにだ。
「ぐええ!な...何しやがる気だ......?」
「このまま......潜ってもらうッ!」
イバラをハンマー投げをするように使い、湖に突き落とした。
「湖といってももかなりの深さがあるぞ......。沈んだら......ヤバい。」
「岸まであがることはできないぜ......。まだ首の岩は絡まってんだからな......。」
「う......うぐおお......。(このままではマズい......、しかし、能力を解除すればすべてが元に戻ってしまう......。)」
「どうした?能力の解き方を忘れたのか?それとも......わざわざ地獄から抜けだしたのに、自殺する気か?」
足をばたつかせ、岸に上がろうと水を水を掻いている。あの顔は気の小せぇ罪人が刑を執行される時の顔だ。汗だらけの手を固く結び、顔をだけでも冷静さを保っておこうとしている顔だ。
「おい......どこに行く気だ?水から上がれなんて一言も言ってないぜ。上がるのはこの決闘の方だ。」
引き寄せる時、手元がさっきより軽かった。少しの抵抗もなかったせいか、または水の中だからなのか。
「これ以上逃げるっていうんなら、首だけじゃなく全身をイバラで拘束着のようにするぜ。おい、こら聞いてんのかよ?」
顔を覗き込んで仰天した。また、やられた!また岩になってやがる。
「クッ!どこだ!また逃げやがったな!出てきやがれ!」
「うぅー、ハァー、この決闘.......先に上がるのはこの俺だ!」
後ろの岸に奴が息を荒げながら座っていた。水に手を浸していやがる。
「うう!この状況はマズい!水が石に!」
岸からまるで冬、外に置いておいた水に氷が張るように石になっていく。自分が石になるより始末が悪い。石に囲まれて首から下が動かなくなってしまう。
後ろから石が迫り来る。真の恐怖はここから始まる。しかし、この状況は好機とオレは領収した。
「水が固まった石なら......能力有効範囲だぜ......!なめんなよ!新たに生まれ変わりやがれッ!」
総勢20匹のサケで水上スキーのように移動する。川魚で時速40〜50km出るのはあまりいない。ここが海ならマグロとかカツオが使えたのに。まあ、贅沢をいうわけではないが。
岸に到着し、陸へ這い登った。肺に水が入り込んでいるらしく、気分が悪い。
「ゲホッ、ガホッ!よかった......映姫様は無事だぜ......。」
水が体から湧き出てくる。慌てていたから無理も無いが。
「そいつはよかったねぇ~!さて、そろそろお前も岩になる時間だ。」
顔を上げると、男が目を細くしながら手を構えていた。
「お断り申し上げ致しますよ~......オレは映姫様を元に戻さないといけないっつー責務抱えてんだからな~。」
「その状態で倒そうとでも思ってんのか?律儀に上司の命令なんぞ守って、喜ぶのはただの俺1人なのがわからないのか?その閻魔、頭が足りないんじゃないのか。」
「......おい、不燃ゴミ......今、お前映姫様をなんて言った!?」
「平等な命だとか、命を奪うのはダメだ、とか響きのいい言葉を並べて説教をする、しようのない女だって言ったんだよ!!大物ぶってる割には小さい女とな!!」
プッツーーーーンッ!!まぶたが自然と限界まで開く。歯をガタガタ噛みあわせる。顔の筋肉が固まってくる。
「この燃えるゴミ野郎がァーーーーーーーーーーッ!映姫様が小さいだってェーーーーーーッ!?映姫様の胸の話かッ!?テンメェーーーーーーーーーッ!」
「やはり、怒ると思った...。まだまだお子様だな...。クールにならないと負けるんだよ。」
映姫様は言った。どんな生き物にも同じ命があり、それを奪うのは罪なのだと。その話を偽善だと言うつもりか!
「命だけでなく、映姫様までもッ!あの人はどんな命も同じだと......。生命も......同じ......。」
どんな生き物も同じ生命を持っている。そうか、どんな生き物も命は同じだったんだ。命はどんな生き物も一緒なんだ。
「急に顔を青くしてどうした!?さっきの迫力が消えたぞ!」
「命は同じなんだ......。生命エネルギーは同じ......。だったらッ!」
頬を殴り抜けた。同時にやつに生命を流した。
「どういうつもりかは知らないが、キレて冷静さを忘れていたな。触れると石になるんだぞ!」
手はしっかりと握れる。グーからパーに、チョキにもできる。
「命は同じものだった、小さいネズミでも、海に暮らすサメも。命には差がない。もとは同じものだったんだ。だから......。」
「ぎゃああああ!頬が、頬が!木の表面みたいに!」
やはり、間違いない。思ったとおり、これは生命の本質だ。
「......生命は同じだが、生き物の種類が違うのは、組み立て方が違っているからだ。例えるなら、ブロックとか積み木のおもちゃなんかはもとは同じで様々なものが作れる、それと同じものだ。今、お前の頬を、頬の細胞を木の細胞になるように組み立てた。」
「うおおお!バカな、こ、こんなのは幻覚だ!ウソっぱちだ!」
男がやけになったようで、血相を変えて向かって来た。左足で蹴りかかって来たところを、両腕で受け止めた。
「木に......組み立てる......。」
着ていた服が破れ、木肌が見えるようになった。その場に叩きおろし、上から男を見下ろした。
「木になった体はお前の体ではあるが、完全にお前の所有物ではない。だから、能力は使うことはできないぜ。」
「ひぃぃぃぃ!やめろ!これ以上俺に何をする気だ!わかった!もう何もしない!地獄にも戻る!!助けてくれよ!」
「......判決を言い渡すぜ、被告は有罪!被告に終身刑を課すッ!黒、黒、真っ黒だァーッ!」
全身にありったけのパンチを打ち込んだ。一度終わって少しづつ、少しづつ植物になっていくのをただながめていた。時々うめき声を上げるのを聞きながら、また拳を入れる。その繰り返していくと、完全な木になっていった。
「湖の近くだから、水分には困んないだろうぜ。ま、霧ばっかなんで、ちと日光不足だがな。木として生きろ、これがお前への終身刑だ。」
「ぎぃやぁああ!あガガガ......。」
「何だ?再審請求は認めないぜ。もう請求することも出来ねぇ状態だがな。」
完全に中まで木になったようだ。精神はそのまま木の精神となる。オレにもわからないが、ただひとつわかることはある。もう2度と動くことはないということだ。
「あの不調は、先走った能力だった......のか?ともかく...疲れた......。キケンな能力だった......。映姫様の言葉がなければ死んでたな......。ダンケ(ありがとう)、映姫様。」
茨戸の能力
・無機物に生命を与える程度の能力
・New! 命を組み換える程度の能力




