最底辺の貧乏神vs神の黄金バフ〜チート強制解除〜
最底辺の貧乏神vs神の黄金バフ〜チート強制解除〜
神界の炎上神ワイズから直々に下賜された、物理・魔法完全無効の『黄金オーラ』。
あらゆる干渉を受け付けない概念的な絶対無敵を身に纏い、偽勇者ゼロスは完全に勝ち誇っていた。
「フハハハハ! どうした、さっきまでの勢いは! さあ、どこからでもかかってこいよ!」
両手を広げ、醜悪な笑みを浮かべるゼロス。
だが、その無敵のオーラの前に立ち塞がったのは、紫色の芋ジャージを着て健康サンダルを履いた、一人の小柄な少女だった。
鼻に五円玉を詰めたまま、肩に『紙パック式魔導掃除機(先端にお賽銭箱付き)』を担ぐ姿は、どう見ても戦場には不釣り合いなギャグキャラクターだ。
「おいおい、なんだそのみすぼらしいガラクタは? 絶望しすぎて頭がおかしくなったのか?」
ゼロスが腹を抱えて嘲笑する。
「ガラクタではありませんわ! これはファンの皆さまから愛を受け取るための、神聖なお賽銭箱ですの!」
リーザは全く怯むことなく、掃除機のノズルをビシッとゼロスへと向けた。
「神様のバフだか何だか知りませんけど、要するにそれ、ただの『莫大な予算』ですわよね?」
「……は?」
「アイドルは、ステージの上では絶対無敵! ファンの時間も、心も、そして『お財布の中身』も全部吸い尽くして、私の輝きに変えてみせますの!!」
リーザが掃除機の電源スイッチを『強』へと叩き込んだ。
――ユニークスキル【貧乏神】、対象を『神界の黄金バフ』にロックオン。
シュゴォォォォォォォォォォォォッ!!
掃除機のノズルから、先ほど悪徳商人の全財産を吸い尽くした時とは比べ物にならない、凄まじい吸引音が発生した。
空間そのものが歪み、強烈な空気の渦がゼロスを包み込む。
「な、なんだ!? 風……? いや、ただの風じゃない!」
ゼロスが慌てて足を踏ん張る。
物理的な風圧ではない。掃除機が吸い込んでいるのは、ゼロスの身体を覆っていた『黄金のオーラ』そのものだった。
絶対に突破不可能だったはずの無敵のオーラが、まるで水飴のようにビロォォォンと引き伸ばされ、リーザの掃除機へと一直線に吸い込まれ始めたのだ。
「なっ!? ぼ、僕のオーラが……神界のバフが、吸い込まれているだと!?」
ゼロスがパニックに陥り、聖剣を振り回してオーラの流出を止めようとするが、全く意味がない。
「す、すごいですわクロトさん! あの絶対無敵のオーラが、みるみる薄くなっていきますわ!」
キャルルがウサギの耳をピンと立て、目を輝かせる。
「兄さん……アレ、エグすぎまっせ」
ニャングルが煙管を落としそうになりながら、ガタガタと震える手で算盤を弾いた。
「ワイの目には、あの黄金のオーラが全部『お金の束』に見えまっせ。あのオーラ、神界のスポンサーから降りた超巨額の広告予算を、そのまま防御力に変換しとるんですわ! それをあの掃除機、一瞬で虚空へ消し去りよる……!」
そう、リーザの【貧乏神】スキルの真骨頂。
それは魔力だろうが運気だろうが、対象が『資産的価値』を持つものであれば、問答無用で全額強制吸引(破産)させる究極のデバフだ。
「さあさあ、もっとですわ! 神様からの太っ腹なスパチャ、残さずいただきますのー!」
リーザが満面のアイドルスマイルで掃除機を振り回す。
『ば、バカなッ! やめろォォォッ!!』
突然、空中に浮かんでいたドローンカメラから、炎上神ワイズの悲鳴のような怒声が響き渡った。
『そのバフは、私が来期のスポンサー料を前借りして限界まで注ぎ込んだ、莫大な神界予算の結晶なのだぞ! それを、そんな安物の掃除機で吸うな! 私の借金が、赤字が膨らんでいくゥゥゥッ!!』
神界のオフィスで、ワイズがモニターにすがりつきながら血の涙を流している光景が目に浮かぶようだ。
だが、リーザはお構いなしだ。
「うるさいですわね! 一度投げたスパチャの返金対応は受け付けておりませんの!」
「や、やめろ……! 頼む、やめてくれ! これがなくなったら、僕は、僕はただの――」
ゼロスが涙目でオーラを掻き抱こうとするが、無情にもリーザの掃除機は吸引を止めない。
そして、数十秒後。
ズボボボボボッ!
――スポンッ!!
まるで、詰まっていたトイレの配管が抜けたような、なんとも情けなくマヌケな音が戦場に響き渡った。
「あ……」
ゼロスが呆然と自分の身体を見下ろす。
彼を包んでいた神々しい黄金のオーラは、欠片ひとつ残さず、完全に消え去っていた。
神界からの莫大な予算は、紫色の芋ジャージを着た少女の掃除機によって、一円残らず吸い尽くされてしまったのだ。
「ふう。ごちそうさまでしたの! 今日も良いライブでしたわ!」
リーザは掃除機のスイッチを切り、満足げにお腹をポンと叩いた。(※吸い取った資産は虚空へ消滅するため、彼女の懐には一円も入っていないのだが、本人はご満悦である)
「う、嘘だ……。嘘だ嘘だ嘘だ! 僕の、僕の絶対無敵が……神の加護が……!」
ゼロスはその場に膝から崩れ落ち、頭を抱えてガタガタと震え始めた。
『あ、あああ……終わった。私の神界でのキャリアが……数億ゴールドの負債が……』
ドローンカメラから聞こえていたワイズ神の声も、絶望に染まって小さくなっていく。
静まり返る戦場。
俺は、呆然としているゼロスの前へと、ゆっくりと歩み出た。
「……さて。邪魔なオーラは消えたな」
俺の声にビクッと肩を震わせ、ゼロスが顔を上げる。
その顔は泥と涙と鼻水に塗れ、爽やかな勇者の面影など微塵も残っていなかった。
「ひ、ひぃッ! く、来るな! 僕にはまだ、ユニークスキルの【マネー】で極限まで高めたステータスがある! 近づいたら、この聖剣で八つ裂きにして――」
「やってみろよ」
俺は立ち止まり、背中に負っていた剣の柄に、静かに右手をかけた。
「言ったはずだ。お前はただ、課金して数字を上げただけの素人だとな」
俺の言葉に逆上し、ゼロスが絶叫と共に立ち上がる。
「舐めるなァァァッ!! 僕は選ばれた勇者だ! お前みたいな平民ごときに、負けるはずがないんだァァァッ!!」
限界まで高められた筋力と敏捷性。
ゼロスは音速を超えるスピードで踏み込み、手にした伝説級の聖剣を上段から全力で振り下ろした。
バフは消えたが、彼のステータス自体は未だに規格外のままだ。まともに受ければ、大地ごと叩き割られるような一撃。
だが。
俺は、今度こそはっきりと、黒塗りの直剣を鞘から引き抜いた。
「フェラーリの無免許運転は、ここで終わりだ」
メッキが完全に剥がれ落ちた偽勇者を、本物の技術と重力で解体する。
俺は極限まで脱力し、迫り来る聖剣の軌道を見据えた。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!
「スポンッ!! www マヌケすぎるww」
「クソ神ワイズ、借金まみれでざまぁwww」
「いよいよクロトが剣を抜いた! 処刑の時間だ!」
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次回、ステータスだけの偽勇者を、一歩も動かずに完全解体する圧倒的蹂躙劇! お楽しみに!




