第六章- 鋼の巨人達のプロレス クレイジーナックル杯-1 待ち受ける王者
第六章スタートです!
舞台は巨人世界ヨトゥンヘイム。
第六区間のゴールは――巨大ロボが戦うプロレス闘技場!?
百連勝無敗の地下闘技場王者
《クレイジーナックル》
そして勇者チームとの
機械神タッグバトルが始まります!
今回は試合前会見回です。
百年無敗の地下闘技場王者
VS
冥界から来た勇者チーム
巨人世界ヨトゥンヘイム
《機械神タッグバトル》開幕!
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第六章- 鋼の巨人達のプロレス クレイジーナックル杯
――巨人世界ヨトゥンヘイム
《機械神闘技場マシン・ゴッド・ドーム》 地下アリーナ前
最初に感じたのは、重力だった。
「……っ、軽くなった?」
フレアが思わず体の軽さに足を転ばせ尻をつきかける。
身体が軽い。ジャンプしただけで、空に飛んでいってしまうみたいだ。
「ヨトゥンヘイムの重力は、地上世界の約三分の一。
巨人族とドラゴンのための世界だからね。地球と同じ重力だと、弱い巨大生物はあっという間に膝を壊し歩けなくなる。惑星ヨトゥンヘイムは円盤みたいな形をした特殊な惑星でね。赤道付近ほど遠心力で重力が軽いんだ。北極や南極に行くほど重力は強くなり、重力が強い地域にいる巨人ほど、強力な上位巨人となる」
ミスティルが淡々と解説する。
「北極南極方面なんだけど、普通の人間なら、そこに立つだけで筋肉痛になるくらい重力が強いらしい。……だからこそ、“機械神”が活躍する」
雷音が、空を見上げた。
「……でっけぇな」
頭上に広がるのは、巨大な岩天井。
その内側全体が、リングのように光っている。
眼下には、すり鉢状の大闘技場。
中央には、四角いリング……ではない。
――巨大な“鉄の島”。
鎖で宙吊りにされた鉄板が、何本もの鎖で天井からぶら下がっている。
その上を、巨大ロボットたちが闊歩できるようになっていた。
観客席には、巨人族、ドラゴン族、妖魔、ヘルヘイムからの遠征亡者、そして――
ユグドシラル・キャノンボールの視聴者に向けた無数のホログラムカメラ。
\ワアアアアアアアアア!!/
\ユグドシラルハスターだー!/
\ドゥラグクトゥグァも来てるぞ!/
地鳴りのような歓声が、闘技場全体を揺らしていた。
「……なんか、めっちゃ“お祭り”なんだけど」
フレアが口を半開きにする。
レッドが肩をすくめた。
「どこ行っても祭りなんだよ、このレースは」
ミスティルがニヤニヤ笑いながら腕を組む。
「ま、ここが第六区間のゴールらしいしな。
“巨人世界ヨトゥンヘイム・マシンゴッドタッグマッチ・スペシャル”ってとこか」
「名前長い!」
ミリルが全力でツッコんだ。
◇
そのとき――
場内アナウンスが轟いた。
『レディース・アーンド・ジェントルジャイアンツ!!
お待たせしましたぁぁぁ!!
本日のスペシャルゲスト!! 冥界ヘルヘイムからの勇者御一行様!!
実況はワタクシ、アマチュア無線4級の資格を持つ謎のDJことMCマイクマンが担当します!!どうぞよろしくお願いしますっ!!!』
スポットライトが、フレアたちの入場ゲートを照らす。
続いて、場内の巨大モニターにヘルの顔が映った。
『――こちら冥界中継。“ヘルヘイム公式チャンネル”です。
ただいまより、ユグドシラル・キャノンボール第六区間、
特別ルール《クレイジーナックル杯・機械神タッグバトル試合前会見》を開始します』
「公式チャンネルあったんだ……」
フレアが小声で呟くと、ニカが「ニャ!」と元気よく頷いた。
「にゃー、ニカ、登録してるのー!」
「お前サブスクしてんのかよ……」
「コラ、ニカちゃん小っちゃいうちから映像アプリみたらダメでしょ!」
雷音が呆れたように頭を抱え、フレアがアプリを取り上げようとニカと揉める。
ヘルは、少し悪戯っぽく微笑んだ。
『今回のルールは、挑戦者側の希望を聞いて――
“あいつ”が勝手に決めました。責任は全部、あっちにあります』
「“あいつ”って、誰だよ」
レッドがぼそっと言った、その瞬間。
場内照明が一気に落ちる。
代わりに、鉄の島リングだけが赤く照らされた。
『さぁ――お待ちかね!』
アナウンサーの声が、観客席を震わせる。
『冥界地下闘技場百連勝無敗!
ヨトゥンヘイム契約チャンピオン!
骨を砕いて笑い、ドラゴンを殴って歌い、巨人を投げて踊る男!!』
\クレイジー! クレイジー!/
\ナックル! ナックル!/
熱狂のコールが渦を巻く。
『――人間態・超竜王心臓!!
その名も!!』
ドオオオオオオオオンッ!!
リング中央に、黒い雷が落ちた。
煙と火花が弾け散る。
そして――そこに、立っていた。
◇
身長は、シグルドと同じか、少しだけ低いくらい。
だが――
その男が立った瞬間、
巨人族の観客席が一瞬だけ静まり返った。
上半身は鍛え上げられた筋肉を包む黒いコート。
その下には、古傷だらけの裸の胸。
腰にはドラゴンの鱗を加工したベルト。
髪は金髪で、逆立った逆毛。
片目には、ドラゴンの眼球を埋め込んだような赤い義眼。
口元は、永久に笑っているかのように吊り上がっていた。
「――クレイジーナックル」
ミスティルが、冷静に名を呼ぶ。
超竜ニーズベックの心臓が人間化した姿。
ヘルヘイム地下闘技場の王。
その男は、リングのロープ(という名の鉄鎖)に片足を乗せながら、フレアたちを見下ろした。
「よぉ――!」
遠くからでも聞こえる、甲高くよく通る声。
「待ちくたびれたぜ、“勇者ども”!」
彼は、観客席に向かって両手を広げた。
「聞いたぜ聞いたぜぇ! ナイトライダーとやり合ったってな!
冥界中継バッチリ見てたぜ! 最高だった!!」
クレイジーナックルは、リングロープから軽々と飛び降りる。
ぐん、と地面が沈んだ。
「“銀の指輪”が欲しいんだろ?」
彼は、手の甲に嵌められた銀のリングをひらひらと見せつける。
ヨグソトースの偽カケラを思わせる、渦巻く闇模様が刻まれた指輪。
ヘルが言っていた、“三つの銀の指輪”のひとつ。
「こいつは、俺の“誇り”だ。
百年間、このリングを賭けて、何度も戦った。
でもな――」
彼は、ニヤリと笑った。
「まだ一度も、負けたことがねぇ」
歓声が、再び爆発する。
\クレイジー! クレイジー!/
\負け無し百連勝!/
フレアは、拳を握りしめた。
「……じゃあ、明日が“一敗目”だ」
クレイジーナックルの片目が、嬉しそうに細まる。
「言うじゃねぇか、お嬢ちゃん」
そして男は、ゆっくりと拳を握った。
「――じゃあ見せてみろよ」
ニヤリと牙を見せて笑う。
「百年無敗の王者を、ぶっ倒せるかどうかをなァ!!」
――第六区間
《クレイジーナックル杯》開幕。




