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【天界編開始!】黄昏のウェルガリア【累計100万PV突破】  作者: 如月文人
第三部【天界】編

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第八百二十三話 風光明媚(後編)



---三人称視点---



 目の前に草原が広がる。

 風に揺れる緑。

 遠くにそびえる山脈。

 風が頬を撫でていく感触が気持ちいい。


 丘から降りたウェルガリア天界遠征軍は、

 それぞれ各部隊ごとに陣形を組んで、

 周囲に注意を払いながら、目の前の壮大な草原を進んだ。


 「楽園エリア」の風景も素晴しかったが、

 この「空中庭園くうちゅうていえんエリア」も負けてない。

 

 周囲の風景自体は、

 ウェルガリアでも見かける光景であったが、

 やや閉鎖的だった前エリア「迷宮エリア」に比べたら、

 このエリアの方が景観的にもずっと良かった。


 だが良い事ばかりではない。

 草原を進む最中にもこのエリアの魔物や魔獣と遭遇した。


 楽園エリアでも遭遇した一角兎アルミラージや鹿っぽい獣。

 またゴブリンやコボルトやオーク、オーガの類いもいた。


 尤も天界遠征軍は、

 ウェルガリアでも有数の精鋭部隊。

 この程度の魔物や魔獣は彼等の敵ではなかった。


「――強制調教きょうせいテイムっ!!」


「ピ、ピギィィィッ!?」


 マライアの紫紺の鞭が振り、前方の一角兎アルミラージを捕らえた。

 紫紺の鞭でぐるぐる巻きにされた一角兎アルミラージは、

 両耳をピンと立てて、その場に立ち尽くした。


「――これから私がアナタのマスターよ。

 アナタの名前は……イリーにしましょう。

 イリー、マスターの命令よ、地面に伏せなさい」


「ピギギギッ!」


 マライアがそう命令を下すと、

 イリーと名付けられた一角兎アルミラージは地面に伏せた。


「相変わらず見事なものですね」


「どうも、とりあえず索敵や探索はイリーに任せましょう」


 ラサミスの言葉を笑顔で返すマライア。

 その後、探索を続けたが異変らしい異変は起きなかった。


 一時間砂時計が五回落ちきったところで、

 空が暗くなってきた。

 どうやらこのエリアには、夜の概念があるようだ。


 そこで魔王レクサーは、草原の北部で流れる川の近辺で野営する事にした。

 多くのテントが張られて、焚き火が焚かれた。


 ラサミス達もバックパックからテントを取り出して、

 テントのリングをペグで地面に打ち付けて、固定させる。 

 当然男女別々であったが、夫婦であるラサミスとエリスは、

 同じテントで一夜を共にする事となった。


「んじゃアタシの出番ですねえ。

 とりあえず今夜は大量のチキンスープを作ります。

 釣りが得意な人は、釣り竿を渡すので魚を釣ってきてください」


 荷物持ち(サポーター)のキャミルがそう言って、

 鉄の大鍋を取り出して、チキンスープを作り始めた。


 その間にラサミス達や他の部隊の者達は、釣竿を持って河原に釣りに行った。

 ラサミス達は器用に魚を釣り、

 その釣った魚を木の串に刺して、焚き火で焼いた。 


「おお このチキンスープ、凄く美味いぞ!」


「本当! 凄く美味しい!」


 カーマイン夫妻がそう驚きの声を上げた。

 他の者も同様に「マジだ」とか「凄い」などの感想を述べた。

 するとキャミルがややドヤ顔気味に「ふふん」と鼻を鳴らした。


「喜んでもらえたようで何よりです。

 やはり食事は人生における大事な要素ですからね。

 ここが充実しないと、色々と力が入らないでしょう」


「おお、なんかやる気出てきたぜ」


「夜が明けたら、この先にある森に入るんだよな?」


「嗚呼、ジウバルト。 魔王陛下はそう言ってるぜ」


 と、ラサミス。


「恐らく敵の先兵が何か仕掛けて来るだろうな」


 と、用心するジウバルト。


「まあそう思っていいだろう。

 とりあえず夜の間にも見張りを置くし、

 皆は夜明けに備えて、寝る努力をしておくようにな」


 ラサミスの言葉に彼の仲間も無言で頷いた。

 だが思うように眠れぬ者が居たので、

 ニャラード団長やその配下の魔導猫騎士に睡眠魔法をかけてもらい、

 ようやく眠る事が出来た。


---------


 その頃、草原の先にある大森林の中。

 そこでは先兵として派遣された二十体の天使兵が

 一体につき、大森林の中の熊や狼などの魔獣を二十体ずつ強制洗脳状態にした。


 合計四百体の熊と狼などの魔獣、魔物が強制洗脳状態となり、

 これから森に侵入するであろう天界遠征軍の前に立ちはだかろうとしていたが、

 先兵として派遣された天使兵の顔色は優れなかった。


「しかし熊や狼などの魔物、魔獣を四百体ほど使役しても、

 精々時間稼ぎにしかならないだろうな」


 と、一人の天使兵がそう言うと、

 周囲の天使兵達も同意した。


「嗚呼、このエリアに居る天使兵や機械兵を

 総動員しても、奴等を全滅させるのは無理だろう」


「そうだよな、連中は次々と大天使を倒している」


「だがサンダルフォン様もそれは承知の上だ。

 オレ等は捨て石だが、彼も生き残るつもりはないようだ」


「そうか、ある意味覚悟が決まっているな。

 だが少々、無責任にも思えるな」


 一人の天使兵がそう言うと、

 周囲の天使兵も思わず押し黙った。


「確かにそう言えなくもないな。

 だが自己保身しか考えない司令官よりは、

 幾分かマシだ、まあ我等もある種の機械兵。

 死ぬ事に恐怖はないが、

 犬死にはしたくないものだな」


 と、言ったとある天使兵の発言に、

 周囲の天使兵達も「嗚呼」や「そうだな」と頷く。


「まあこの大森林での攻防はあくまで前哨戦。

 ここで変に忠義を尽くして死ぬのも馬鹿らしい。

 基本的に魔物、魔獣に任せて、

 俺達は敵を一人でも多く倒す事だけを考えよう」


 この発言に周囲の天使兵達も賛同した。

 そして各自、大森林の奥まで下がり、

 後は魔物、魔獣に任せて高みの見物を決め込んだ。


次回の更新は2026年8月27日(木)の予定です。


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