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セカンド〜第二の人生を得た人間はどう生きるのか〜  作者: 鱒科の人間
一章 出会い
4/8

偽りの天使

「………多分だが、上位個体なんだろうな。面白れぇ…丁度スリルが不足してたんだ」


 そのアナウンスは俺にとって福音だった。只の暇つぶしが…目的である”強敵”との戦闘に導いてくれそうだからだ。


 それに…【夜光】は”称号”…だ。特定のモンスターが持つ”称号”。称号を持つモンスターは例外なく強敵である...それが常識だ。


 自分自身称号持ちと戦ってきたから分かる…今だ姿が見えないが…威圧感がある。間違いなく強敵だ。


「あぁ…これだよ。この威圧…この空気。これが”戦い”って奴だよなぁ...っ!」


「【悪鬼羅刹】【修羅化】【鬼角解放】」


 出し惜しみは無しだ。先ほど使った【鬼力解放】のデバフを上から圧し潰すバフを重ねがける。後の事は考えたくも無いが…俺の目的が目の前に存在するんだ…出し惜しみも、後悔もしない。それが…戦闘狂バトルジャンキーって奴だからだ。


 しかし、俺がどれだけバフを重ねようと()()が姿を現す事は無かった。【月殻幻想セレナセラス】の上位個体ならばステルス能力を持っているのは当然だが…奴みたいな不自然が無い。


 いや…俺が気づいて無いだけか…?


 先程から特に変わらない景色。水面に映る”満月”…揺れる水面。


 何が違う…?俺は何を見落としている?


「”満月”…?違う…いや違った…。今日は()()()()()()()()()…」


 その事実を決定づける様に、空に浮かぶ月は到底満月には及ばない半月の様な形だ。


 それは水面に映る”満月”が【偽の月】と言う事である。


 それもコイツの力か?まるで狐に化かされている見たいだ。


「ったく…ギミックの多い奴はあんま好きじゃ無い...ッ!!」


 先程水面を穿った拳より更に威力が上がっている拳を水面に叩きつける。


 その威力によりけたたましい爆発音が鳴り響き、途轍もない質量により気化した水分が水蒸気となって周囲を漂う。


「何も起こらねぇ…どうなってやがる」


 再び水が集まり夜を照らし出す。新しく作り出された水面には空に浮かぶ月を反射した【月】と完璧な円形の満月である【偽の月】が映し出されていた。


「動いている…」


 偽の月が、本当の【月】を追いかけるように、水面を移動している。いや、反射しているのかどうか知らないが…【偽の月】に実体は無い。


 奴の力で生み出された幻影…そんな所だろう。水面に映る揺らぎが全くない”満月”。その異常さが胸中を撫でつける。


 そして全く姿を見せない…多分貝類だろう新種。少なくともこいつの下位個体は貝だ。


 空に浮かぶ月はまだ見える。雲に隠れていない。この月が雲に隠れれば…姿を見せる可能性がある。少なくともあのシジミ野郎はそうだった。


「隠れんぼは得意じゃないんだが…仕方ない」


 正に”幻想”だな…。幻覚なんかでは無い。まさしくそこに”月”はある。偽物だとしても、俺の眼は、脳は確実にそこにあると言っている。


「埒が明かねぇな。一発打ち込むか?」


 今だに姿を見せない”特殊個体の特殊個体”。ヒントになるのは水面に映る【偽の月】だ。


 本当の月が水面に映っているが、それに覆いかぶさるように、水面の月が移動している。”月による月蝕”。傍から見るとそう見える。ならば、月が雲に隠れれば…月蝕は起きない。


「とっとと姿を見せやがれ…チキン野郎」


 そして…要約先程晴らした雲が再び上空に浮かぶ月へと集まる。


 月光が弱まる。静かに、昏く…そして雲が月を完全に覆いつくした。


「何だ?」


 水面に映る【本物の月】は確かに消えた。だが…周囲は先ほどよりも”更に”煌々と照らされている。


「おいおい…冗談だろ」


 水面に映る月が…確かな存在感を持って、そこに佇んでいた。実体は無い筈だ。なんせ、反射しているだけに過ぎない…幻影なのだから。しかし、確かに月が”そこにある”。


「それが…お前の姿だってのか…?」


 幻想生命体…とでも言うべき存在だろうか。実体は無い…だが、そこに居る。


 殴れもしない、どれだけ高質量のエネルギーをぶつけようと…実体のない物にダメージは無い。


「相性が悪いぜ…こりゃ」


 俺はあらゆる力でねじ伏せるタイプだ。頭もそこまでキレるとは思っていない。だが、俺の正面に居る奴は、何かギミックをクリアする必要のある”敵”だ。


「ぐおっ!?」


 水面に煌々と輝く月からレーザーの様な物が放たれる。全く攻撃をしてこなかった為、突然の出来事に反応が遅れてしまう。周囲を光が支配している為、視界も非常に悪い。


 何とか体を捻るも、胸を掠めて光線が通過していく。多分だが…()()()()の類だ。


「痛ぇ…」


 光線が触れた肌がヒリヒリと焼けるように”痛む”。エフェクトによって血などが出てはいないが、確かな痛みがそこにはあった。


「水面の月を破壊してみるか…?」


 長く考えていても埒が明かない。少しでも試行回数を重ね、この状態を抜け出す方法を考える必要がある。


「ニューラル…オプション設定、()()()()()()()()()()

現実は心の痛みをシャットダウンして欲しいよ

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