第八百十三話 余情残心(前編)
---三人称視点---
「ここから見えるあの大きな祭壇に、
また 「エンジェル・コア」と「ソウル・ストーン」を献げるんだろうな」
「うむ、とりあえず行ってみようでないか」
ラサミスとレクサーがそう言ったので、
周囲の仲間達も二人の後について行った。
程なくして、本殿エリアの奥の祭壇の間に到着。
するとその時に祭壇の近くから声が聞こえてきた。
『ここは迷宮城の祭壇の間です。
どうやら皆様はこのエリアの階層主を無事倒したようですね』
楽園エリアと似たような事を自動音声が問うてきたが、
二度目の事なのでラサミス達も落ち着いて応対した。
『これでこの迷宮エリアの攻略は達成されました。
次のエリア――『空中庭園エリア』へ進むのであれば、
このエリアの大天使を倒した際に入手した二つの石。
「エンジェル・コア」と「ソウル・ストーン」を
祭壇の上に置いてください』
「あいよ」
ラサミスが腰のポーチから、
メルキセデクを倒した際に入手した二つの石を取り出した。
『「エンジェル・コア」と「ソウル・ストーン」を確認しました。
準備が出来たら、祭壇の上へ置いてください。
その後、次のエリアへ続く転移ゲート。
それとこの迷宮城の出入り口となる転移ゲートが開きます』
「カーマイン、石を置いてくれ」
「魔王陛下、そのつもりさ」
ラサミスはゆっくりと神殿の祭壇に近づいて、二つの石を置いた。
すると祭壇の周囲に強い魔力の波動が走った。
『「エンジェル・コア」と「ソウル・ストーン」が無事に置かれました。
おめでとうございます、これにて迷宮エリアのクリアです。
数秒後に次のエリアへ進む転移ゲートと、
この迷宮城の出入り口となる転移ゲートを開きます』
「ブオオオン」
という音と共に祭壇の奥のスペースに、
光り輝いた縦長のドアのような物が二つ現れた。
『手前が迷宮城の出入り口となる転移ゲート。
その奥にある転移ゲートは、次のエリアへ進むものとなります。
ではこれにて自動ナビゲーションを停止します』
「ふう、どうやら無事に転移ゲートを開けたようだな」
「そうだね、まずは外に居る仲間と合流すべきだね」
と、ラサミスと剣聖ヨハン。
すると魔王レクサーが横目で近くに居るラモンを見据えた。
その視線に気付いたラモンは笑顔で――
「オッケー、オッケー、またオレ様がゲートを潜るよ。
魔王陛下もそれで良いんだよな?」
「嗚呼、一度入ってから、こっちに戻ってくれ」
「オーケー、じゃあラモン、行きま~す~」
そう言って、ラモンは手前の転移ゲートに入り込んだ。
するとラモンの身体が光に包まれて綺麗に消えた。
「本当に物怖じしない奴だな」
と、魔王レクサー。
「ある意味、凄い奴よね。
多分大物よ、そして馬鹿者でもありそう」
半分褒めて半分けなすメイリン。
周囲の仲間も似たような感想を抱いていた。
すると転移ゲートが再び光りラモンが姿を現した。
「問題なく戻れたぜ。
向こうにも転移ゲートがあるから、出戻りは自由だぜっ!
それと向こうで既に仲間が待機してる状態だ!」
「そうか、ラモンご苦労さん。
とりあえずまずは味方の合流を優先しましょう」
と、剣聖ヨハン。
「うむ、結構な大人数だから時間がかかりそうだ。
その待ち時間を生かして、食事と休憩を取るぞ」
レクサーの言葉にラサミス達も素直に従う。
そして荷物持ちから道具一式を受け取り、
食事と休憩の準備を始めた。
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無事に勝利をおさめた天界遠征軍は、
この迷宮城の本殿エリアで野営をする事にした。
「まだ全員が無事に転移するには時間がかかりそうだな。
だからは今は食事の準備をしようぜ」
「ええ、そうしましょう」
そしてラサミス達は、荷物持ちのキャミル達と
楽園エリアの時と同じように、火セットを用意して火をおこす。
「しかしこのエリアはあまり食料が豊富じゃないからな。
だから今ある食材で軽めの食事を作るか」
「こういう時を想定して、
楽園エリアで調達した各種の肉。
そして保存していた野菜もまだまだありますよ。
この天界は時間の概念がないので、
食材が腐る事がないのは、非常に有り難いですよ~」
そう言ってキャミルは、
バックパックから、各種の肉類と色とりどりの野菜を出した。
キャミルは料理ナイフを右手に持ち、
肉類と野菜を適当に切って、塩とスパイスを適当にまぶして、
網に乗せて焼き始めた。
また保存していた楽園エリアの湧き水で、
コーンス―プや紅茶、珈琲などを用意した。
だが如何せん大人数なので、人数分用意するのには、
結構時間を要するので、ウェルガリア産の「一時間砂時計」を設置して、
一応は時間を計る事にした。
そして「一時間砂時計」が二回全て落ちきった時に、
迷宮城の外の仲間も大方無事に転移を終えた。
また八割方の肉と野菜が焼けて、
ラサミス達はそれを木皿に乗せて、
フォークやスプーンを使って食べる事にした。
「しかし今回は味方の犠牲者は、少なかったわね」
と、フォークに刺した一角兎の肉を口に運ぶミネルバ。
「まあな、でも次はどうなるか分からん。
だから今のうちにゆっくり休んでおけよ」
「それはそうとラサミス、またレベルが上がったんじゃないの?」
「エリス、ああ。 レベルが三つも上がって97になったよ」
「レベル97! マジかよ、スゲえな!」
「ええ、普通に凄いです」
と、驚くジウバルトとジュリー。
「カンストまで後たったの三ね」
「ええ、まさかこんな身近にレベル100に到達しようとする者が
居るとは思いもしませんでしたよ」
と、マリベーレとバルデロン。
「まあその三を上げるのが大変なんでしょうね。
ラサミス、今は待機時間もあるし、
この後でアンタのスキルポイントを割り振りましょうよ」
「メイリン、勿論そのつもりさ。
だがその前に食事をしっかり摂ろうぜ。
休める時に休み、食えると時に食う。
冒険者の鉄則だぜ」
「それもそうね」
そう言葉を交わすラサミスとメイリン。
そしてラサミス達は皿の上の肉と野菜をゆっくり噛んで堪能した。
次回の更新は2026年8月4日(火)の予定です。
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