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【天界編開始!】黄昏のウェルガリア【累計100万PV突破】  作者: 如月文人
第三部【天界】編

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第八百二十四話 大森林の戦い(前編)



---三人称視点---



「――グゥルォォォン!」


「遅いぜっ! 一の太刀っ!」


 迫り食う大熊に対して、

 ラサミスは左手に持った聖刀・顎門あぎとを水平に振るう。

 すると眼前の大熊の両目が水平に切り裂かれた。


「ガ、ガ、ガルォォォンッ!!」


 暴れ熊がその名の通り暴れ狂うが、

 ラサミスは慌てる事なく、

 右手に持った斬魔刀ざんまとうで突きを大熊の眉間に繰り出した。


「――諸手突きっ!」


「ガ、が、ガララアアアッ!!!」


 見事な二刀流による連続技が決まり、

 眉間を綺麗に突かれた大熊が断末魔を上げた。


「――ヴォーパル・スラストッ!」


「――スピニング・ドライバーッ!」


「――キリング・サイスッ!」


「――クロス・スマッシュッ!」


 ラサミスに負けじと、

 ミネルバ、ジュリー、ジウバルト、バルデロン等も

 手にした武器で大熊の弱点の眉間に武器スキルを喰らわせた。


「ふう、これでもう二十体は倒しているぞ。

 この荒ぶった獣の様子からして、

 天使兵が強制調教きょうせいテイムしているとみるべきだろうな」


「そうでしょうね。

 でもイマイチせないわ」


「何だ、ミネルバ。 何が気になるんだ?」


 ラサミスがそう問うと、

 ミネルバは自分が感じた事をありのまま語った。


「確かにこの森の熊や狼はそれなりの強敵よ。

 でもアタシ達が苦戦する程でないのも事実。

 それなのに敵の親玉や天使兵は姿を見せない。

 その辺がどうにも気になるのよ」


「ミネルバさんの言う通りですね。

 これは只の敵の時間稼ぎかもしれません」


 と、ジュリー。


「その可能性は高いな」


 と、ジウバルトが相槌を打つ。


「なら無理をせず確実に魔物を倒すべきですね」


「嗚呼、バルデロンの言う通りだ。

 こんな戦いで死ぬのは馬鹿らしい。

 だから皆、注意して確実に敵を減らしていくぞ」


 ラサミスの言葉に団員達も無言で頷いた。

 

「グオオオォ!」


 そうこう言っているうちに新手が現れた。

 眼前の大熊は、ウェルガリアで言うところの、

 エルフ領に生息するレイジング・ベアに似ていた。


 その大熊はラサミス目掛けて突貫して来る。

 そして大熊は、振り上げて右腕を大きく払った。


 直撃すれば、ラサミスの顔面は破壊されただろう。

 だから当たらなければ、どうという事もない。


 ――ブゥンッ!


 ラサミスは、華麗にスウェイバックして、

 大熊が繰り出した右腕を難なく躱した。


「――雷炎剣らいえんけんっ!」


 ラサミスはここで左手に持った聖刀で、

 得意技の「雷炎剣らいえんけん」を放った。

 聖刀の刀身から紅蓮の炎がうねりを生じて、

 大熊目掛けて放出された。


「グルゥォォ!」


 苦悶の響きが籠った叫びだ。

 紅蓮の炎が大熊の全身を焦がす中、

 大熊は大きく身体を開いて、ラサミスに迫ろうとしたが――


 パアン、パアン。

 乾いた銃声と共に大熊の左目に銃弾が命中。

 そして次の瞬間には、新たな銃弾が眉間に命中した。


 姿勢を崩した大熊は、

 前のめりのヘッドスライディングのような格好で転倒。

 そしてしばらくすると動かなくなった。


「久しぶりの熊狩りね。 あのフォリスの森を思い出すわ」


 後ろから声が聞こえたので、振り向くラサミス。

 するとそこには両腕で銀色の魔法銃を抱えたマリベーレが立っていた。


 あのフォリスの森の戦いから、

 数年が経ったが、あの時の少女は今では立派な女性になりつつあった。


「マリベーレ、また助けられたな」


「いいのよ、これがあたしの仕事だからね」


「二人ともお喋りしている場合じゃないわよ」


「嗚呼」「うん」


 メイリンに嗜まれて、

 ラサミスとマリベーレも再び戦闘態勢を取った。


「グゥルォォォン!」


 胃の腑を揺らすような低い咆哮と共に新手の大熊が現れた。


「コイツはアタシが受け持つわ」


「おう! ミネルバ、任せたぜっ!」


「ええ! 任されましょうよ!」


 そう言葉を交わすと、ミネルバが前線に躍り出た。

 睨み合い、せめぎ合いを繰り返すミネルバと大熊。

 どうにか大熊の強烈な一撃を回避しつつ攻撃を仕掛けるミネルバであったが、

 それらは大熊への有効打にはならず、

 徐々に体力が消耗していく。


「結構やるわね。 ならばこれならどう!

 ――龍炎波りゅうえんはっ!!!」


 ミネルバが帝王級ていおうきゅうの槍術スキルの炎属性攻撃「龍炎波」を発動。

 すると聖槍せいそうの穂先から、渦巻く炎塊が放出された。


「ガアアアアアアアアァッ!!」


 渦巻く炎塊は大熊に直撃し、炎がその巨体を駆け巡る。

 大熊はのたうち回り、身体を痙攣させながらのたうち回り始める。

 この隙を逃すまいと、ミネルバも動く。


「――ペンタ・トゥレラッ!!!」


 ここで英雄級の槍術スキルを放つミネルバ。

 ミネルバは聖槍の穂先を高速で、前方に突き刺した。

 一発から五発目が見事に命中。


「グア……」


 激しく暴れまわっていた大熊であったが、

 その動きは段々と弱まっていき、

 最終的には倒れ伏して動かなくなってしまった。


「良し! 倒したわ!」


 と、左手を強く握りしめるミネルバ。

 彼女も今ではレフ団長と並び立つ高レベルの竜騎士ドラグーン

 相手が大熊で本気を出せば、これくらいの事は朝飯前だ。


「でもまだ敵は居ますよ!

 大熊だけでなく、狼も!」


 ジュリーがそう注意を促すが、

 ラサミスとミネルバは意気揚々と前へ出て――


「大熊だろうが、狼だろうが問題ないさ。

 大天使に比べたら、屁でもないぜ」


「ラサミス、その言い方は下品よ」


 と、ミネルバ。


「すまねえ、すまねえ」


「いずれにせよ、大熊と狼を始末するわよ!」


 そして彼等に触発されて、

 ジュリー、ジウバルト、バルデロンもそれぞれ武器を構えて、

 すり足で前へ歩み出た。


 大熊も狼も確かに侮れない魔獣だが、

 今のラサミス達の敵ではなかった。



次回の更新は2026年8月30日(日)の予定です。


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