1-1:落下に着地は付き物らしい
サアサア皆様お集まり。
昔懐かし読み聞かせ。
今宵話すは不可思議怪奇。
落ちればそこは黄色い世界!
逃げるも難き、進むも難き。
昔からある隣の異空。
落ちて、落ちて、落ちて、落ちて。
気が付けば、知っている場所だった。
直感でここは現実だとわかる。
渋谷。
ただの、渋谷の交差点。
「戻って来られましたね、良かった良かった」
辺りを見回そうとして、自分が誰かの腕を掴んでいる事がわか思わず離す。
「あっ、すみませ……ん——?」
「忘れちゃいました?」
女。少女と言うには大人じみていて、女性というには無邪気に笑う。
長い薄緑の髪の毛に、カラーコンタクトでもないと有り得ない真赤な目。
それは。あの、異空間を思い出させるには充分で。
「……現実?」
思わず呟いてしまう。
「此処は現実世界ですよ、安心して下さいな」
そう返された。
そう返されたからこそ、ああ、どうやらさっきまでのも現実だったのだな、と理解してしまった。
有り得ないことだと思うのに、それが事実にしか思えない。
まるで夢の中みたいだ。
これが悪夢だったらいいのに。
「こんな道の真ん中で突っ立っていないで、ほら、歩きませんか?」
「歩くったって、何処に……」
「お茶でもどうですか?さっきのお店じゃ貴方も緊張していたし……今度は隠し事はありません。安心で安全なお店を知っているんです」
芯のあるきっちりとした声は雑踏に飲まれずまっすぐ進む。
俺は、とにかく落ち着きたかった。
落ちて、歩いて、走って。出会ったと思ったらまた落ちて歩いて走るの繰り返しだったから。
「……デザートが美味しい店なら」
そう答えたのが間違いだったのか、正解だったのかは今でもわからない。
ただ、目の前の彼女はにっこりと笑って、また強く腕を引っ張った。




