第八百十一話 光芒一閃(前編)
第百二十一章 光芒一閃
---ラサミス視点---
オレは全力でダッシュする。
するとメルキセデクとの距離が一気に詰まった。
良し、射程圏内に入ったぜ。
オレは落ちつきながら、腰をどっしりと降ろして、
両肩の力を抜いて、すり足で間合いを詰める。
――後、三歩。
――後、二歩。
――後、一歩。
――良し、間合いに入った。
「きえぇぇぇーーーーーーっっ!!」
オレはそう叫び声を上げて、
十八番の居合い斬りを繰り出した。
「チン!」という音と共に刀が鞘に綺麗に収まる。
狙いはメルキセデクの首筋。
そして次の瞬間、異変が起きた。
「ぬ、ぬおおおぉぉぉっっっ!!」
メルキセデクの悲鳴と同時に、その首筋が切り裂かれた。
だが血は出ず、代わりにメルキセデクの首筋から火花が飛び、
ピピッ、という電子音が周囲に鳴り響いた。
どうやら本当に機械の身体のようだな。
どういう理屈や構造かは分からんが、
機械の身体といえ、無敵である筈もない。
壊れない機械など存在しない。
それを実行すべくオレはここから怒濤の連続技を繰り出した。
「――サマーソルトキックッ!!」
オレはそう叫ぶなり、反り返るように反転した。
そこから右足を大きく蹴り上げた。
オレの右足が綺麗な軌道を描いて、
メルキセデクの顎の先端を綺麗に捉えた。
「ご、ごはぁぁぁっ!!」
メルキセデクが左手で顎を押さえて、喘いだ。
だが血や唾液の類いは吐いてない。
正真正銘の機械の身体のようだ。
だがそれがどうした?
オレの攻撃はこんなもんじゃ終わらないぜっ!
「――空中回転後ろ蹴りっ!!」
オレは身体を反転させて、
今度は空中回転後ろ蹴りをメルキセデクの顎の先端に喰らわせた。
「ごはあぁぁッ……ああぁぁッ!」
強烈な衝撃がオレの右足に伝わる。
メルキセデクが身体を激しく揺らすが、
両足を凍結された為、その動きはぎこちなかった。
しかしその状態でも余力をふりぼって、
右手に持った黄金の戦槌を激しく振り上げて――
「――フェイス・クラッシャーッ!」
オレの顔面目掛けて、振り下ろしてきた。
だがオレは慌てず、冷静に――
「――真剣白刃取りっ!!!」
両足を固定されたメルキセデクの動きは、
万全ではなく少し遅かった。
それを見越した上でオレはある種の賭けに出た。
そして次の瞬間には、驚きの光景が生まれていた。
奴の武器スキルは決まらず、
オレがその黄金の戦槌の柄舌を両手で綺麗に挟んでいた。
この土壇場で敵の攻撃を真剣白刃取りをしてみせたのだ。
これには周囲の仲間も驚いてた模様。
「嘘でしょ!?」
「流石はラサミスだわ」
「うむ、カーマイン! やるではないか!」
メイリンやエリス、レクサーの声が後ろから聞こえてきた。
だがオレは気を緩めなかった。
ここからが本番だからな!
オレは黄金の戦槌の柄舌を挟んだ両手を放して、
後ろに一度、二度、三度と下がった。
そして素早く剣帯の鞘から斬魔刀を右手で抜刀する。
「――無明三段っ!!」
踏み込むと同時に、三つの突きを放った。
胴体、小手、逆小手に突きが見事に決まった。
「う、う、、うっっっッ!?」
胴体と小手を打たれたメルキセデクは、
手にした黄金の戦槌を地面に落として、激しく戦いた。
「まだまだ続くぜっ! ――乱火風光剣っ!!」
オレは、ここでまた独創的技を繰り出した。
まずは斬魔刀の刀身に風の闘気を宿らせて、袈裟斬りを放つ。
「ぐほっ……」
袈裟斬りが見事に決まり、
メルキセデクは、右肩口を斬りつけられて、低い声で呻いた。
今度は刀身に炎の闘気を宿らせた。
そこから逆袈裟を放ち、
メルキセデクの身体に×の字を刻み込んだ。
風と炎が混じり合い、魔力反応『熱風』が発生。
だがこれで終わらない。
終わらせない!
オレは右手に持った斬魔刀の刀身に闇の闘気を宿らせる。
お次はその腹部目掛けて、渾身の突きを繰り出した。
斬魔刀がメルキセデクの腹部に突き刺さり、
オレの手元にも確かな感触が伝わる。
斬魔刀がメルキセデクの腹部の装甲を貫いて、
その切っ先が奴の腹部に見事に突き刺さった。
そして魔力反応が『熱風』から『闇熱風』に変化する。
「ぬおおおっ……このままやられるかっ!!!」
メルキセデクが右手を水平に振って、オレの頭部を狙ってきた。
ある意味、ヤケクソの攻撃だが、
この状況で反撃に転じる精神力は素直に褒めてやりたい。
だがこのまま馬鹿正直に殴られるつもりはない。
オレはそこから綺麗にスウェイ・バックして、
放たれたメルキセデクの右ビンタを華麗に回避する。
そしてオレはメルキセデクの腹部に刺さった愛刀を
綺麗に抜き去り、鞘に納刀した。
そして軸足を右足から左足に切り替えた。
そう、左構えから右構えにスイッチしたのさ。
「――黄金の息吹」
ここで職業能力「黄金の息吹」を発動。
注ぎ込む魔力は全魔力の七割に設定。
するとオレの右手に膨大な魔力が蓄積された。
これでお膳立ては整った。
後は全力の一撃をぶっ放してやるぜっ!
そしてオレは腹の底から大声で叫んだ。
「――ローリング・ナックルッ!!!」
次回の更新は2026年7月30日(木)の予定です。
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