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【天界編開始!】黄昏のウェルガリア【累計100万PV突破】  作者: 如月文人
第三部【天界】編

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第八百十二話 光芒一閃(後編)



---ラサミス視点---



「――ローリング・ナックルッ!!!」


 オレは前へ出る勢いを利用して、押し出すように右拳を前へ突き出した。

 そしてその右拳がメルキセデクの腹部に命中する寸前に内側に回転を加えた。

 コークスクリューのジョルトブロウ。

 その必殺パンチがメルキセデクの腹部に綺麗にめり込んだ。


 魔力反応が『闇熱風やみねっぷう』から『超闇熱風ちょうやみねっぷう』に変わり、

 メルキセデクは何度も小さな悲鳴を上げて、

 左手で腹部を押さえて、打撃の衝撃で後方に激しく吹っ飛んだ。

 

 そして背中から地面に倒れて、

 陸に上がった魚のように身体を何度も何度も痙攣させた。


「ふう、防御力10000でもオレの攻撃が通用するんだな。

 少しばかり自信を持っても良さそうだな」


 だが打撃の衝撃でオレの右拳の皮が捲れていた。

 この辺は通常の大天使と違い、

 メルキセデクは、機械のような身体だからな。

 これくらいなら名誉の負傷と言えるだろう。


「カーマイン、油断するな!

 確実に止めを刺すんだっ!!」


「魔王……陛下、そうだな。

 ここで相手が息を吹き返すと厄介だな」


 オレはレクサーの言葉にそう応えて、

 剣帯の黒鞘から右手で斬魔刀ざんまとうを抜刀する。


 多分、このままでも相手は直に死ぬだろうが、

 念には念を押しておくべきだな。


 オレは前に数歩進んで、

 死に身体のメルキセデクを上から見下ろした。


 魔力反応が『超闇熱風ちょうやみねっぷう』の影響もあり、

 メルキセデクの身体を覆う闇色の炎がその装甲をジワジワと高熱で焼いている。

 だがメルキセデクの息の根はまだ止まってない。


 あれだけの連続攻撃を浴びて、

 まだ身体の自由を効く辺り、コイツの生命力は並ではない。

 ならば最後のダメ押しをするか。


「……お前の勝ちだ……止めを刺せ……」


 消え入るような声でそう言うメルキセデク。

 だがこういう状況でも油断はしてはいけない。


「嗚呼、そうさせてもらうぜ! ――諸手突きっ!」


 オレは地面に転がったメルキセデクの腹部を

 両手で柄を持った斬魔刀の切っ先で深く刺し込んだ。

 既に装甲が破壊されていたので、

 斬魔刀の切っ先がスムーズに腹部の奥へと突き刺さる。


 だがこれは下準備に過ぎない。

 そして次の一手で止めを刺すっ!


「――雷炎剣らいえんけんっ!!!」


 するとオレの斬魔刀に紅蓮の炎が宿り、

 オレは零距離から、その紅蓮の炎を解き放った。

 次の瞬間、小さくない爆発が起こり、

 その衝撃でメルキセデクの装甲が破壊されて、

 その破片が周囲に飛び散った。


「……終わったか?」


 オレは右手に斬魔刀を持ったまま、

 爆発が収まるまで、メルキセデクの周囲に居た。


 そして爆発が収まると、

 腹部が破壊されて、

 その周辺の装甲が吹き飛んだメルキセデクの姿が視界に入った。

 だがメルキセデクは、まだ両手や両足を僅かに動かしていた。


 ……驚いた。

 この零距離攻撃でもまだ生きているのか。


 コイツの生命力は、オレの想像を遙かに超えている。

 と思っていると、脳内にメルキセデクの声が届いてきた。


『特異点ラサミス・カーマイン。 ワタシの声が聞こえるか?』


「ん、念話テレパシーか? とりあえず聞こえているぞ」


『……最後に貴公と少し話したい』


「ん、まあ構わんよ。 後、オレもアンタに聞きたい事がある」


『……何だ? 言ってみるがよい』


 確かウリエルを倒した時もこんな感じだったな。

 まあ聞きたい事は色々あるが、まずは――


「お前さんのその身体は、機械的な何かなのか?

 見た感じあのウリエルの神化しんかした姿に似てるが……」


『その事か、結論から言えばワタシは神化しんかした状態が

 デフォルトの大天使だ、大天使達がある種の精神思念体。

 という話は熾天使してんしウリエル辺りから聞いてるか?』


「嗚呼、確かに奴はそんな事を言ってたな」


『ワタシは機械の身体を持つ事によって、

 数百年、あるいはそれ以上生きる事によって、

 大天使が持つ精神にどのような影響力を持つか。

 というコンセプトで製造された大天使だ』


「ほう、天使も色々と試行錯誤してるんだな」


『その結果、魂を定着させた状態で、

 改造が効く便利な身体を手に入れたが、

 まさか地上人に負けるとはな、長生きしてみるものだ』


「オレもアンタに勝てるとは思わなかったよ。

 何せ防御力カンストだもんな。

 でも有機物である限り、

 破壊出来ないという事はない、と知ったよ」


『ワタシも死ぬ前に特異点と邂逅出来て良かったよ。

 だがな、あまり増長するなよ?

 仮に貴公等がこのまま勝ち続けたとしても、

 大天使や熾天使してんし相手に力だけで

 ものの通りを押し通そうとするのは危険だ』


 ……。

 まあ言わんとする事は分かるぜ。

 でも最初に仕掛けて来たのはそちらだろ?


 と、思いつつもオレはその言葉を呑み込んだ。

 ……仕方ない、こちらもある程度譲歩するか。


「そうだな、ウリエルにも似たような事を言われたよ。

 でもここまで来れば、話し合いだけでは事は解決しない。

 だからオレ達は力を示して、

 アンタ等――大天使と対等の交渉テーブルについた上で、

 お互いの妥協点を探り合い、お互いの進むべきを見つけたい。

 と、オレも今ではそう思ってるよ」


『そうか、やはり貴公は只者ではないな……。

 ワタシは一足早くこの舞台から退場するが、

 貴公や大天使が良き結論に辿り着く事を祈ってるよ……』


 それだけ言い残すと、メルキセデクは静かに息を引き取った。

 メルキセデクのソウル・ストーンの力は失われて、

 数秒後にはメルキセデクの心臓部にあるエンジェル・コアも停止した。


「……とりあえず回収しておこう」


 オレは地面に落ちた二つの石を拾い、

 自分の携帯ポーチの中にしまいこんだ。

 そしてその数秒後に、オレの全身に物凄い力が漲った。


 全身から溢れ出る力と万能感。

 毎度の事ながら悪くない感覚だ。

 そしてオレは、腰のポーチから自分の冒険者の証を取り出す。


「これでレベル97か、今回でレベル3も上がったのか。

 確か最高値が100だったよな。

 こりゃ100まで到達する可能性もあるな。

 スキルポイントも60もあるぜ……」


 しかし今はとても喜ぶ気にはなれなかった。

 そしてオレは仲間のもとに歩み寄り――


「今回も何とか勝ったぜ」


 と、言って笑みを浮かべた。

 すると仲間達も笑顔で返してくれた。


 こうしてオレ達は、無事に迷宮城の攻略に成功した。



次回の更新は2026年8月2日(日)の予定です。


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― 新着の感想 ―
お忙しいなかでのご執筆お疲れ様です。あっという間に最新話まで追いつきました(笑)それは僕の読むペースが速いからという事ではなく本作の読み易さと楽しみ易さがあるというところあってこそだと思います……!本…
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