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【天界編開始!】黄昏のウェルガリア【累計100万PV突破】  作者: 如月文人
第三部【天界】編

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第八百話 黒虎(前編)

第百十九章 黒虎


---三人称視点---



 眼前でこちらをジーと凝視する巨体の黒虎くろとら

 良く見ると黒虎くろとらの周囲に雷が纏われていた。


「アイツ、身体に雷を纏ってるようですニャ」


「ですね、ニャラード団長。

 電撃系の使い手か、こちらにレフ団長が居れば良かったですね」


 と、剣聖ヨハン。


「でもこちらには何人かの魔導師が居ますよ。

 やりようによっては、幾らでも戦えます!」


 凜々しい声でそう言うシモーヌ隊長。


「そうですニャ、まずは黒虎くろとらが纏っている雷を相殺しなきゃ。

 ツシマン、お前がまずは風属性攻撃魔法で牽制してみろ!」


「了解でニャンす! まずは小手調べでニャンす!

 ハアァァァッ! ――竜巻トゥルボーっ!!!」


 ツシマンがまずは牽制攻撃を仕掛けた、

 小規模ながら威力は強力で実用性の高い風属性魔法が解き放たれた。

 渦巻いた竜巻が黒虎くろとらの周囲で渦巻いた。

 その結果、黒虎くろとらが纏い放電している雷を蹴散らすことに成功したが……。


黒虎くろとらそのものには、ノーダメージのようだニャ」


 ツシマンの竜巻は本体である黒虎くろとらにも確実に届いたはず。

 だが黒虎くろとらにとっては、

 そよ風が通り過ぎたのと同義であったようで、

 これといったリアクションを起こすこともなかった。

 それどころか、先程から妙に落ち着いている。


黒虎くろとらは、一体何が目的で……っ!?

 危ないニャ! 皆、散開するニャ!」


 ニャラード団長は、そう言って、その場を転げるように離脱する。

 同様に他の者もステップを刻んで距離を取った。

 そして次の瞬間に耳朶を打つ衝撃音が走った。


 先ほどまでニャラード団長が立っていた場所に落雷が降り注いだ。

 地面には三メーレル(約三メートル)以上のクレーターができており、

 その威力を物語っている。

 当たったら、間違いなく無事では済まないだろう。


「ニャラード団長、大丈夫ですか!?」


「ヨハン殿、なんとか無事ですニャ」


 お互いの無事を確認する二人。

 尚、他の者も無事に逃げ延びていた。


「さて、ではどう手を打ってみたものか」


「ニャラード団長、あの黒虎くろとら、相当固いでニャンす!

 おいどんの風魔法を無効化している時点で只者ではないでニャンす!」


 ツシマンの魔法力は贔屓目に見ても強力だ。

 あれでダメージを与えられないというのは、

 ニャラード団長にとって大きなの想定外だった。

 すると中衛に居たエンドラが口を挟んできた。


黒虎くろとらのあの体毛は、

 魔力をかき消す特性を持ってそうね。

 そうとすれば生半可な魔法じゃ攻撃が通用しないわ」


「成る程、ならばもっと強い魔法を使えば良いのだニャ」


「まあ試しておいて損はないわね」と、エンドラ。


「雷は、風の上位互換だ。 ツシマンクラスでも通用しニャいとなると、

 使い手のレベルも上げねばならん。

 そしてその大役に適しているのは、この私ニャ!

 ここは別属性で様子を見るニャ! ――フレイム・ストリーム!!」


 ニャラード団長が咄嗟にそう短縮詠唱すると、

 黒虎くろとらに目掛けて炎の柱がうねりを生じて襲い掛かった。

 激しく燃え盛る炎の柱が竜巻のように旋回しながら、黒虎くろとらに迫った。


 だが黒虎くろとらは避けようとせず、不動の構えを取った。

 燃え盛る炎の柱は黒虎くろとらへ命中し、

 その体を燃え上がらせる……かと思いきや、

 五秒も経たずに炎は消え失せた。


 魔力で形成された炎の柱も体毛を

 焼き切る事は出来ず、すぐに霧散してしまう有り様。


「……想像以上に耐魔力が高いニャ」


「魔法が効かないなら、剣で攻めてみては?」


「ヨハン殿、それは後でいつでも試せる。

 まずはあの黒虎くろとらの出方を伺おう」


 すると前方でドッシリと構える黒虎くろとらが――


われはこの程度では動じぬぞ。

 貴様等如きが束になるろうと、物の数ではないわ!』


「あ、アイツ……喋ったでニャンす!」


「嗚呼、幻聴の類いではニャいな」と、ニャラード団長。


「高い知能も有してる、か。

 これは骨が折れそうね」と、エンドラ。


「ボク達も舐められたものだね。

 これは少々お仕置きが必要のようだね」

 

 と、剣聖ヨハン。

 すると黒虎くろとらが長い尾で地面を叩く。


 弾けた玉砂利が四方に飛び散り、

 玉砂利のぶつかった丸い耳が反射的に動くのが見えた。

 そのまま黒虎くろとらは、

 ゆっくりと顔を上げて牙を剥き出しにしながら唸る。

 そしてその双眸でニャラード団長を睨んで――


『喰らえっ! 雷撃らいげきっ!』


「させないニャ! アース・ウォールッ!」


 ニャラード団長が呪文をそう唱えると、

 近くの地面が大きく隆起しニャラード団長達を守る壁となった。

 一時的にだが、黒虎くろとらの雷を防ぐことに成功する。


「一時的には雷を防げたが、

 このままだと、また直ぐに帯電されてしまう。

 ニャラード団長、何か良い手はありませんか?」


「ヨハン殿、なくもないですよ。

 私の奥の手の「吸魔きゅうま」という吸収能力があります。

 但しそう何度も使う事は出来ませんが……」


「それで構いません! アシストの方を頼みます」


「了解ですニャ!」


『小賢しいわ! ――雷撃らいげきっ!』


 再度、黒虎くろとらが雷撃を放とうとしたが、

 そこでニャラード団長が動いた。


「――『吸魔きゅうま


 ニャラード団長が左手を向けた瞬間、

 黒虎くろとらの放ったかみなりが消え失せた。

 ニャラード団長は魔力を吸収したのだ。

 これは魔王レクサーが使う能力アビリティと同じであった。

 そしてその吸収した魔力をそのまま全身に纏うニャラード団長。


『ぐ、グルゥ、ガァァァッ!!!』


 自身の雷が消失した事に驚いたのか、黒虎くろとらはこちらに向かって一気に牙をむいてきた。 だが剣聖ヨハンは焦る事なく――


「良し、好機到来。 これを機に一気に武器スキルで攻めるぞっ!」


 そして剣聖ヨハン達による反撃が始まった。



次回の更新は2026年7月5日(日)の予定です。


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