第十六審 狂気のバニーガールの巻
前に一回だけバニーガールというものを生で見たことがあります。
マジヤバかった。(小並感)
「雁来、例のアレやるぜ!」
「ああ、もう用意した」
目の前の空気が固められている。すぐにできるのが雁来の能力のいいところだ。
「名づけて、トビウオの花火!」
空気を固め1立方メートルの立方体をつくる。次に生命を流してトビウオにする。ざっと50匹はつくれ、その50匹が部屋の中を跳ね飛びまわるのだ。
「今のうちに違う部屋に逃げるぞ。広い部屋じゃ、分が悪い」
「オーケー、ついでに固形空気いくつかよこしてくれ」
生命反応は1匹2匹となくなっていく。陸じゃ魚は生きられない。呼吸ができず苦しみながら死んでいく魚の気持ちはわからないが、おそらく気持ちのいいものではない。
「てゐ!あの2人はどっちに行った?」
「奥の方に行ったみたい。じゃ、がんばってね」
ガシィッ!
「あんたも来るのよ!」
「しょうがないなぁ......」
両方の動きは感じられない。じっとしている。手さえ動かそうとしない。
どういうことだ?立場が逆だ。今、じっと黙っているのはオレらの仕事なんだ。追う側がなぜ止まる?
「......追ってきてるか?茨戸」
「動いてない......。怖いぐらいだ。どっちに行ったかはわかっているはずなのに」
さっきまで乱射しまくっていたのにどういうことだ?弾切れか?
すると、ゆっくりと手が動き始めた。腕がこちら側に動き始め、伸ばされている人差し指の延長線上には自分の頭があった。
「マズいぜ!なぜかバレてやがる!」
「バカな!ここは同じ様な部屋がいくつもあるし、10mは離れている!なぜ!」
たまらず逃げ出した。弾丸は休まず撃ち続けられている。それもさっきよりも正確に。
「(足は動かしていない......。まるで、上から見おろされているようだ。迷いもなく撃ち込んでいる。なんだ、あのウサギ......。ウサギ?もしや......。)雁来ちょっと頼まれてくれや」
メモ帳を切り取り図で書いて示した。
「なんだこれ?何がしてえんだ?お前」
「いいから早く!勝つ鍵になるかもしれねぇんだよ」
「チッ、わかったよ」
ズダダダダ!!
弾丸が当たった音だ。それと同時にウサギが動き出した。この部屋に向かってやってくる。
「素直に聞き入れていればいいものを......」
「ほ~、ちょっとうまいなぁ。ウサギさんよ」
自分のいる天井を向いてウサギは言った。
「お前は!なぜ!?」
張り付いていた天井から飛び降りて、ウサギに言う。
「理解したぜ。お前の居場所を探知方法。つまりは音だ。音の響きでどこにいるのかを探知していたんだ。そのなが~い耳を利用してな」
「なぜわかった?」
「そりゃあ、ウサギの耳を見たまんま、といいたいところだが、あんたがさっき撃ち込んだ弾丸を利用したんだ。雁来に空気を固めてもらって、人間に近い生物を2体オレがつくりだした。それに見事弾丸が命中。当然見た目は全然違うが、音だけ出せれば問題なかったんでね。その間オレらはツルに捕まって天井に張り付いてたんだよー。どうかな?バニーガールズ」
我ながら灰色の脳細胞を持っていると思う。探偵でもやろうかな。
「見破ったからどうだというの?ピンチになったのはあなた達のほうよ!」
ウサギの目が紅く光った。ギラギラした感じではない。ルビーの原石のような光り方だ。
「なんだぁ?ロボットだったのか?メカウサギ、メカウサギ!」
バタン!!
雁来が突然倒れだした。
「おい!どうした雁来!」
「わからない、立っていられない......」
雁来に介抱しようとすると、急に視界が歪みはじめた。
「なんだ?目が......!」
「目がおかしいでしょう。狂え、狂え。もうあなた達の感覚は戻らない」
ウサギの仕業か。さっき見た瞳のせいなのか?
「こんな奴らに能力は使いたくなかったわ、敗北感を感じる。けどもうおしまいね」
わからないが、おそらくさっきの弾丸が来る。このしゃべり方は追い詰めた側のしゃべり方だ。何とかしなくてはまずい。とりあえず撃つのはやめさせなくては。
「お、おい、ウサギ。そんな遠くから撃つのかよ?」
「なんです?」
「オレの頭を撃ち抜くんだろ?もっと側に寄れよ。そんなに遠くから撃ったら1発ぐらいなら耐えるかもわからないじゃないか。ほら、最後ぐらいひと思いにさぁ(やってきやがれ、頭に撃とうとしたその時に、切り刻んで挽き肉にしてやるぅ)」
歩く音が聞こえる。耳もおかしくなりつつあるが、聞こえることが重要なのだ。
「いいでしょう。この鈴仙、苦しませることなき確実な1発で地獄に送ってあげましょう」
「ありがとね、ウサギさん(やべぇ、ノり気でやがった、マズいぜ)」
「何か言うことはあるかしら?」
肩からカンボを手にとり撫でた。
「ネズミにお別れさせてくれ。カンボ、お前は生きろ」
「あら、ほほえましい。それじゃ、心おきな...グッ!?ぎゃああ!」
叫び声のあとに、チューと小さく鳴く声が聞こえた。
「ネズミが耳を!噛みちぎられる!てゐ、とってぇ!」
「こっち来ないで!」
「カンボ!お前なのか!?何も見えねぇけど」
また鳴く声が聞こえる。返事をしているつもりなのだろうか。
「よし、目が見えた」
「しまった!目を閉じたから、もう1度!」
ツルを生み出しウサギの目に巻きつけた。
「危険な瞳だ。しばらく目にそれ付けててもらうぜ。体にもな」
「くっ、ほどけ!この!」
うるさい口にもツルを施した。あまりエロティックなものは感じられない。
「さて、あとはもう1匹だなぁ」
「あ、あたしのこと!?あたし、食べてもおいしくないよ!」
後ずさりしながらウサギが言う。
「おい、ウサちゃん。八意永琳のもとに連れてけ」
「わ、わたしだって戦えるのよ!?かかってきなさい!」
後ずさりしながら、ウサギが言う。
「なあ、ウサちゃん。オレはいたって温厚だから争いはあまり好きじゃないんだ......。だ~~が!これ以上オレを攻撃しようっていうんなら......」
「こ、攻撃しようっていうんなら......??」
ウサギはツバを呑みながら、クマに遭遇したような目でこちらを見ている。
「皮をはいでから耳ぶち切って塩水にさらす。因幡の白ウサギになってもらう」
「そ、そんな、お、おどしなんて、わたしには、通用しないんだから!」
「5秒待つ。自分が好きな方を選択しろ。いーち、にー......」
「ご、ごめんなさぁーい!塩水だけは、塩水だけはァァァァ!」
「雁来、これがネゴシエートの仕事だ。凡人じゃできない仕事だろ?」
「お前は脅迫の才能が並外れてるからな」
真っ直ぐ、左折、左折、直進とまるで“決まった道を通らないと、もとの場所に戻される迷路“だ。ウサギはこんなところに住んでいる奴の気が知れないといった感じだ。
「ところで、永琳は今、何をしているんだ?」
「わたしがなぜそれを言わないといけないんだ?」
「......塩水」
「ヒィーッ!言います、言いますぅ、だからゆるしてくださいぃぃ!」
ウサギからしゃべった情報は2つ。
1つは薬をつくる仕事をしていること。
問題は2つ目だ。
「月を入れ替えただとぉ~~~~~~ッ!?」
「信じろという方が無理な話だ」
「おい、クソラビッター!嘘ついてんじゃねぇ、舌抜くぞ!」
ウサギは涙目になりながら首を横に振っていた。
「本当ですぅ!あれは太古の月で、今の月と取り替えたと言ってたんです!」
「じゃあ、この異変の犯人は......」
「ああ、どうやらここにいる永琳に間違いないということだ」
やはり、犯人は永琳。しかし、理由はウサギにもわからないということらしい。
最後の大部屋を抜けると、廊下に出た。さっきの廊下とは違う気も同じような気もする。何しろ長い廊下だから。
「師匠はこの先にいらっしゃいます」
「そうか、サンキュー。お礼のニンジン食うか?」
「いただきます。ありがとうございます」
ふすまを開き、奥へ進んだ。中から薬草やらの匂いがして酔いそうになる。
「ウサギにニンジンとは優しいな」
「アレか?割れたガラスを生まれ変わらせたのよ」
「外道か」
奥に人影が見える。机に向かい何をしているんだろう。近くに寄ってみると、上皿天びんで薬の調合をしているようだ。
「誰かしら?敵意をむき出してやってくるのは」
ようやく、こちらに気づいて振り向いたようだ。
「八意永琳。こっちの生まれだが、月の民でもあるかぐや姫の部下」
「あら、よくご存知ですこと。それで、何のようなのかしら?」
「月をもとに戻せ。迷惑してんだ。いやなら、力づくでも戻させるけどな」
「私が月に行ってる間に地上が人間ばかりになったわね。いなかった頃が懐かしいわ」
長い時の流れを生きている者が歴史語りを聞くことになるとは。それにしても、ヒトがいない時代っていつなんだ?
「......人がいない時代より前を勝手にこちらで解釈したが、軽く億年前だな」
「億だとーッ!もう美魔女のレベルじゃねーぞ!年齢詐欺だぜ!」
「年はどうでもいいでしょう。それで、月を戻せということでしたね」
「そうだ。早くしろ」
「私にも用があるんですよ。月を入れ替えないといけない用事がね」
「さっき言ったよな。力づくでも戻させるとな」
「あいにくあなた達と戦っている暇はないの。ウサギたちに戦ってもらって。うどんげ、てゐ、どこにいるんです?出てきなさい」
「ウサギなら、さっき倒してきた。どっかでぶっ倒れてるぜ」
「こういう時に役に立たないウサギね。では、じきじきに私が葬ってあげましょう!」
一方その頃てゐは......
「ぎゃああああ!!口がああああ!!」




