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【天界編開始!】黄昏のウェルガリア【累計100万PV突破】  作者: 如月文人
第三部【天界】編

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第八百十八話 大熾天使長(前編)



---三人称視点---


「!?」


 大熾天使長だいしてんしちょうメタトロンの唐突な言葉に、

 天使長ミカエルも思わず、目を瞬かせた。


 何を言うか、迷うミカエル。

 するとメタトロンが新たに言葉を紡いだ。


(どうした? われの言葉に返答はしないのか?)


「いえ……急な話で少し驚いていただけです」


(そうか、それで貴公の意見は?)


 結論を急かすメタトロンに、

 ミカエルは思わず辟易しながらも、冷静に応じた。


「あえて聞きます。

 何故そのような事を申すのでしょうか?」


(そうだな、そうしないとこの天界)

(そしてこの宇宙の法則自体が崩壊する危険性があるからだ)


「……」


 唐突な話にミカエルは、困惑しながらも、

 以前、神と対話した時の言葉を思い出した。


(この世界、宇宙に大きな影響を与えて)

(この世界、宇宙を構成する法則が崩壊して)

(この世界、宇宙が滅びても)


(アナタは自分の考えを突き通しますか?)


 確か神はこのような事を言った。

 それと似たような事を大熾天使長だいしてんしちょうであるメタトロンが口にしたので、

 ミカエルとしては、安易に無視出来ない状況となっていた。


(……どうした? われの言葉を疑っているのか?)


「いえ……神にも似たような事を言われました」


(そうか)

(それで貴公の意見は?)


「具体的なお話をお聞かせください」


(それもそうだな)

(このような話をすぐに聞き入れる)

(というのも貴公の立場からすれば、無理な話だな)


「ええ……」


(では端的に説明しよう)

(貴公等が特異点をこの天界に迎えた事によって)

(この天界のバランスが微妙に崩れつつある)


(この天界は他の異世界とは少し違う特殊な空間である)

(その天界のバランスが崩れる事によって)

(この天界だけでなく、宇宙の法則にも異変が起きつつあるのだ)


「……」


(特異点はその名の通り特異的な存在だ)

(貴公等が招いた特異点も同様だ)

(特異点は周囲に及ぼす影響力が非常に強い)


(その結果、味方だけでなく)

(敵である我等、天使族にも強い影響力を及ぼす危険性がある)

(そうなると天使族の間にも不協和音が生じて)

(最悪の場合は、天使族間で争いが生じる事もある)


(……現時点でも似たような事が起きているのではないか?)


「否定はしませんよ」


(そうか)

(それでも貴公は自分の考えを押し通すのか?)


 責める訳でもなく、諭す訳でもないメタトロンの口調に、

 ミカエルは言い知れぬ不安を感じた。


 メタトロンの言っている事は、

 前に神が言った言葉と酷似している。


 どうやら自分達は、知らず知らずのうちに、

 とんでもない事態を巻き起こそうとしているようだ。


 だがそれと同時にこうも思う。


 ――確かにメタトロンの言葉は無視出来ない。

 ――でも私にも私の考えがある。


 ――そしてその結果、多くの大天使を失った。

 ――その状況で自分の考えを途中で変えるのは、

 ――死んで逝った大天使達に対しても、申し訳ない。


 ――とはいえ神やメタトロンの言葉は無視出来ない。

 ――だからここはメタトロンの言葉を真剣に聞こう。


「私にも天使長としての矜持があります。

 故にここまでした自分の行いを安易に変える気はないです。

 とはいえ神や大熾天使長だいしてんしちょうのお言葉を

 完全に無視するほど、狭量きょうりょうでもありません」


(そうか)

(流石は天使族を束ねる天使長だ)

(神の言葉を盲信せず、自分の考えもしっかり持っている)


(だがそれでもあえて言おう)

(自分の考えを押し殺して)

われや神の言葉に素直に従うのだ)


「そうしないとこの天界。

 そして宇宙の法則が崩壊する、という訳ですか?」


(まだ確定事項ではない)

(だが確定してからでは遅いのだ)


(だから今のうちから対抗策を打つのだ)


「それがウェルガリアの民の抹殺に繋がるのですか?」


(そうだ!)


「……」


 メタトロンの言葉に嘘はないだろう。

 ここで彼、あるいは彼女が嘘をつくメリットはない。


 何せミカエルに直接、声を掛けてきたのだ。

 それだけで緊急事態という事は、ミカエルも理解出来た。


 だがその上で彼は自身の考えを押し通した。


「ご忠告ありがとうございます。

 ですが彼等――ウェルガリアの民の応対は、

 私及び大天使達にお任せください。

 これは我等が始めた戦いです。

 ですので事の終わりも我等の手で決めます!」


(……)


 ミカエルはあくまで自分の考えを貫いた。

 無論、彼とてこの事態を軽く捉えている訳ではなかった。


 しかし彼にも天使長としての矜持と立場がある。

 だからここで安易に自分の考えを変える事は出来ない。


 だがメタトロンは、そんな彼の考えを一蹴した。


(甘い)

(甘い、甘い、甘いっ!)


(貴公一人の矜持の為に)

(この天界、更には宇宙にも危険を及ばすつもりか!)


われとしては、そんな真似を赦す訳にはいかぬ!)


「……」


 どうやら状況に応じては、

 このメタトロンと激しくやり合う事になりそうだ。


 いや既にそうなっているかもしれん。

 だがミカエルも自分の考えを譲らなかった。


「何と言われても構いません!

 私は自分の考えを変える気はありません!」



次回の更新は2026年8月16日(日)の予定です。


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