第十一審 過去と信頼の巻
読者の方から茨戸の性格が変わったなと言われました。
自分でも気づかなかったんですけど、読み返してみると大分口調とか荒れてたなぁとか思います。
それでどこから変わったのかなぁと思い、確認すると5話のラストで映姫様を嫁にするって言ったときでした。
多分、死んで間もないときはいろんなことが起こりすぎて混乱してたけど
紅魔館の一件で落ち着けたのではと思います。
それで映姫様の事もそういう風に見れたんじゃないかなと思ってます(こじつけっぽいけど)。
3分ほどかけてやっと部屋が片付いた。半分は雁来がやったのだが。
「やっと落ち着いて話ができます。さっそくですが雁来空、あなたにはここで働いてもらいます」
「あ゛あ?ふざけるのもいい加減にしろよ。女だろうが容赦しねぇぞ」
映姫様は何を考えているんだ?こんな奴がオレのように真面目に働くとでも思っているのか?
「この写真の女性、雁来里佳子......あなたの母親であり、あなたが殺したことに間違いないですね?」
「そのクズ野郎がどうかしたか」
雁来は自分の母をクズと言った。こともあろうか自分を産み育てた母親をだ。子供がもっとも感謝し愛するべき実の母をそんな風に呼ぶような男。雁来と家族との間に何があったのだろうか?
「この里佳子もまた殺人をしたことも知っていますね?雁来」
「......ああ」
「映姫様。どういうことッスか?一家で殺し合いでもしたんですか?」
映姫様はファイルを開き始め、中から2枚の紙を取り出した。
「これは雁来の生涯をまとめたものです。読みますよ。西暦1988年5月6日に誕生。兄弟はいない。母からは優しさを、父親から並外れた正義感を受け継ぎ、小さい時から警察官になろうという夢を持っていた、そうですね?」
「映姫様、じゃあ何で雁来が母を殺したんスか。特になんの問題もないっスけど」
「少し待ちなさい。えーと、ああここです。雁来空14歳の時、父が母により殺害される」
雁来は何も言わずに窓の外の彼岸の風景を眺めている。
「動機は母の不倫。遺体はナイフでメッタ刺しにされていた。雁来が父が死んだことを知ったのは、あたかも第一発見者のように母から電話をかけられた時。雁来が駆けつけた時には父はもう虫の息でその後死亡。警察が捜査をしたが凶器は見つからず、帰ってきたら父が血だらけになっていたという母親の嘘の証言から警察は通り魔かヤク中の犯行だと推理してしまった。雁来は父を殺した人間を必ずこの手で捕まえると父に誓った。しかし、尊敬していた父が殺されたショックが原因で雁来の心は荒れ始め、そして能力が発現した」
映姫様は雁来の話を続けた。
「ゴホン、そして3年後の雁来空17歳。ある日、母の部屋から鍵付きの日記を見つけ、それをこじ開けた。中には父を殺したことが書かれており、雁来は日記を読み終えてすぐ、母が写っている写真を家中からかき集めてすべて燃やした。家族3人で写っている写真も母の部分だけ切り抜き、最後に日記を燃やした。母が帰ってきてすぐに自分に疑いがかからないように能力を使い、母を窒息死させた。そして遠い山奥で自殺」
雁来がガレージのように閉じていた口を開き語り始めた。
「......母の日記を見た時、俺は母を殺すだろうなと思った。長年追い続け、恨み続け、怒り続けた犯人が実は唯一の家族ってことに足が震えて、汗が流れた。写真を燃やしたのは、母をもう親と思いたくなかったから。それで、人の人生を振り返ってどうする気だ」
「1つ質問があります。日記をなぜ燃やしたんです?それを見せれば警察も動いたのではないのですか?」
雁来はまた口を閉じた。
「母を犯人にしたくなかったから......じゃないっスか?映姫様」
「どういう意味です。茨戸」
「日記を見せれば母は捕まえられる。当然のことっスよね。ですけど生まれてから今まで育ててくれた母をたとえ、どんなに恨んでいようとも牢屋に送ることはできませんよ。だから自分の手で殺し、証拠である日記帳も燃やした。真実を知るのを自分だけにしたんだ。だろ?雁来くん?」
映姫様は納得した感じでは無かったが、まあそうかも知れないという感じであった。
「それで、どうします?雁来。あなたはこの世界で彼岸から外には動けません。しかし、ここで働くことになれば、こっちの世界の現世には行けます。どうします?そこの茨戸に相談してもいいですよ。彼も同じ選択を迫られた者ですから」
「お前は......なぜここで働いている?」
「そりゃあ、夢があるからよ。(映姫様と結婚して)幸せに過ごすっていう夢を叶えるためよ」
雁来は考える時間もなくすぐに決断した。
「決まった。ここで働かしてもらうよ。閻魔様」
「茨戸、あなたとは雁来と共にに行動してもらいます」
「いいッスよ。同じ世界の生まれ同士気が合いそうで」
またこの世界が騒がしくなるような、そんな感じがする。雁来と異変を解決するのもおもしろそうだし、また映姫様の評価が上が......。
「おい、雁来ぃ~。ちょっと話があるんだけど~」
「何だ、まだなんか用か」
雁来を連れて外へ出た。
「雁来くん。正直に聞くぜ。お前......映姫様をどう思っている?正直に言えよ」
「あの閻魔のことか?名乗って来なかったが」
「本名、四季映姫・ヤマザナドゥだ。どう思ってんだよ?」
「急にどうした?眼の色を変えて」
周りに人がいないことを確認してから雁来の思いの内を打ち明けた。
「いいか、よく聞いとけよ......!オレは映姫様のことが好きだ。将来は結婚し映姫様を嫁にしようと考えてる」
「......俺は別にそんな風にあの閻魔のことを考えちゃいない。今も、これからもだ。安心しな」
「オレは映姫様のために死んでもいいと思っている......。それで、だ。もし、オレが死ぬようなことがあれば......お前が映姫様と結婚してくれ。オレが死んだ後に、オレ以上に映姫様を愛する人がいるとは思えないんだ。オレにもしものことがあればその時は映姫様を頼む」
「おいおい、考えすぎだ。とりあえずお前の覚悟はわかったよ」
もう一度自分が死んでしまうともう2度とここには戻れない。映姫様はたとえ部下だった人間も平等に裁かなければならない。これはルールだ。
「茨戸に雁来。小町が来たので一緒に仕事しなさい」
「はい、映姫様!」「了解」
「アンタが空くん?茨戸とは違うタイプのイケメンだねぇ。モテるでしょ?」
「......3人とも早く行かないとクビにしますよ?」
説教が始まりそうだったのでたまには仕事をすることにした。給料も異変解決の件で多めにもらえる予定だし多少仕事しなくてもなんとかやってけるけど。三途は相変わらずの死者であふれかえっている。そういえば、オレがこっちに来た時は年に1、2回ぐらいある死者が少ない日だったらしい。船はボロのままだが何人乗せても平気で動いている。今、男2人と死者4人船頭1人を乗せて結構なスピードを出している。初めて船の凄さを感じた。船の中では大概死者と話をする。地獄がどんなだとか天国に行けるだろうかとか。
今は、外の世界の出身の人間である自分が外の世界の話をしたりしている。
「オレのいた世界にはバスっていう車があってな。人を乗せて走るんだ」
大抵は信じてくれるんだが、人間にはそれぞれの考え方というのがある。ウソだとか車を知らないとかついには外に世界があるの?と聞かれた。
「今日、仕事終わったら雁来の歓迎会しないかい?ねえ、秀」
「しようとは思ってたけど......あてがあんのかい?」
「いい屋台知ってるからさ、行こうよ。ネ?」
「......って言ってるけどどうするんだ?雁来くん」
「早く仕事終わらせてすぐ行こう」
「決まりだね。さあ、仕事しよう!」
小町さんがサボらないように一緒に仕事してるんだが。どうも小町さんは天然なとこがある。人当たりはいいから男死神や死者からの人気は高いらしい。そう彼岸通信に書いていた。
「よ~し。今日の仕事終わり~!」
「死者のお運びは終わりが無いって映姫様から聞いたんスけど」
「あ、ああ気にしない気にしない。明日やるから」
「そのうちクビになりそうだな......」
「オレも全くそう思うぜ......」
一通り小町さんイジりをしてから、映姫様も誘おうかという話になった。
「じゃんけんで負けたやつが映姫様を誘うんだ」
「いいだろう」
「いいか?ジャンケンっていうのは気合と迫力で勝つんだぜ~」
「語ってないでさっさとやればいい」
結局、グーで負け、自分が行くことになった。今年はどうも運が無いらしい。
「え、映姫様!雁来の歓迎会する事になったんですけど......映姫様も来ませんか」
「すみません。今日中にしないといけない仕事が残っているんです。あなた達だけでやってください」
「そ、そうっスか~。残念だな。何か手伝えることありませんか?」
「私の仕事をあなたにやらせるわけにはいきません。けど、とりあえずお茶入れといてください」
「はい、喜んで!」
映姫様は何の仕事をしているんだろう。書類に名前を書いたり、会議で話したり。もちろん非番の日もあるんだろうが、そういう日はたいてい幻想郷の住民に説教をしに歩いている。オレは仕事をああゆう風にできる映姫様は恋愛感情抜きに尊敬する。
「映姫様、それじゃ行ってきます。映姫様もガンバってください!」
「ありがとう。楽しんできてください」
気に入ったぬいぐるみを捨てるみたいな気分で映姫様には申し訳ないがすでに2人を待たせている。ドアを開けて、その屋台に行くことにした。
茨戸「映姫様ァーー!東方Project人気投票で映姫様が25位になりました!」
映姫「本当ですか!5位もあがったんですか!」
茨戸「当たり前ですがオレは映姫様に投票しました!当然推し票です!」
映姫「どうもありがとうございます。ちなみに小町は何位だったんです?」
茨戸「あ......えっと60位です」
映姫「......。茨戸、忘れましょう」
茨戸「ハイ」




