第十四審 月と歴史の巻
~前回までのあらすじ~
映姫「夜が終わりません。」
茨戸「オレがなんとかします、映姫様。」
幽々子「月がおかしい。」
茨戸「オレがなんとかするぜ。」
茨戸「森で迷ったぜ。とりあえずそこのホタルと平和的交渉して道案内してもらおう。」
茨戸「オラ、道案内しないと殺虫剤かけるぞ。」
リグル「するからゆるして」
「おい、本当にこっちなんだろうな?虫女!」
「わあ!大きな声出さないでくれ!怖い!」
この女はリグルといい、ホタルの妖怪らしい。ホタルはもっと小さいと思っていたんだが。
「おい、まだ着かねぇのか?」
「ヒィ!もう少しだってば!」
やっぱり、土地のことは土地の人に聞くのが一番だ。先に言っておくが、これは脅迫ではない。れっきとした交渉にもとづき合意を得たものだ。
すると突然前に灯りが見えた。見覚えがある。屋台の灯りだ。
「おい、アレってウナギの屋台じゃねえか?おーいミスティアちゃーん!」
屋台に向かって走ると歌が聞こえてきた。
「よう、ミスティアちゃん。蒲焼き焼いてくれ。ミスティアちゃん?」
ミスティアはうつむいたまま、何もしゃべらない。
すると突然目の前が真っ暗になった。まるで目が無くなったみたいな感覚におそわれた。
「おい、何だ!これはぁ!目が見えねぇ!」
悲鳴を聞きつけ後ろから雁来が来たが、同じように目をやられたらしい。
「どうした茨戸......、うう!目がッ!これか!」
目が見えない中で声が聞こえる。ミスティアの声だ。
「お兄さん達。どうしたんだい?このウナギ食べれば目が良くなるんだ。食べるかい?」
「おいコラァ!何言ってんだミスティアちゃんよ~。」
「え、何で私の名前を知って......。」
「もしもだ、例えばのイフの話だが、君が目を見えなくしてるんだとしたら、今すぐ直して欲しいんだ。ん?」
「は、はい......。」
しだいしだいに目に明かりが戻ってきた。盲目の人の気持ちがわかったような気がする。限りなく不安な感じだ。
「全然気が付かなかったよ。いいカモが来たとまさか茨戸だったとは。」
「君にそんな能力があったとは......恐れいったよ。まあ、とりあえず焼いてくれ。」
「おい、仕事中だろ。」
「いいんだよ。目の慰謝料分。」
目の視力を奪うというのはおぞましい 。視力に依存する動物は多い。人間も例外ではない。目を潰すのは有効な手段だ(女性の瞳は奪いたくはないが)。
蒲焼きを買ってから、また歩き始めた。
「おい、リグルちゃん。お前も食べるか?うまいぜ。」
「うん、もらうよ。ああ、ここを真っ直ぐ行けばすぐ人里だからね。」
「よくやった。砂糖水やろう。」
「やっと着いたか......。知ってる奴がいればいいが。」
森を抜けるとすぐに家屋やら橋やらが見えてくる......。はずなのだが何もない。人間もいない、道もできていない、昔の時代に来たみたいな感覚だ。
「いやー......。何もねぇー!ワハハハハハ何もねぇ、何もねぇぜ!」
「どうしたんだ、これは?」
「みんなで引っ越しかな?」
「おい、あそこに誰か居る。」
髪の長い青い服の女性だろうか。こっちに向かって歩いてくる。少女というより大人な雰囲気だ。
「あなた達は何しに来たの?」
女性からこう聞かれたので、
「閻魔の命で、この月を、戻しに来た人間だ。」
こう答えた(内心かっこつけて)。
「月を......。どうして人間がそのことを?」
「ある幽霊が教えてくれたんだ。今、月をいじれる力を持っている者を探してんだが......。」
「そう、じゃあ心配いらないですね。まさか地獄まで動いているなんて......。とりあえず、ついて来て。」
いくつか謎が残るのだが、とりあえずついていくことにした。そう言われたし。しばらく歩いて行くとポツンと1つだけ家が建っていた。そこが女の家だ。入ると玄関から廊下の奥まで本が床に置かれていた。それも天井に付くぐらいに。1つ引き抜いて開いてみると年号の後に事項が連ねてある。歴史書だろうか。
「あんた、ここに住んでんのか?じゃあ何でココだけ人里なのに消えてないんだ?」
「人里を消したのは私です。でも消したんじゃなく無かったことにしたんです。私の能力は歴史を食べる能力。今までの歴史上に人里が作られなかったことにしたんです。そうすれば人々に危害は及びませんから。」
「へ、へ~、なんつーかすごい怖いぜ。過去が消えるってのはよ。」
「だが、消した歴史はどうなる?戻るのか?」
「それは後で人里の歴史を書き加えるので問題無いです。」
どうやらオレたちはとんでもない次元の話をしているようだ。置かれてあった歴史書もこの女がまとめたものだろう。あるいは重度の歴史マニアだろうか。
「あんたは悪い人じゃなさそうだ。オレは茨戸秀。こっちは雁来。よろしく。」
「茨戸......。もしかして、あの新聞に出てた人ですか?」
女はおもむろにしまってあった新聞を取り出して机の上に置いた。
「顔写真が載ってませんでしたので気が付きませんでした。申し遅れました。私は上白沢慧音。寺子屋で歴史を教えています。」
「慧音さん、失礼でなければ月についての歴史が書かれている本を見せてくれ。」
「月って言われても、軽く見積もってもこの部屋半分埋まりそう何ですけど。」
「何だって?......ああ、いいよ。けど、できるだけ人が出てくるような本でお願いします.......。」
結局1時間ぐらい読み漁ったろうか。ずっと本を読んでいるせいか、月光のせいか時間感覚がメチャメチャになったところで、雁来があるページを開いて顔を変えた。
「月人?月に人がいるのか?」
「おいおい、月にはウサギがいるんだぜ。日本の常識だろ。」
「人もウサギもいます。」
「マジでか!」
「ここじゃ割りと常識的な話で、竹取物語ってわかります?あの話の満月の晩に月人が来るとかは実際にあったことなんです。当然ここから月に向かった人もいるし、やってきた人もいます。例えばこの......。」
慧音さんは本を取り上げ、ページをめくり始めた。彼女には目的のページがどこなのか全部覚えているような感じだ。
「八意永琳。彼女はこっち生まれですが、月に移り住み、月の都を作るにいたっています。」
「はあ、すごい人なんだな。そのえーりんは。太古の昔にそんな人がいたのかー。」
「彼女はまだ生きているわよ。」
思わずお茶を吹き出した。
「ゲッホ、ゴホン!生きてるって?記述だと、うん億年前だぜぇ?」
「さらに驚くでしょうが、今幻想郷に住んでいるんです。」
思わぬところで手がかりが見つかったようだ。
「こいつに聞けば月のこと、何か知ってるんじゃねぇかな?雁来!」
「一理あるか。だが居場所もわからないようじゃ。」
「どこに住んでいるかぐらいならわかります。」
さすがなんでも知ってる慧音さん。インテリ美人も悪く無い。いや、やっぱり映姫様の方が可愛い。
「えーと、かぐや姫の話はさっきしましたね?彼女とかぐや姫は上下関係にあったんです。その後、かぐや姫が大罪を犯し、先に地球に来たんです。」
「ウンウン、それで?」
「その後かぐや姫は景気を終え、永琳ら月人達が月から迎えに来たのですが、かぐや姫が帰るのを拒んだんです。永琳はかぐや姫に付いていくことを選んだようで、一緒に迎えに来たものを全員殺しています。
「それは可哀想。んで続きは?」
「なんか歴史の授業みたいですね。ゴホン、2人がたどり着いたのが『迷いの竹林』と呼ばれる場所です。」
「ふ~ん~ん。雁来そろそろ行くぜ、あ、そうだ、慧音さんこの本ちょっと借りるぜ。異変解決したら返すからさぁ。」
雁来はゆっくり立ち上がり挨拶して外に出た。自分も本をポケットに入れ、軽い冗談を言いながら家を後にした。
本によると、迷いの竹林は名前どうりにやたら迷うらしい。だったら地図でも作ってほしいものだ。せめて看板をつけるとか。不親切にも程がある。
とか思っているともう竹林が見えた。いやでも迷うのを察した。霧は出てる、傾斜、曲がった竹。迷いやすい竹林に多い特徴ランキングベスト3大集合だ。
しかし、ここの他にあてが全く無い。生命探知も15mだし役に立つだろうか。
「うわああ、いきたくね~。」
「おい、閻魔の命令だろ。」
「そうだ!映姫様!ウオオオ、オレ頑張りますッ!」
全力疾走で林に向かった。
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