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先輩従魔の顔合わせと二匹目の従魔登録

 町に戻り、ゴブリン退治とラミア退治したことを冒険者ギルドに報告するとギルド内は騒然としていた。

 ゴブリンは百匹ほど、そしてラミアはCランクに相当する魔物らしく、冒険者ランク最下位のEであるレイヤと私では受注すら出来ない案件である。


「いくらEランクのゴブリンでも百匹を二人で相手するのは最低でもランクDは必須なのにラミアまで討伐していたとは……」


 魔物退治の証拠としてゴブリン約百匹分の片耳と丸焦げのラミアの亡骸をそのままアイテムバッグから取り出して提出した。

 虚偽の申告をしていないかの確認のため、記憶石で加工された魔道具を使って報告、そしてギルドカードの依頼履歴に情報が転送される。

 商業ギルドにもあるこの記憶石を使った魔道具はギルド職員達によると記憶認証石とも呼ばれているのだと最近知った。


 さて、この重くアイテムバッグに入れるのに苦労してレイヤに手伝ってもらったラミアなのだけど、上半身は黒焦げではあるが、下半身はそれほど焦げていない。なので買い取りをしてもらうために持ち込んでみた。

 ラミアは蛇の皮から素材として、蛇肉も少し珍しい食用として重宝されているので、多少蛇の部位が焦げていたとしても使えると思う。

 ゴブリンはスライムなどと同様に生息数が多いのだが、特に売れる物がないので遺体を回収するだけ無駄とされている。そのため、片耳を切って持って行くのがゴブリン退治の証明となるのだ。


「冒険者ランクが低い頃は上のランクに早くいきたいがために功績を立てたいって思う奴は多い。しかし、相手の力を見誤って二度と冒険者として活動出来ない奴もいるからな。無理はするんじゃねーぞ? 戦いを避けてギルドに報告してくれる方が死んじまうより遥かに有難いからよ」

「えっと……はい」

「しかし、二人は怪我もなさそうだし、すぐにランクアップ出来そうだな。ランクCくらいは余裕じゃねーか?」

「あ、あはは、そうですかねー?」


 ランクアップをしたいわけじゃないが、適当に愛想笑いしながらギルドの人と話を合わせる。

 レイヤは別として私は上級ランクも中級ランクも目指したくはない。普通の町の住人として生きたいのだから。……いや、家は町外れでどっちかというと町の外と言われるのだけど。


「買い取りについてはこのあと担当の者に回すが全てこっちで買い取っていいのか?」

「あ、蛇肉だけ少しだけ欲しいです」

「あ~そりゃそうだな。貴重なラミアの肉だし」

(……蛇の肉を食うのか? しかもさっき戦ったラミアの……?)

「じゃあ、取り置きしといてやるぜ。解体や皮を剥ぐ作業があるから明日にでも取り来てくれ」

「すみません。私達このあと馬車に乗ってスタービレに帰るので町に送ってもらうことは出来ますか?」


 馬車襲撃事件も解決したので馬車の運行も再開した。元々早く帰ることが目的なので、馬車が動くのなら早々に帰宅につきたいのだ。


「それならギルドへの輸送になるが大丈夫か?」

「はい、大丈夫です」


 後日スタービレの冒険者ギルドに届けてくれるそうなので、欲しいラミアの蛇肉の量を伝えてギルドをあとにした。


 馬車へ乗り、港町を経てスタービレへと帰って来たのは二日後の夕方頃。

 実に六日ぶりの我が家だ。そんな家の近くにある一本の大きな木の下にはレスペクトの姿もあった。

 こちらが声をかける前に気配か匂いで気づいたのか、座っていた身体を起こし、私達の方へと顔を向けてくれた。


「レスペクトー!」


 彼の元へ駆け寄って相変わらず大きな身体を持つレスペクトの目の前に立ち止まる。


「ただいまっ」

『……帰って来るなり騒々しい』

「レスペクトを見たらつい……」


 正直に答えたのだが、彼はフン、と鼻を鳴らしそっぽ向いてしまった。照れ隠しだと思いたい。


「私が留守の間は何も問題なかった?」

『ギルドの生意気な若造が何日か続けてお前を訪ねに来たな。イルはしばらく帰って来ないと伝えようにも奴には言葉が通じんから無駄足だったようだが』


 ……きっとフロワさんだ。服飾の町で見かけた高ランク魔物の討伐隊に参加してほしいという要請だろう。……良かった、家にいないくて。


「搾乳の時間はリリーフと上手く出来た?」

『問題ない。日が経つにつれて手際が良くなっていたな。鈍臭いお前とは大違いだ』

「一言多いなぁ……でも、上手くやれて良かったよ」


 正直、頼んでいたとはいえリリーフもレスペクトの言葉がわからないので上手く出来るか心配ではあった。

 レスペクトも彼女に悪い印象は抱いていないようで安心である。あとでリリーフの家に行って帰って来た報告をしなきゃだ。


『ところでそいつはなんだ?』

「そいつ?」

『スライムだ』


 私の肩に乗っているプニーのことを差していることに気づいた私は「あ」と大切なことを思い出す。


「エルフの村に向かう途中で新しく従魔になったスライムのプニーだよ。対話出来るスキルを持っててみんなと話が出来るの」

『……』

「プニー。彼はプニーと同じ私の従魔、カトブレパスのレスペクトだよ」

『プニーだよー。よー』

『……』


 プニーが挨拶してるにも関わらず、レスペクトは黙ったまま。……もしかして認めないとか、仲良くするつもりがないとか、不満があるのかな?

 しばらくしてから彼は深い溜め息を吐き出した。


『そんな奴を従魔にしてどうするつもりだ』

「どう……?」


 成り行きではあるものの、どうすると言われてもピンとこない。気づいたら従魔になってしまったわけだし。

 肩の上に乗るプニーをちらりと見ると、うねうねしたり、でろんと蕩ける様子を見せていた。そんなプニーをよしよしと撫でながらレスペクトに伝える。


「大事に可愛がる!」

『可愛がられる! る!』

『……ハァ』


 二度目の溜め息を吐き捨てられた。おそらく呆れられているようである。


『スライムは弱い。戦いには向かんぞ』

「え? う、うん。大丈夫! 危険な目には遭わせないから!」

『……。だが、戦えないわけじゃない。見た目に騙されているがスライムなのだから消化液を吐くので無害ではないぞ』

「大丈夫だよ。プニーは私も他の人も傷つけなかったし」

『……勝手にしろ。私は従者しか面倒見んぞ』

「ありがとう!」

『ありがとー。とー』


 多分、彼は私を心配してくれてるのだろう。スライムであろうと魔物といえば魔物だから。それに主が私なのできっと頼りないと思われてるのかも。

 まぁ、なんだか両親にペットを飼うのをお願いする感じに似ているけど、レスペクトが一番の強者だから許可は取っておかないと。レイヤが来たときも警戒心凄かったしね。

 こうしてレスペクトから許可も取れたし、プニーは正式に私の家に住むことが決まった。

 その後はリリーフに無事に戻って来たことを報告し、明日の夕方にはエルフの食材を使って和菓子を作ることも約束した。


 翌日、プニーを従魔にしたことをギルドに報告するため、プニーを連れて冒険者ギルドへ向かった。

 従魔登録をして、従魔管理リングも装着しなければならないのだろうけど……でも、スライムってどうやってリングを着けるのかな?

 このぷにぷにしたボディでは従魔管理リングを装着しても外れそうだし……。


「すみません。従魔登録をしたいのですが……」

「イル様! どこに行ってらしたんですか! 何日かお宅に伺ったのに!」


 受付に声をかけたらフロワさんが少し取り乱したようにカウンターから身を乗り出して来た。思わず、うげっと心の中で声に出してしまう。

 ……それにしても冒険者ギルドに行く度にフロワさんに当たる率高すぎる。おかしいな……他にもギルド職員はいるはずなのに。


「あ~……えっと、ちょっと所用がありまして何日か留守にしてました」

「ドラゴン討伐隊参加をお願いしようとしたのに……」


 やっぱりそうだった! ドラゴンだなんてなんておっかない!

 いや、そもそもなんでこっちに頼ろうとするの!? 冒険者なんて沢山いるでしょ! うちに強力な従魔がいるからって……! でも家にいなくて良かった……本当に。駆り出されるところだった。


「あの、そのドラゴン討伐はどうなりましたか?」

「成功しました。負傷者も出ましたがなんとか」


 それならまだ良かった。討伐失敗だったら私にも回ってくる可能性が非常に高かっただろうし。


「そういえば従魔登録と仰っていましたがそのスライムですか?」

『プニーだよー。よー』

「……。……!?」


 肩の上で話すプニーをフロワさんは黙ったまま見つめたあと凄く驚いた顔をされてしまった。


「……失礼致しました。対話スキルを持ったスライムですね」

「はい。話せるのってやっぱり珍しいんですか?」

「人型の魔物は会話出来ますが、その他は少ないですね」


 確かに人型以外の魔物と会話するなんてあまり聞かないし、カトブレパスであるレスペクトは私としか話が出来ないことを思うとやはり珍しい部類というのは納得である。


「やはりそのスライムも普通のスライムと違って強かったりするんです?」

「えーと……話す以外は普通のスライムかと……」

「そうですか。あまり危害はなさそうとは思いますが調教はしっかりとお願いします。では、登録に移りたいと思います」


 ギルドカードを提出し、無事に従魔登録を終えた。そんなに時間がかかるものではないのでありがたい。


「あ、そういえばこの子にも従魔管理リングを装着するんですよね?」

「はい。ですが、スライムのような身体が変形出来そうな形状は装着が難しいので、指輪状のリングを体内に埋め込む形になります」

「う、埋め込むんですか?」

「スライムの従魔は皆そうなんですよ。まぁ、埋め込むというより体内にしまうという感覚が近いです」

「なるほど……」

「ですのでリングのサイズ計測はしませんので一番小さい物を用意致します」

「わかりました。ありがとうございました」


 お礼を伝えてギルドを出ようとしたら、フロワさんは何かを思い出したの私の名を口にして呼び止めた。


「あ、イル様。本日別ギルドから魔物素材が届いてますので買取カウンターにて受け取りをお願いします」


 どうやらラミアの蛇肉が届いたらしい。買取受付のカウンターへと向かうと担当のフォルスさんが私を見てニカッと笑って出迎えてくれた。


「おう! イルの嬢ちゃん! 久しぶりだな? 全然顔を見ないから心配してたぜ」

「あはは……私、冒険者としてはそんなに活動するつもりはなくて……」

「そうか、そりゃあ勿体ねぇが無理強いは良くねぇな。ん? そいつは新しいお仲間か?」


 フォルスさんがプニーに目をつけ尋ねてきた。そうですと私は頷いて答えると、プニーも同じように頷くように身体を動かした。


『プニーだよー! よー!』

「おっ! 喋るタイプか。意思疎通が出来ていいもんだぜ!」

「そうですねっ。あと、とてもいい子なんですよ」

「そいつぁ良かった。あぁ、そうだ。お前さん宛にラミアの蛇肉が一キロと、買い取った素材の代金に討伐の報酬金が届いてるぜ」


 ドンッと蛇肉が入った袋と報酬金の入った袋が用意される。想像していたよりもお金が多そうだなと思ってしまった。


「しっかし、よその町でラミア退治とはやるじゃねぇか。ランクアップの試験は受けねぇのか?」

「いやぁ……たまたまでしたし、ランクアップには興味がなくて」

「なら仕方ないな。まぁ、気が向いたらランクを上げてもいいだろう」


 気が向くことはないんだけどね。とは、さすがに言えないので「そうですねー」と適当な返事をする。


「肉を見たところ、このラミアは海蛇型だな」

「海蛇……?」

「ラミアは種類があってな。海蛇型や土蛇型、毒蛇型と色々いるんだ」

「そういえば水魔法を使ってました」

「海蛇型の得意魔法だな。海辺や周辺に住むことが多くて、弱点は火魔法なんだがこいつは水魔法が得意だから魔法の相性は悪いんだよ。だから高火力でぶっ放すのが手っ取り早い」


 その話を聞いてエクスプロージョンが正しい選択だといのはよくわかった。しかし、一つだけ疑問が残る。


「でも、その海蛇型のラミアは洞窟の奥にいましたよ?」

「別に珍しいことじゃねぇさ。洞窟はジメジメしてるし、海蛇型としては過ごしやすい場所だな。まぁ、海の方が逃げやすいし、火魔法も効きにくいからあちらさんにとって安心なのはそっちだが。それでも人型の魔物は知識もあるから手強い相手だ。イルの嬢ちゃんもよく仕留めたもんだな?」

「あ、いえ、友人と一緒に倒せたので私だけの力じゃないんです」

「ランクEならもう少し自信を持ってもいいが……。まぁ、無理せず頑張れよ」

「はい、ありがとうございます」


 報酬金と蛇肉をいただくとが出来た私はリリーフのために作るスイーツのために帰宅することにした。


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