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第五章- 暗黒の騎士ナインライダーズ-11 メルコールと11人委員会の結託

冥界フェスの裏側で、

もう一つの会議が始まっていた。


西ヴァルハラ・天頂城グギヨルガルド。


そこには、

かつて“神だったもの”

メルコール・ヴォータンが座している。


そして集うのは、

世界の裏側を操る者たち――

《11人委員会》。


──同時刻。

【西ヴァルハラ・天頂城グギヨルガルド 最上階】


黒い天井に、世界樹の根の影が揺れている。

光源は見えない。だが、部屋全体は淡い金色の光に満ちていた。


その中心に、ひとりの男が立っている。


メルコール・ヴォータン。


かつて“神だったもの”。

今はオーディンに主権を預け、なおも世界を自分の形に戻そうともがく存在。


その背後では、九つの影が膝をついていた。


ナイトライダー。

九つの銅の指輪に魂を縛られた“亡霊騎士”。


「……失敗したな」


メルコールは、穏やかな声で言った。


怒鳴りもしない。

嘆きもしない。


ただ、真理を告げるように。


「公開中継の前で“テロリスト”扱いされた挙句、冥界の祭りで雷のバカ孫に横槍を入れられるとは。……実に、愉快だ」


言葉と裏腹に、背中から立ち上る黒い瘴気は、城の天井を焦がしていた。


ナイトライダーたちは、何も答えない。

答えることができない。


彼らはただ“命令”に従う人形だからだ。


メルコールは、ゆっくりと玉座に腰を下ろした。


「……そろそろだな」


誰に言うでもなく、呟く。


「この世界樹を“調整”してから、幾千年。私は、私自身の“全能”さえ削ってきた。……だが、そろそろ返してもらおうか」


手元の机に、古びた銀の指輪が一つ転がっている。

三つの銀の指輪のうち、既に一つはヘルに“渡してある”。


「ナイトライダーの鎖は、今のままでは足りない。……もっと“科学的”な補助が必要だ」


メルコールは指を鳴らした。


「――入れ」


扉が、音もなく開く。


白いコートの男が、一人。

ボサボサ頭に、分厚いゴーグル。

頬には古傷。

身体のあちこちから、パイプやコードが突き出している。


レコキスタ。

《11人委員会》第6席。

もと妖魔帝国宰相にして、神を研究する狂科学者


その後ろから、柔らかな笑い声が響いた。


「おやおや、“神だったもの”といえど、だいぶ追い詰められているご様子だ」


長い紫の髪を後ろで束ね、薄笑いを浮かべた青年が歩み出る。

マントの内側からは、無数の魔導器具が覗いている。

瞳は狂気と陶酔で彩られていた。


サンジェルマン伯爵。

第7席。

――神羅ユキルのストーカー。


「やあ、メルコール様。久方ぶりですねぇ。今日も世界の不完全さに、ご機嫌斜めで?」


メルコールは、二人を一瞥した。


「……お前たち“11人委員会”は、昔から鬱陶しいほどにしつこい」


「誉め言葉として受け取っておきましょう」


サンジェルマンが、嬉しそうに微笑む。


レコキスタは、ゴテゴテの義手で机をトントンと叩いた。


「本題に入ろう、メルコール殿。貴殿が“全盛期の力”を取り戻したい。そのために、我々の技術協力が欲しい――そういう理解でいいのだな?」


メルコールは、静かに頷いた。


「一なる金の指輪は、既に“世界樹”の反物質エネルギーによって充電されている。

だがその力の解放には正式なヨグソトースのカケラが必要になる。


オーディンめ、賢いことだ。


私が昔の力を取り戻すには

大魔王アザトースに恭順し


彼の側近

邪神副王ヨグソトースの協力を得なければならない。


息子オーディンはアザトースと六盟友の契りを交わしているからな。


自分の上に立つ私をアザトースの同盟者にしたいのだろう。」


彼は、指輪の内側に刻まれた魔法陣を指でなぞる。


「このままでは、“神だったもの”から“ただの老人”になるのは、私の方かもしれんな」


サンジェルマンが、すっと指を立てる。


「だからこそ――我々の出番というわけです」


彼は懐から、小さなガラス管を取り出した。

管の中では、紫色の液体が渦を巻いている。


「ヨグ=ソトースの“偽物のカケラ”から抽出した、調整用ナノマトリクス。銀の指輪と組み合わせれば、貴方の“全能”を、一部だけ元に戻すことができる」


レコキスタも、胸のパネルを開いた。

中には、メカメカしい神経回路図がうねっている。


「我々《11人委員会》は、“神殺し”にも“神の復元”にも慣れている。なに、簡単な話だ。貴殿の力を“別系統”として増幅し、アザトースの理に引っかからない形で世界樹の根に干渉できるようにしてやればいい」


メルコールの瞳が、細くなる。


「……代償は?」


「早い話だ」


レコキスタが笑う。

皺だらけの顔に、少年のような好奇心が浮かぶ。


「“素材”を寄越せ。ヨグソトースのカケラを宿した子どもたち。

ナインライダーの核たる風牙麓に、

ヘルヘイムの女王の首輪と同じ物をつけてもらう。

もちろんワシ用に調整したものをな……

そして――」


サンジェルマンが、陶酔したように目を細める。


「神羅ユキル。あの子は、私の“理想世界”に必要不可欠なのです」


メルコールの口元に、うっすらと笑みが浮かんだ。


「欲深いな、お前たちは」


「人は、欲深いものですよ?」


サンジェルマンが、まるで当たり前のことのように言った。


「――で、どうなさいます?」


しばしの沈黙。


世界樹の根が、遠くで軋む音がする。


メルコールは、ゆっくりと立ち上がった。


「……よかろう」


その声は、静かで、絶対だった。


「雷のバカ孫と、片目の王が“チェス”をしているのなら――私は、“盤面ごと”ひっくり返す」


彼は一なる指輪を持ち上げる。

銀のナノマトリクスが、指輪の縁で不気味に輝いた。


「準備を始めろ、“科学者たち”。」


メルコール・ヴォータンが、静かに宣言する。


「――“神だったもの”の、逆襲を」


九つの影が、膝をついたまま震えた。

ナインライダーたちの指に嵌められた銅の指輪が、うっすらと赤く光る。



世界は、また一歩


子どもたちの“お祭り回”から


戦争へと近づいていく。


挿絵(By みてみん)


◆◆◆


冥界ではレースが続く。


だがその裏で、

世界を覆う陰謀は動き始めていた。


メルコール。

11人委員会。

そしてヨグソトースのカケラ。


世界は静かに、

戦争へと傾いていく。


次回

舞台は巨人世界ヨトゥンヘイム


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