第八百一話 黒虎(中編)
---三人称視点---
「――ゾディアック・ブレードッ!」
「――ライガー・クロウッ!!」
「――五月雨突きっ!!」
『ぬおおおぉぉぉっ!!!』
剣聖ヨハン、デュークハルト、女侍アーリアの武器スキルが決まり、
黒虎の身体に切り傷や引っ掻き傷が刻まれる。
すると黒虎は、口を大きく開けて叫んだ。
『小賢しい、小賢しい、我を舐めるではないっ!
貴様等如き、この我一人で倒してくれようっ!
ハアァァァッ! アアアァァァッ!」
すると黒虎の口から何かが発射された。
突然の事で回避行動も取れず、シャルク団長が直撃を受けた。
「うおおおっ……おおおっ!!!」
声にならない声を上げるシャルク団長。
シャルク団長の身体は焼け焦げて、
身に纏った鎧からも白い煙が沸き立っていた。
「こ、これは……まさか口から雷の弾を放ったのか!」
「ニャラード団長、どうやらそのようですよ」
と、冷静に言う剣聖ヨハン。
「そうか! とりあえずシャルク団長に回復魔法をっ!」
「はい、私が癒やします! ――ディバイン・ヒールッ!」
女魔導師リリアが咄嗟に上級回復魔法を唱えた。
それによって傷ついたシャルク団長の身体が癒やされる。
「ぐっ……皆、気をつけろ!
威力もそうだが、攻撃速度がかなり高い。
だがそう何度も連発は出来ないだろうから、
奴が口を開けたら回避行動を取るんだ」
「シャルク団長、分りました。
皆、前衛、中衛共に散開しろ!
奴が口を開けたら、要注意だ!」
剣聖ヨハンの指示は的確だった。
彼の言葉に従い、前衛、中衛の仲間も散り散りになって逃げた。
『ガルルルッ! ぬはははっ! 良い様だな。
だが距離を取ったのは、悪くない策だ。
だがその程度のことは、我も百も承知だ!』
高笑いする黒虎。
そして今度はリリアに向かって、雷の弾を吐いた。
回復役を潰す。
こういうパーティ戦における定石だ。
「フライ・ハイッ!」
だがリリアも馬鹿ではない。
咄嗟に飛行魔法を使って、上空へ逃げた。
すると黒虎も首を伸ばして空を見据えるが――
「それ以上はさせないニャ!
――ライトニング・カッターッ!」
今度はツシマンが仕掛けた。
短縮詠唱で左手から光の刃を出して、
無防備になった黒虎に強襲するが――
『甘いわっ! ――雷壁っ!』
今度は黒虎が電撃の障壁を生み出した。
放たれた光の刃が電撃の障壁に命中。
するとバチバチと音を立てて、光の刃は力なく消え去った。
「……想像以上に動きが早いニャ。
それなり反応速度も高く、判断力も良い。
流石は北門を護るだけの事はあるニャ」
「感心している場合じゃないでしょ!
何か策はないの?」
と、エンドラが冷静に突っ込む。
するとニャラード団長は――
「私とヨハン殿が二人一組となって攻めよう。
周囲の者は奴の動きに警戒しつつ、
私達の邪魔にならないように動いてくれ。
どうも散開しても奴のあの電撃系の魔法から、
逃げるのも攻めるのも楽ではなさそうだからニャ」
「ニャラード団長、また頃合いを見て、
奴の電撃を吸収してください」
「ヨハン殿、勿論そのつもりだ」
「じゃあ二人一組になりましょう」
「嗚呼」
そしてニャラード団長とヨハンは、
共に横に並んで黒虎に向かって飛びかかった。
『くっ、あの猫は吸収系の能力を持っている。
迂闊には攻撃も防御も出来んな、洒落臭いっ!』
「ヨハン殿、まずはここは私が動く!」
「了解ですっ!」
「ふんっ! ――物質強化っ!」
ここでニャラード団長は、
上級職「ハイ・セージ」の職業能力「物質強化」を発動させた。
この職業能力を使用すれば、
指定した物質を瞬時に強化する事が出来るのだ。
「ニャアアア……アアアァンッ!!
カッターハットッ!!!」
ニャラード団長が魔力を篭めると、
彼が右手に持った赤い羽根付き帽子が目映く光り輝いた。
これでこの赤い羽根付き帽子は、強化された。
そしてその強化された赤い羽根付き帽子を黒虎目掛けて、投げつけた。
『ぎゃ、ギャアァァァッ!』
鋭利になった赤い羽根付き帽子が黒虎の左前足に命中。
キリキリと音を立てて、
赤い羽根付き帽子が黒虎の左前足を切り裂く。
「良し、この好機を逃すまいっ! ――疾走っ!」
今度はヨハンが動いた。
咄嗟に疾走を発動して、一気に間合いを詰めた。
そして右手に持った聖剣サンドライトを軽く振り上げて――
「――スターライト・インパクトォッ!!」
自身の独創的技を放った。
次回の更新は2026年7月7日(火)の予定です。
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