第八百二話 黒虎(後編)
---三人称視点---
「――スターライト・インパクトォッ!!」
剣聖ヨハンはそう技名を叫びながら、
得意の独創的技を繰り出した。
まず袈裟斬りと逆袈裟を神速の速さで繰り出し、
黒虎の胴体にXの文字を刻みつけた。
『ご、ごはあああァッ!!!』
呻く黒虎。
だが剣聖ヨハンは情けなどかけない。
ヨハンは素早く踏み込みながら、聖剣を振り上げる。
――この技を食らう訳にはいかぬ!
『ぬおおおおっ……おおおっ!!!』
「なっ……ごはっ!!!」
黒虎が巨体を揺らして、
ヨハンに対して、渾身の体当たりを喰らわせた。
体重300キール(約300キロ)の巨体による体当たり。
対するヨハンの身長は168セレチ(約168センチ)という小兵。
まともに体当たりを喰らったヨハンは、
体当たりの衝撃で後ろに激しく吹っ飛んだ。
「くっ……やられはせんよ!」
ヨハンは聖剣の切っ先を地面に刺して、
何とか転倒を回避するが、受けたダメージは大きかった。
『――まずは貴様を始末する』
黒虎が大口を開けて、
ヨハンが居る咆哮に顔を向ける。
得意の電撃の弾を吐き出すつもりだろう。
だがこの瞬間を待ってる者が居た。
それも二名だ!
「チャンスッ! ――クイック・ショットォォォッ!!!」
猫族の銃士ラモンが中間距離から、
右手に持った黒い拳銃の引き金を引いた。
すると放たれた銃弾が黒虎の左眼に眼中。
『が、が、がァァァァ……アアアァァァッ!!!』
この世の終わりのような悲鳴を上げる黒虎。
ラモンの放った銃弾が見事に黒虎の左眼を捉えた。
これによって黒虎の視界は半分に遮られた。
だがこれで終わりではない。
ここで第二陣となる聖なる弓使いのカリンも動く。
「――団長、今助けます! ――セラフィム・アローッ!!」
カリンは左手を突き出し、
右手を引き締めて弓を引く構えを取りながら、眉間に力を込めた。
金色の弓と弦の間に炎光がゆっくりと生み出される。
カリンはその炎光を矢のような形状に変えて、前方に向けて放った。
すると矢の形状となった炎光が黒虎の口の中に命中する。
『が、が、がぁあああ……あああっ!!』
矢の形状となった炎光が黒虎の大きな舌を貫いた、
それによって黒虎の舌は、大きく焼きただれる。
この状態では雷撃の弾を放つのは難しかった。
これを見てニャラード団長がいち早く動いた。
まずはダメージを負ったヨハンの傷を癒やす。
「ヨハン団長、今傷を癒やすニャ!
――ディバイン・ヒールッ!」
ニャラード団長の左手から目映い光が放たれて、
ヨハンの傷ついた身体を優しく包み込んだ。
これによってヨハンは、聖剣で地面を指したまま、
ゆっくりと上半身を起こした。
「ニャラード団長、ありがとうございます。
ボクはもう大丈夫です、後は貴方に任せます」
「ニャ! 任されましょうっ!!!
まずはサイコキネシスッ!!!」
ニャラード団長は、ここで念動魔法「サイコキネシス」を発動。
彼は左手を前に突き出して、魔力を一気に篭めた。
すると遠くの地面に落ちていた赤い羽根付き帽子が念動力に反応して、
ニャラード団長の左手にたぐり寄せられた。
次にニャラード団長は、その赤い羽根付き帽子に水属性の闘気を存分に注入した。
すると赤い羽根付き帽子が青く光り出した。
それからニャラード団長は、苦しみ悶える黒虎目掛けて、
水の闘機を存分に注入した赤い羽根付き帽子を華麗に放り投げた。
「ニャァァッ! アクア・カッターハットッ!」
赤い羽根付き帽子は、綺麗な横回転をしながら、
一直線に進み、そのまま黒虎の喉元を切り裂いた、
『が、が、がっ……ぐほっ!!!』
再び苦しむ黒虎。
最早、青息吐息であった。
だがニャラード団長も容赦しない。
倒せる時に敵を倒す。
戦場における定石を自らの手で示す。
「――ルミナス・ハンドソードッ!」
ニャラード団長がそう叫ぶと、
彼の右手にとんでもない量の光の闘気が纏われた。
それを手刀の形にして、ニャラード団長は、
身を低くしながら、両足で地面を蹴って、一気に間合いを詰めた。
「止めニャっ! ――ルミナス・ハンドソードッ!!!」
ニャラード団長の右手が高速で空を裂いた。
それと同時に黒虎の首筋が切り裂かれて、
その頭部が胴体から強制的に分離された。
『う、嘘……だろ?』
地面に転がる黒虎の頭部が最後にそう言った。
だがいくら黒虎といえど、
首を跳ねられては、生命活動を続ける事は困難であった。
ものの十秒もしないうちにその頭部も動かなくなった。
「思ってたより大した敵でニャかったな。
それとも私が強すぎたのかもしれんニャ」
そう言って、ニャラード団長は不敵に笑った。
こうして予想に反して、黒虎討伐は早く終了した。
次回の更新は2026年7月9日(木)の予定です。
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