きづいて
人気者とは、何なのだろう。
恋花のように、
理由もなく視線を集める可愛さか。
王子のように、
触れれば壊れてしまいそうな気品か。
圭吾のように、
人の流れの中心に立つ力か。
それとも――
笹本のように。
どんな手段を使ってでも、視線を奪い取ることか。
あるいは。
俺のように。
誰にも嫌われないよう角を削り続けた、
“良い人”であることか。
多くの人間に持ち上げられる者を、
人気者と呼ぶのだろう。
数。
評価。
フォロワー。
現代ではそれらは、
少年漫画の戦闘力のように数値化され、可視化されてしまう。
低ければ、無価値。
振り切れれば、神様扱い。
それが、この時代の空気だ。
俺も、その考え方の中で生きてきた。
無価値にならないように。
誰かの役に立って、
誰かに好かれて、
誰からも嫌われないように。
そうやって、“正しく”振る舞ってきた。
……なのに。
最近になって、
その“正しさ”が、分からなくなってきた。
俺は、興味のない人間をモブキャラとして処理し、
記憶に残さない人間だった――はずだ。
後輩モブのちえり。
オタクモブの上野。
不良転校生のゴリケン。
そして。
ヘアピンモブの水上瑞希。
気づけば、名前を覚えていた。
考え方を知って、
違いに戸惑って、
それでも――いいところを、知っていた。
彼らは人気者だったか?
……違う筈だ。
いや、最初から。
そんなもの、関係なかったのかもしれない。
価値は、数で決まるんじゃない。
誰かに愛されていると、気づいたとき。
ようやく、自分の中に生まれるものだ。
数字がちらつくたびに、
自分には何もないんじゃないかと疑って。
その不安を、
自分にぶつけてしまうこともある。
それでも――
側にいてくれる誰かは、
一ポイントなんかじゃ測れない。
たったひとりにとっての、
替えのきかない存在だ。
――だから。
きづいてほしい。
――なあ、笹本。
俺は朝一番、鞄を机の上に置き、
小さく深呼吸をした。
「おはよう、恋花。
今日も可愛いな」
「おはよう……
あれ、今日はなんだか随分すっきりした顔ね」
「そうか?
昨日のアレの影響かな」
「……何その意味深な言い方。
ほんとに、きしょい」
待ってほしい。
別にいかがわしいことなんてしていないのだが。
ただ、昨日偶然目にしたショート動画の
『一分で顔痩せトレーニング』を試しただけなのだが。
しかし、この子は想像力豊かで、少し困る。
でも、ちょっと興奮します。
弁明しようと口を開いた、その瞬間だった。
「あ、汐森君来てるー。
ねえねえ聞いて、笹本さんが――」
女子たちの声が、空気を切り替える。
「……」
呼ばれたのなら、行くしかない。
相変わらずアザだらけで、
“可哀想”を纏った笹本の席へ。
俺の気配に気付いた瞬間、
笹本は顔を上げた。
――その目は、明確な拒絶だった。
鋭く、冷たく、
近づけば噛みつくとでも言いたげな視線。
それでも。
俺は、足を止めなかった。
怖くないわけじゃない。
むしろ、正直に言えば――かなり怖い。
でも。
ここで引いたら、
あいつの世界は、このまま固定される。
“見てくれ”と叫びながら、
誰の視線も信じられないまま、
同じ場所をぐるぐる回り続ける。
そんなのは――終わらせる。
周囲のざわめきが、わずかに引く。
視線が集まる。
ポイントが、積み上がる。
――ああ、そうか。
これが、お前の見ている世界か。
だったら。
そのど真ん中で、壊してやるよ。
“可哀想な笹本”も。
“良い人の俺”も。
全部まとめて――終わらせる。
「どうしたんだー?
キャンディの食い過ぎで糖尿診断されたか?」
「違うよ、汐森君。
また笹本さんの怪我、増えてる。
そろそろ先生たちの力、借りた方がいいよねって」
俺は、席でフードを深く被り、
できるだけ小さくなっている笹本を見下ろした。
確かに、痛々しい。
誰が見ても、“助けを必要としている姿”だ。
――だからこそ。
俺は、わずかに口角を上げた。
「気にしなくていいぞ」
一拍。
教室の空気が、まだ優しさを保っているうちに。
「こいつの怪我、嘘だから」
「……え?」
ざわめきが、波紋みたいに広がっていく。
誰もすぐには理解できない。
理解したくない、という顔も混じっていた。
「汐森君……嘘って、どういうこと?」
「そのままだよ」
視線を逸らさず、言葉だけを置いていく。
「こいつ、本当は怪我なんてしてない。全部メイクだ。
確認は――もう取れてる」
教室の温度が、じわじわと下がっていく。
その中心で。
笹本だけが、微動だにしなかった。
「なあ笹本」
名前を呼ぶ。
それだけで、何かが壊れる音がした。
「楽しかったか」
わざと、間を置く。
「人が心配してくれるのは、気分が良かったか?」
静かな声だった。
なのに、やけに響いた。
笹本の肩が、ぴくりと震える。
「汐森……
あんた、一体……何のつもりだ……」
「分からないか?
俺はもう、お前の“観客”やめたんだよ。
いい加減うんざりだ」
その瞬間。
笹本の瞳が、はっきりと揺れた。
「あんた……
……嘘や冗談のつもりじゃ、ないんだね……!」
「嘘をついてたのは、お前だろ。
重度の構ってちゃんが」
そこで初めて、空気が凍る。
俺は、笹本の腕を取った。
抵抗は――なかった。
ただ、力が入っていないだけだった。
ポケットから、化粧落としのシートを取り出す。
それを見た瞬間。
笹本の表情が、ほんの僅かに崩れた。
遅い。
もう、止まらない。
頬に触れる。
こすらない。
なぞるだけでいい。
――するり、と。
黒ずんだ“痣”が、指先に移る。
白い肌が、露わになる。
誰かが、小さく声を漏らした。
それが合図みたいに、
教室中の視線が一点に突き刺さる。
そこにはもう、
“可哀想な被害者”はいなかった。
ただ――
剥がれかけの嘘を、顔に貼り付けたまま立ち尽くす、
一人の少女がいるだけだった。
周囲の者たちは息を呑む。
「ほんとに騙されてたの……」
「信じられない」
「最低……」
ざわめきが、ゆっくりと形を持ち始める。
その中心で、俺は――笑った。
口の端だけを、わずかに吊り上げる。
——今、この瞬間だけは。
「ざまあ見ろ、ばーか」
刹那。
笹本が凄まじい勢いで立ち上がる。
躊躇も、容赦もなく――俺の首を掴む。
机を蹴飛ばし、そのまま黒板に叩き付けられる。
「お前!
お前ええええ!」
「うるせえな……全部お前が招いた結果だろ」
「殺す!
殺してやる!」
指に力がこもる。
本気だ、と分かる。
だからこそ、笑う。
「はは、そりゃ良いや。
地獄では仲良くしよう。
同じ病人同士な」
「うああああ!」
その瞬間、空気が張り詰める。
――本当に、壊れる。
誰もがそう思った、その直前。
「悠里ちゃん、止めなよ」
凛とした声が、すべてを断ち切った。
「こんな男、殺す価値もない」
静かな断罪。
場の重心がと移り変わる。
「……! 皇美姫。
……何の用だ?」
「君が清継君を手に掛けても、君が悪人になるだけだ」
一拍。
「いくら付きまとわれ、思い悩んでいたとしてもね」
「は?」
空気が、わずかに歪む。
「清継君。
君がしたかった事は――これかい。
昨日の相談。
やはり、手を貸さなくて正解だった」
その言葉に、教室の温度がさらに下がる。
俺は、歯を食いしばる。
視線だけで、殺すつもりで睨み返した。
「王子……余計なこと喋るんじゃねえよ……」
「断るよ」
即答だった。
「君は昨日、僕に相談しに来たね。
――悠里ちゃんに好意を伝えたら拒絶された。
その腹いせに手を出してしまった」
一呼吸。
「その証拠として写真を撮られてしまったから、削除させてくれ――
手伝って欲しい、と」
「すめらぎぃ! 話が違ぇだろ!
手を貸さない代わりに、知った事は黙っておくって言ってたじゃねえかあ!」
叫びが、廊下に反響する。
王子は、わずかに首を振った。
それだけで、全てが覆る。
「そうしたかったさ。
君たち二人の問題には、出来るだけ関わりたくなかった」
視線が、笹本へ移る。
「でも――君は、最後の一線を越えた」
言葉が、刃になる。
「彼女が示していた“唯一の救難信号”を、
君は踏み潰した。嘘つき扱いをした」
教室が、息を止める。
「本当は、助けてほしかったんだよね。悠里ちゃん」
優しく、しかし逃げ場を与えない声。
「毎日付きまとわれて。
誰かに気付いてほしくて」
ゆっくりと、結論へ導く。
「だから――その傷を、作った」
「いや……は……?」
笹本の声が、崩れる。
理解が追いついていない。
それでも、視線だけは逃げられない。
「写真、まだスマホに残っているね」
沈黙。
ほんの数秒。
「え……と……いや……」
呼吸が乱れる。
「……うん」
その一言が落ちた瞬間。
空気が、完全に裏返った。
悲鳴が上がる。
誰かが口を押さえ、誰かが目を逸らし、
誰かが――泣いた。
さっきまでそこにあった“疑い”は、もうない。
残ったのは、ただ一つ。
確定した“物語”だけだった。
「君たち二人は中学の頃から仲が良かった。
同じ出身校の人間なら、有名な話として聞いたことがあるはずだ」
淡々と続ける。
感情を削ぎ落とし、事実だけを積み上げる声。
「だが――それはすべて、清継君の一方的なものだった」
一拍。
「そのこともあって、悠里ちゃんは同じクラスになったと知った新学期、
ショックでしばらく登校できなかったんだよね」
その瞬間だった。
「いい加減にしやがれ、馬鹿共がぁっ!!」
教室を震わせる怒声。
五里だった。
「清継さんがそんなクソ女を好む訳ねえだろうが!
どれだけ清継さんが、そいつの為に心痛めてきたと思ってんだ!」
机を叩く。
今にも飛び出しそうな勢い。
「どれだけ……
どれだけ、手を差し伸べようとしたと――!」
声が、裂ける。
――まずい。
ここで“正しさ”を叫ばれるのは、まずい。
その前に。
「止めろよ、五里」
静かな声が、割って入る。
「……圭吾?」
「お前は中学一緒じゃねえから、知らなかっただけだろ」
肩をすくめるような、いつもの調子で。
「清継は昔から、笹本にご執心だったんだよ」
「お前、何言ってんだ……?」
「逆だ。お前こそ何やってんだよ」
圭吾は、俺を一瞥する。
ほんの一瞬だけ。
それだけで、全部伝わった。
「清継はついに手ぇ出した。
写真も撮られたらしいじゃねえか」
一呼吸。
「どうしようもねえ奴だよ――今の清継、見てみろって」
――ああ、圭吾。
本当に、お前は良い奴だ。
その顔のまま。
その距離感のまま。
俺を、きっちり“切り捨ててくれる”。
拳が、わずかに震えているのが見えた。
「……」
五里と、目が合う。
一瞬。
それだけで、十分だった。
理解したらしい。
何も言わず、ただ歯を食いしばって――席に戻る。
それでいい。
それでいいんだ。
俺は――
カラカラと、乾いた笑いを漏らした。
「何勘違いしてんだよ」
肩を竦める。
「俺は好意で笹本を誘ってただけだぜ?
アザの話とは別問題だろ。
こいつは家族と上手くいってない。
親にやられたって同情誘ってただけだ」
一瞬だけ、間を違える。
「助けが欲しかった訳じゃない」
――言い切った、その時。
「違うよ」
静かな声。
女子生徒の一人が、ぽつりと呟く。
「笹本さん、確かに家族と上手くいってないとは言ってたけど……
親にやられたなんて、一言も言ってない」
「な……」
そうだ。
あいつは、一度もそんなことは言っていない。
笹本は馬鹿だが、狡猾だ。
言えば破綻する。
大人が介入する。
全部が、壊れる。
だからこそ――
今の俺の言葉が、
そのまま“証拠”になる。
そして今、俺は――
完全に“加害者の物語”の中に立っている。
人は、真実ではなく、理解しやすいストーリーを選ぶ。
もう、逃げ場はない。
――幕引きだ。
王子は、俺に語り掛けるように言った。
「もう止めよう、清継君。
君に言い逃れられる余地はない」
一拍。
「君は、本当に良い人だ。
ここにいる誰もが、一度は君に救われているだろう。
――だが、それとこれとは別問題だ」
静かに、断罪する声だった。
「今日限りで、笹本さんに接触するのは止めてくれ」
逃げ道を、丁寧に塞ぐように。
――十分だ。
俺は小さく舌打ちをひとつ落とし、
笹本の手を振り払う。
指先に残る体温が、やけに生々しかった。
そのまま、何事もなかったかのように踵を返す。
教室中に渦巻く視線。
失望と嫌悪が、皮膚の上を這うみたいにまとわりつく。
背中が、ひどく重い。
席へ戻る途中――
視界の端に、恋花の姿が入った。
唇を震わせ、眉を寄せ、
まるで自分のことのように、苦しそうな顔をしている。
俺は歩みを止めず、
すれ違いざまに、低く囁く。
「恋花は、嘘が下手だ。
笹本に気付かれないよう、しばらく距離を置け」
「……うん」
返事は、かすれていた。
顔は見ない。
見れば、何かが崩れる気がした。
鞄を肩に掛ける。
この場に、これ以上いる理由はない。
教室を出ようとした、その時。
「――汐森君」
呼び止める声。
笹本を、いつも見守っていた奴だ。
振り返らないまま、足だけがわずかに止まる。
「もしかして……笹本さんの為に――」
「――!」
一瞬だけ、呼吸が浅くなる。
――来たか。
だが。
ここで肯定するのは、違う。
ここまで壊しておいて、
最後に救いの顔をするなんて――そんな都合のいいことは、許されない。
バトンは、もう渡した。
あとは、あいつらの役目だ。
だから。
唇の内側を噛み、
痛みで感情を押し殺してから、吐き捨てる。
「は? 訳分かんねえ期待すんなよ」
ゆっくりと振り返り、
相手を見下すように目を細める。
「笹本とつるむくらいで、やっぱお前も馬鹿なんだな」
一拍。
「気安く話しかけんなよ」
それだけ言い残し、
今度こそ振り返らずに歩き出す。
背後で、何かが崩れる気配がした。
――これでいい。
これで、いいんだ。
廊下に出ると、
さっきまでの喧騒が嘘みたいに、静かだった。
窓の外には、雨上がりの空。
濡れた校庭が、鈍く光を返している。
肺の奥に残っていた空気を、ゆっくり吐き出す。
俺はもう、あいつの「味方」じゃない。
だからこそ。
これから先、あいつが誰かの手を取るのなら――
それはきっと、
俺以外の誰かでなければならない。
歩きながら、
拳を、強く握りしめる。
指先が白くなるほどに。
それでも、もう――
振り返らなかった。
* * *
昨日の放課後。
渡り廊下――。
「――という計画だ。
王子、お前の力を貸してくれ」
「嫌だ」
「なあんでええ!」
思わず声が裏返る。
「お前さっき、“必要とあらば力を貸そう”ってドヤ顔で言ってただろ。
俺、ちょっと惚れかけたぞ?」
「君が、悠里ちゃんを救いたいのは分かった」
王子は小さく息を吐き、視線を外したまま続ける。
「彼女のアザに、それだけの意味があるのなら。
歯止めは利かなくなる。やがて、手段はエスカレートしていく」
「なら――」
「この計画には、重大な欠陥がある」
「どこにだよ。完璧だろ。
匠の技が光るモデルハウスみたいなもんだ」
「君が、救われない」
言葉が、胸の奥に突き刺さった。
「……いやいやいや。
こうでもしないと、あいつが積み重ねてきた嘘を、帳消しにしてやれないだろう」
「僕はね、清継君」
王子は静かに、だが確かな声で言った。
「こう見えて、君を友達だと思っている。
尊敬もしている」
その視線が、まっすぐこちらを射抜く。
「優しくて、頼もしくて、良い人であること。
それは君の武器だ。剣だ。
僕はそれを分かっている。だから――」
一拍置いて、
「その剣を、自分に突き立てるなら、
止めなければならない」
「それで、笹本が救われるのにか」
「救いのある自傷行為があってたまるか!」
珍しく、王子の声が荒れた。
「そんなやり方でしか救われない人間なら、いっそ滅んでしまえばいい!」
吐き捨てるように言ってから、王子は唇を噛む。
「……いいかい、清継君。
君は分かっていない」
声は低く、しかし揺るがない。
「君にバトンを託した恋花ちゃんが、このやり方を見て何を思う?
君が傷つく姿を見て、彼女が何も感じないとでも?」
「俺は恋花に言った。
必ず解決してやるって」
拳を握る。
「どんな方法でも、最善を尽くすしかないだろう」
「――悲しむぞ」
「……」
言葉が詰まる。
分かっている。
分かっていて、それでも。
「――すまない、王子」
俺は、息を吐いた。
「俺はどうしようもない奴だ。
こんな方法しか思いつかない」
自嘲を込めて、続ける。
「人は、徹底的に追い詰められた後で差し伸べられた手を、
初めて救いだと思う。
俺は、それをよく知ってる」
だから――
「考えが顔に出る俺でも、優しすぎる恋花でも駄目だ。
お前しかいない」
沈黙。
やがて王子は、力を抜くように息を吐いた。
「本当に……どうしようもないね」
苦笑。
「分かった。
そこまで言うなら協力しよう」
ただし、と。
「勘違いしないでくれ。
僕は悠里ちゃんを救う為に手を貸すんじゃない」
まっすぐに、言う。
「君の思いに、報いる為だ」
「——ありがとう」
胸の奥が、少しだけ軽くなる。
「このバトン、確かに託した。明日の朝、化粧落としを貰いに行くよ」
「……ほんと」
王子は小さく笑った。
「この託されたバトンの責任は、結果よりも重いね」
* *
「――おゔえぇ」
人の気配のない階の男子トイレ。
便器に手をつき、
喉の奥からせり上がるものを、押し出す。
胃液が焼ける。
鼻の奥がつんと痛む。
止まらない。
吐いても、吐いても、
まだ足りないみたいに、身体が拒絶し続ける。
――初めてだ。
自分の生き方に、逆らったのは。
息を整えようとしても、うまく吸えない。
視界が滲む。
笹本の言葉が、遅れて沈んでくる。
――生き方を変えるのは、簡単じゃない。
「ああ……そうだな」
誰に言うでもなく、呟く。
こんなにも、身体が拒む。
喉の奥に残る酸味と、
吐ききれなかった何かが、胸に張り付いている。
これは――
誰かを救おうとした代償か。
それとも。
“良い人”でいられなかった罰か。
答えは出ない。
ただ、胃の奥が、何度も何度もひっくり返るだけだった。




