第十八審 紅白いのと狐と烏の巻
永夜抄最終回なのか?
廊下から声が聞こえてくる。
「おかしいわね。誰かが出てくると思ってたんだけど」
「あそこにウサギが倒れてるわ」
声は段々と大きくなり、部屋に2人の少女が入ってきた。
「あら?永琳が男を雇ったのかしら?」
「誰だ?この女に用があんなら無理だ。さっき倒しちまったからな」
「倒したですって?あの永琳を?」
女の片割れが近づいて寝てる永琳の側にしゃがみこんだ。
「あら本当。ま、手間が省けて良かったわね、霊夢」
「え?ええ」
「霊夢だと?聞いたことがあるような気がするぜ」
記憶の引き出しの奥底から記憶を引きずり出す。そうだ、確かあの白黒魔法使いがなにかそんな風に言っていたような。
「私は博麗霊夢。そんなに有名人かしら?」
「さあねえ、オレは茨戸秀。よろしくね」
2人が驚いた顔でこちらを見てきた。それを見た自分も少しびっくりした。
「あなたが茨戸......。もっと年上かと思ってましたわ。私は八雲紫ですわ」
「......よろしく」
なんだろう。この嫌なオーラは。体がこの女の事をニガテだって拒否反応示してるぜ。
「この前の春雪異変に続き、この月の異変まで解決しようとしたってとこかしら?」
「月ィ?オレはこの夜をもとに戻すために来たんだ」
自分で言って思い出した。よく考えたら月はおまけみたいなものだった。
「そうだぜ!この夜を止めてる奴を倒せって言われてんだ!こんなところで油売りさばいてる場合じゃねーぜ!」
「あー......言いにくいだけどさ、それ私らなんだわ」
「ハァ!?テメーらかァ真犯人は!!」
「いや、別にそういうわけじゃなくて、この月の異変を解決しようとするために止めたのよ。ほら朝になったら面倒だし」
同業者が犯人だったというわけ......なのか?よくわからんが敵ではないらしい。
「ねえ、ところで、気になってたんだけどなぜ異変を解決してまわってるのかしら?」
「映姫様の命令だ。上司命令だから断る訳にはいかない」
「映姫......ああ、あの閻魔!」
「私、あの人ニガテなのよね」
映姫様は休日に幻想郷の住人に説教してまわってるらしい。映姫様曰く、罪を少しでも軽くするためとからしい。
「閻魔の部下ということは、地獄の人間なのかしら?」
「いずれは地獄のNo.2になるぜ」
......あれ?何か忘れているような......。
「そうだ、夜!!おい、この夜を早く戻せ!!月をいじってた奴はオレが倒したからいいだろ?」
「誰を...倒した...ですって?」
さっき炎に巻かれた永琳が復活した。
「チッ、もう復活してきやがった」
「あなた、なぜ月を入れ替えたのかしら?」
紫が質問した。彼女には風格というか貫禄みたいなものがある気がする。目に見えない圧力みたいなものがある。
「それは、月の追手を避けるためよ。入れ替えれば、ここは外からは入ってこれないですからね」
「あーあのー、ちょっといいかしら?」
霊夢とかいう紅白巫女服女が話に入ってきた。見た目そんな強そうには見えないが、異変を解決しようとするというのだから実力派あるんだろうか。
「幻想郷には『結界』が張られているのよ。ウチらが張ってるんだけどね。だからその......二度手間になってるわよ、あんたのやったこと」
「え......?」
「(え、結界?そんなのあったの?知らねぇぜ、オレ。)」
巫女が言うには、外の世界と幻想郷の行き来をほぼ不可能な程に強力な結界らしい。全く通った覚えはないけれど。
「だから、何もこんなことをしなくても、あなた達の安全は守られているのよ。わかった?」
「......そう、ごめんなさいね」
「解決したか?じゃあ、早いとこ夜を元に戻せよなぁ~っ!」
「はいはい。でも、結構掛かるかもねぇ」
外が急に明るくなり日差しが窓から差し込み顔を照らした。
「お、やれば意外とできるじゃあねぇの」
「え?まだ解除の最中なんだけど......」
「でも外はもう明るく......」
「明るくしたわよ」
聞いたことない声が聞こえて顔を上げると、髪の長い和服の女が立っていた。
「誰!?まだ誰かいたのかしら?」
「まだ相手はいたわね」
「待ちな、2人共。あんた、かぐや姫だな?」
長髪の女はうなずいて、微笑んだ。
「ええ、そう呼ばれたこともあった。私は蓬来山輝夜」
「姫様......?」
「月からは誰も来れないんでしょ?じゃあ、別にいいでしょ!」
永琳よりものわかりがいい。それとも信じやすいだけの素直な子なのか。
「とりあえず、夜が終わらせてくれたことは感謝する。かぐや姫。雁来、帰ろう」
「茨戸とか言いましたか、たまには遊びに来てね」
「姫様!そいつは危険です。先程まで私の命を狙っていたんですよ!」
「何も危険はないもの。命まではとられない。もちろんそこの2人もね」
「「......」」
「ま、たまには来てやるぜ。嫁が風邪でもひいたらなぁ。介抱してやらねーといけねからなぁー」
光が目に突き刺さる。半日日光にあたっていなかったせいか、目がなかなかなれない。虹彩が鈍っている。
「嫌な夜だったぜ......。まだ朝の気分だ......。おい、姉ちゃん。霊夢とか言ったな、さっき何とか結界を張ってるとか言ってたが......何だ、そりゃ?」
「え?あんた、見ない顔だから外から来たと思ってたんだけど、通って来なかったの?」
「そうね、結界を通り抜けなければこっちには来れないはずなんだけど」
「紫が話すと話が面倒になるからもう帰りなさい」
そういえばこっちに来たのは死んでからあの世を通ってか。そういや、オレ1回死んでたなぁ。
「ああ、そのややこしい話だがよ。こっちへはあの世を通って来たのさ。表現するなら、外からこっちの彼岸、こっちの彼岸からこっちのこの世っつー訳だ。ぶっ飛んだ話だとは思うが」
「......あの世ねぇー。ま、そっちにまで結界は張っていないし、これから張ろうとも思ってない。網の中をすり抜けるのではなく、網を避けてこっちに......。面白いですわ」
「なあ霊夢、協力しようぜ。オレも、お前も異変を解決する。利害の一致ってやつだ、手を組もうぜ。悪い話じゃないはずだ。いいだろ?」
「興味ないわ。うかつにあの世の人間を信頼もできないし」
思ってたよりも大人な対応。SO COOLな女だ。嫌いじゃないが結構キツイ。
「そうかい、じゃあいい。オレは柔軟なんだ。気が変わったら声掛けな......ムッ?」
シャッター音が3回響いた。生命反応も感じ取れる。場所は......木の上か?
石を拾ってから、いつもの要領でトビウオの弾丸を放った。
「ぐぴゃあっ!」
悲鳴を上げながら10mはあろうという木から落ちてきた。まわりは今のでようやく気づいたようだ。
「黒い羽......か。カラスみたいで気に食わねぇ野郎だ。霊夢、知ってるか」
「新聞屋の烏天狗よ」
「はい!文々゜新聞の清く正しい射命丸文です!取材させていただきたいのですが!」
わからないが怪しい物を感じる。茨戸秀の細胞がそう叫んでいる。
「新聞屋さんか......悪いが取材はまた今度だ。取材ならあの2人に聞きな。あとカメラは手から離さないようにな」
カメラをカラスに生まれ変わらせた。嫌いな鳥だからか荒っぽい性格になったようだ。
「このカラスは一体どこから、きゃあああああ!」
「これは......茨戸の能力......」
「地獄の人間が持つ能力にしては、命に溢れてるわね」
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「映姫様ァーーーーーッ!ただ今戻りましたァーーーーー!」
「茨戸、そう、あなたは少しうるさすぎる。そこのところを少し......あれ、茨戸、肩の小さい子は何ですか?」
「え?カンボのことですか?オレの能力で生み出したネズミですけど」
「ちょっと貸してください」
カンボを手に乗せ映姫様の手にそっと置いた。
「よしよし、ああ可愛い。名前はなんていうんですか?」
「カンボですけど」
「カンボですか......綺麗な瞳ですね。茨戸、少しこの子を借りていていいですか?」
カンボがとてもうれしそうに鳴いている。何よりも映姫様が欲しいというのならあげない理由は無い。
「いいですよ。なついてるみたいっスから」
「ありがとうございます。ふふ、いい子いい子」
これほどまで、ネズミになりたいと思ったことはない。映姫様の手に触れてもらえる!なでてもらえる!いい子いい子してもらえる!あわよくば、映姫様の指を舌で舐めることだって可能!!これ以上の幸福はない!
「肩に乗りますかね、あ、乗った。はい、よくできましたね」
何......。予想外、肩に乗れば......確実に映姫様の髪の毛に触れられる。い...いや...それだけではない......。首だ!首筋をッ、あの近距離でッ!!なんてこった......。我ながらなんて生物を生み出しちまったんだ......。
「おー、ホントなついてるなー(このドブネズミが!クッソ~、オレの願望を先に全部叶えやがって......なんてうらやましい......)」
なにも知らないでこのネズ公は......。ああ、猫に小判、豚に真珠、ウサギにルビーだぜぇ......。
......!?お、おい......まさかあの「位置」は!胸を......!いや違う!それだけじゃない!
映姫様の制服は(オレのも一緒だけど)首んところは襟が立たせてある。確認したが、首と襟の間には少しの隙間しかない。指2本が限界ってとこだろうか。だがネズミなら、その隙間に潜り込める!つまり......胸と胸の隙間に入れる......。
「グハァッ!」
「茨戸!?どうしたんですか!?」
「(いかん、茨戸のバカ、またろくでもない妄想を......。)」
「えぇ、大...丈夫...です」
「でも...こんなに血が...」
「あぁ、これは...あれです...口内炎...そう、口内炎です...」
「(血を吹き出すほどの口内炎なんて聞いたこと無いよ!)」
「大丈夫ですか?薬でもとって来ましょうか?」
「(今の嘘が通用したの!?嘘を見抜けよ、ダメ閻魔!)」
「大丈夫です......。ちょっと寝てれば治ります......。ガハァッ!」
「茨戸!?」
次回は茨戸の弾幕修行編です
修行編は読者に不評とかゴホンゴホン。




