先輩と再会
◇ ◇ ◇
《新着メッセージがあります》
机の上のスマホが震え、私はペンを止めた。
高校生活が始まったばかりの今。
課題は自己紹介だの目標だの、
とにかく“自分という存在”を言葉にさせるものばかりだ。
まだ形にもなっていない将来を、
さも確かなもののように書かされる。
正直、少し疲れていた。
集中も切れてきたところだったので、ちょうどいい。
私は勉強机から離れ、ベッドへとなだれ込む。
夕飯を食べすぎて、少しお腹が苦しい。
上半身だけ起こし、
そばにあったクッションを抱えたままスマホを開いた。
「……清継先輩からだ」
画像付きのメッセージ。
清継先輩の自撮りだった。
その背後で、私と圭吾先輩がラーメンを啜っている。
こんな写真、いつ撮ったのだろう。
あの人、食べるのがやたら早かったし、その時かもしれない。
私は『ごちそう様でしたー!』という短いメッセージと、
お腹の膨らんだパンダのスタンプを添えて返した。
イラストがぴょこぴょこ動く、お気に入りのやつだ。
今日の夕飯は、
清継先輩に奢ってもらった。
本当に異性として見られていないのだろう。
連れて行かれたのは、
ニンニク強め・量多めで有名なラーメン店だった。
中学時代にも三人で行ったことがあるから、
もしかすると本人なりの“思い出巡り”だったのかもしれない。
……にしても。
よく私の返事も聞かずに決めたものだ。
私は気にしないけれど、
恋花先輩までこんな店に連れて行っていないか、少し心配になる。
まさか、
振られた本当の理由が“ニンニクラーメン”じゃないだろうな……。
スマホが、再び震えた。
『また行こうぜ。
次は圭吾に奢ってもらおう』
久しぶりに会った先輩は、相変わらずだった。
私をきちんと“後輩”として扱ってくれる、
その距離感が心地いい。
中学時代も、悩みを聞いてくれたり、
理由もなくジュースを奢ってくれたり、
そういう人だった。
だから――
そろそろ、私が少しだけ恩返しをしてもいい頃なのかもしれない。
手伝ってどうにかなるものかは分からない。
それでも、
恋花先輩との復縁を応援するくらいなら、できる。
その方が、私自身も恋花先輩と気まずくならずに済む。
「瑞希ー!
お風呂、先入っちゃいなさい!」
「はーい」
階下から母の声。
私はわざと気だるげに返事を引き延ばし、
清継先輩から送られてきた写真を保存して、メッセージを送った。
『ぜひ!
また三人で行きましょうね!
今からお風呂入ってきます』
数秒後、すぐに返信が届く。
「……うわ、最低」
『住所を教えて欲しい。
今すぐ行く』
私はそのゴミみたいなメッセージに、
最寄りの交番の住所を添えて、無言で返信するのだった。




