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第五章- 暗黒の騎士ナインライダーズ-10 巨人世界ヨトゥンヘイムへ

戦いの後、冥界に戻った束の間の笑い声。

だが休む暇はない。

次なる舞台は、巨人世界ヨトゥンヘイム。


忘却の渓谷の先で待つのは、

“機械神闘技場”のチャンピオンと、

三つの銀の指輪を巡る新たな死闘――。



一方その頃、冥界フェスの片隅では。


「……シグルドさん」


イサカの目の奥で、誰かが小さく笑った。


挿絵(By みてみん)


『ふふ、やっぱり……シグルドさんは、“子どもと奥さん守ってキレるタイプ”が一番似合うのです』


頭痛がおさまりきらないシグルドは、それでも目の前の光景だけは忘れまいと、強く噛みしめていた。


ニカ。

シルフィス。

イサカの中で揺れる、クリームヒルトの声。


雷音が、少し離れたところからそれを見て、ぼそっと呟く。


「……ずりぃな、シグルドのおっさん」


「え?」


フレアが顔を向ける。


「家族にこんな風に抱きつかれてよ……記憶ないまんまで、守るかどうか迷ってんのに、体が先に動くとかさ……」


雷音は自分の胸を指で小突いた。


「そういうの、一番“勇者”っぽいじゃんか」


フレアは、ふっと笑った。


「大丈夫だよ雷音。あんたも同じだよ」


「は?」


「だって、レース中“女の子のまま”でナイトライダーに突っ込んでったの、誰?」


「うっ」


ミリルが横から元気よく手を上げる。


「ライオナちゃん、かっこよかったのだ!」


「だから雷音だって言ってんだろ!!」


冥界の黄昏空に、笑い声が少しだけ戻ってくる。


……その笑い声が、嵐の前の静けさだと気づかないまま。

物語は、次の戦場――

ヘルヘイム深部《忘却の渓谷》と、クレイジーナックル=ニーズベックの地下闘技場へと、ゆっくり進んでいく。



――ヘルヘイム深部《忘却の渓谷》 入口


灰色の霧が、底なしの谷へと吸い込まれていく。


そこは、「音」が死んでいる場所だった。


どれだけ足音を鳴らしても、叫んでも、反響が返ってこない。

ただ、谷底から絶えず吹き上がる冷たい風だけが、存在を主張している。


「……ここが、“忘却の渓谷”」


フレアがマントを押さえながら呟く。


ヘルの館から伸びる骨の回廊は、ここで途切れていた。

その代わり、崖の縁には巨大な石碑がずらりと並んでいる。


一番手前の石碑に、血のような赤い文字が浮かんだ。


 《挑戦者 来タレ》


「うわ、いかにも“闘技場前”って感じのやつ来たな」


ロキが肩をすくめる。


「ねぇヘル、クレイジーナックルって、ここにいるんじゃなかったの?」


ミリルが首を傾げると、ヘルは小さく頷いた。


「いるよ。“彼のリング”は、この先に繋がってる。……ただし、場所はヘルヘイムじゃない」


「え?」


雷音ライオナが目を細める。


「じゃあ、どこだよ」


「――ヨトゥンヘイム」


ヘルは、谷底を見下ろしながら静かに言った。


「巨人族の世界。巨竜王アングが治める、“機械神闘技場マシン・ゴッド・ドーム”がある場所。

クレイジーナックルは今、そこで“チャンピオン”をやってる」


フレアたちは、顔を見合わせた。


「ヨトゥンヘイム……」


リーンが口元に手を当てる。


「ユグドシラル・キャノンボール第六区間のゴール候補地のひとつ、だったな。炎界議会で揉めてた場所だ」


ロキが苦笑した。


「なるほどね。ヘルヘイムの“忘却の渓谷”と、ヨトゥンヘイムの“地下闘技場”が繋がってるってわけか。

冥界から巨人界へ――まともな観光ルートじゃないなぁ」


レッドが嘯く。

「だが困難なレースコースゆえ、得点ポイントは高い」


ヘルは、谷底に向かってそっと手を伸ばした。


「道を開くよ。……気をつけて。ヨトゥンヘイムは、ヘルヘイム以上に“物理で殴ってくる世界”だから」


それを聞いて漢児が肩をすくめる。

「さすが巨人族の世界」


彼女ヘルの指先から、黒い彼岸花が散った。

花びらが風に乗り、谷底へと舞い降りる。


――次の瞬間。


渓谷の底から、巨大な“歯車”がせり上がってきた。


骨と鉄でできた円盤が、崖の縁いっぱいに広がる。

歯車の中心には、見慣れたロゴが刻まれていた。


 《YGGDRASIL CANNONBALL 第6区間出入口》


「これ……」


レッドが眉を上げる。


「レース用ゲートじゃねぇか」


ミスティルが口笛を吹いた。


「さっすが世界樹。冥界の底までレースコースにしちまうとは、悪趣味だねぇ」


ヘルは、小さく肩をすくめた。


「主催者に文句を言うなら、後でオーディンのとこに行って。……それじゃあ、みんな」


彼女はフレアの手をそっと握る。


「忘れないで。“三つの銀の指輪”の二つ目は、クレイジーナックルの手にある。

勝てば、フウガさんを救う道が開ける。負ければ――」


「魂ごと、ドラゴンの餌、だろ?」


フレアは、ぎゅっと剣を握りしめた。


「――勝つよ。絶対に」


ヘルは微笑んだ。


「うん。行ってらっしゃい。第六区間《巨人世界ヨトゥンヘイム》へ」


歯車ゲートが、低く唸り始める。

足元の骨の床が、光に満たされていく。


フレアたちは、互いに頷き合った。


それぞれが、それぞれの想いを胸に――


光の中へ、飛び込んだ。


光の先は、巨人と竜と暴力の世界。

第六区間ヨトゥンヘイム、突入。

次なる敵は――地下闘技場のチャンピオン!


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