第八百十話 鉄壁のメルキセデク(後編)
---三人称視点---
薄黒い衝撃波は眩く輝いた障壁に命中すると周囲に大音声が鳴り響いた。
そして物凄い力と力による綱引きが起こったが、
薄黒い衝撃波は眩く輝いた障壁を見事に貫通。
だがまだメルキセデクには、
左手に持ったイージス・シールドが残されていた。
そして間を置かずして、
薄黒い衝撃波が白銀の大盾――イージス・シールドに命中した。
すると周囲に再び物凄い大音声が響く。
メルキセデクのイージス・シールドは、
神器に該当する超性能を誇る大盾。
並の攻撃なら完璧に防げる程の強度を誇る。
だが魔王レクサーの渾身の一撃は、
その神器といえど完全に防ぐ事は出来なかった。
超高速で横回転しながら、
メルキセデクの白銀の大盾を削り込む薄黒い衝撃波。
その耳朶を打つ音にラサミス達も負わず左手で耳を塞ぐ。
「くっ……このイージス・シールドをここまで押し込めるとは……。
流石は魔王と言うべきか」
白銀の大盾に身を隠しながら、そう言うメルキセデク。
その間にも薄黒い衝撃波が耳障りな音を立てて、
白銀の大盾の表面を削り込んだ。
そして気が付けば大盾を貫通していた。
「ば、馬鹿なっ!? ぐはっ!!!」
大盾を貫通した薄黒い衝撃波がメルキセデクの左胸部に命中。
だが流石に威力が弱まっていたので、
メルキセデクの左胸部を完全に貫通するまでには至らなかった。
とはいえ白銀の大盾は綺麗に貫通されて、
メルキセデクの左胸部にも大きな大穴が生じた。
これを見てラサミスも行動を起こした。
「――黄金時間」
ラサミスは、切り札の黄金時間をここで発動。
これでラサミスの蓄積時間はなくなった。
「うおおおっ……おおおっ! ――明鏡止水っ!!」
続いてラサミスが職業能力『明鏡止水』を発動させた。
次の瞬間、ラサミスの全身に物凄い力が漲った。
これで『明鏡止水』が無事に重ね掛けされた。
発動時間は五分、蓄積時間は十分。
「大賢者殿、奴に向かって氷結あるいは水属性の魔法攻撃を!」
良く見るとメルキセデクの白銀の大盾の中央部に大穴が空いていた。
それを見てシーネンレムスもラサミスの意図を咄嗟に理解した。
「天の覇者、氷帝よ!
我が名はシーネンレムス!
我が身を氷帝に捧ぐ!
偉大なる氷帝よ。 我に力を与えたまえ!」
そう呪文を紡ぎ、シーネンレムスは左腕を真っ直ぐ前方に伸ばす。
攻撃する座標地点は、メルキセデクが居る前方。
彼我の距離は、
凡そ250メーレル(約250メートル)前後。
魔法の威力と範囲は通常に設定。
だが速度に関しては最高に設定。
そしてシーネンレムスは、最後の呪文を力強く叫んだ。
「――ピアシング・コールドッ!!」
最後の呪文が紡がれるなり、
シーネンレムスの前方に凍てつくような冷気が生じた。
それから数秒もしないうち広がり、
メルキセデクが左手に持った白銀の大盾があっという間に凍りついた。
「流石は大賢者! 理解が早くて助かるぜ!」
「カーマイン殿、行けっ! ――ぶちかますのだ!」
大声でそう叫ぶシーネンレムス。
「了解だぜっ! ――雷神剣っ!!!」
ラサミスが技名コールをすると、
彼が右手に持った斬魔刀に雷光が宿った。
「喰らえぇぇぇっ!!!」
ラサミスは気勢を上げて、
雷光が宿った斬魔刀を前方に突き出した。
次の瞬間、斬魔刀の切っ先から、稲妻が放たれた。
「ぬっ……抜かったわ!!!」
逃げ出したくても逃げられないメルキセデク。
彼が左手に持った白銀の大盾は、
見事に凍り付き、その左手だけでなく、
メルキセデクの左胸部、そして両足も凍結させていた。
その刹那、耳朶を打つ雷鳴が轟き、
左手に持った白銀の大盾の大穴を掻い潜り、
標的としたメルキセデクの身体に稲妻が命中した。
「ぬっ、ぬっ……ぬううう……わあああぁぁぁっ!」
稲妻に撃たれたメルキセデクは、狂ったような悲鳴を上げた。
通常の電撃に加えて、魔力反応「感電」も発生。
強固な防御力を誇るメルキセデクもこの一撃は堪えたようで、
全細胞が破壊されたかのように激しく喘いだ。
「うううう、ううううっ……」
電撃をまともに浴びたメルキセデクは、
全身から黒煙を噴き出しながら、
左手に持った白銀の大盾を手放して、
左膝を地面について、全身を震わせた。
それと同時にラサミスが動き出した。
「この絶好の好機を逃す馬鹿は居ねえ!
一気にケリをつけてやんぜっ! 疾走っ!!!」
ラサミスはそう言って、疾走を発動した、
右手で斬魔刀の柄を握りながら、
身を低くして、全力で地を蹴り、メルキセデク目掛けて突撃した。
次回の更新は2026年7月28日(火)の予定です。
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