第七百九十七話 龍殺し(前編)
---三人称視点---
「メイリン、あるいは大賢者殿。
白龍のブレスに対してレジスト。
あるいは氷結魔法などで防げるか?」
「レジストは厳しそう。
だから氷結魔法で対抗するわ」
「同じく水属性魔法か、氷結魔法で応対しましょう」
「ブレスを上手く防げたら、
魔王陛下、オレ、ミネルバ、レフ団長、カチュアさんの五人で攻めよう!」
「承知した」「ええ」「嗚呼」「良いでしょう」
「じゃあ魔力を解放するわよ!」
「同じくっ!」
メイリンとシーネンレムスがに魔力を集め始めた。
それを確認し、ラサミス達は白龍へ向かって走り出す。
「よし、メイリン達がブレスを相殺したのち、攻撃を仕掛ける!」
ラサミスの言葉に周囲の仲間も無言で頷く。
「行くわよっ! ハイパー・ブリザードッ!」
「闇の覇者、暗黒神ドルガネスよ! 我が名はシーネンレムス!
我が身を暗黒神に捧ぐ! 偉大なる暗黒神ドルガネスよ。
我に力を与えたまえ! ――アクア・ストリーム』っ!」
「舐めるなァッ! 焼き殺してくれるわぁっ!!」
白龍から火炎ブレスが放たれ、
ラサミス達、めがけて一直線に迫りくる。
対抗するように、大冷気と水の渦が白龍へと向かう。
火炎ブレスト大冷気と水の渦。
二つの力の奔流が激突する。
耳を劈く轟音と共に、周囲の建物が軋みを上げる。
衝撃波が絶え間なく走り、空気が激しく振動する。
「良し、なんとかブレスを防げているわ。
ラサミス! 今のうちに攻撃しなさい!」
「今だ、白龍のそばまで走れ!
メイリン達が抑えている間に叩く!」
ラサミス達五人は、激しい揺れの中、白龍に向かって走り出す。
暫くして、メイリン達と白龍の攻撃の均衡は破られ、爆風と眩い閃光が広がる。
「くっ、皆、吹き飛ばされるなよっ!」
爆風で吹き飛ばぬよう、ラサミスは斬魔刀を地面に突き刺し屈む。
だがその構えは悪手だった。爆発が収まり、
白龍の全貌が見えるようになったとき、
こちらに向けて大きな手を振り下ろそうとする。
「危ないっ! ――ヘキサ・スキュアァッー!!」
咄嗟にレフ団長が一人前へと飛び出し、
振り下ろされる白龍の右腕に攻撃を加える。
レフ団長はスキル名を叫びながら、帝王級の槍術スキルを放つ。
黄金の斧槍の穂先で白龍の右腕を六度突き刺した。
この決死の一撃により、白龍に少しの隙が生まれた。
「今だ、押し込むぞ! ――無明三段!」
「余も続こう! ――デモニック・ブレードッ!!」
ラサミスと魔王の刃が白龍の腹部へと届く。
二人の渾身の攻撃を受け、白龍は低く唸りながらも態勢を崩した。
「私も続くわ! ――ペンタ・トゥレラッ!」
「アタシもやるわよ! ――トリプル・スラストッ!!」
更にミネルバとカチュアも後に続いた。
続け様に強烈なスキル攻撃を繰り出して、
徐々に白龍の鱗を、そして皮膚を抉っていく。
やがて、白龍の腹部から鮮血が噴き出し始めた。
肉を抉られた白龍は、痛みに藻掻いている。
しかし、倒れる気配は感じられない。
「……小さき者共めっ! 切り裂いてくれるわぁっ!」
腹部から大量の血を吹き出しながらも、
左腕を振り上げる白龍の姿があった。
「まずいっ、散開しろ! ――疾走!」
鈍く大きな音とともに巨大な砂埃が巻き上がる。
白龍の左腕が地面に炸裂して、
玉砂利が周囲に飛び散り、
その衝撃でミネルバとカチュアが後方に吹っ飛んだ。
「ミネルバ! カチュアさん!」
「マズい、次に来るのはブレス攻撃。
あるいは尻尾攻撃だっ!」
「二人が逃げる間はないだろう。
ならばこちらから攻めるまでさっ!
――秘技・大車輪」
レフ団長はそう叫ぶなり、
両手で黄金の斧槍の柄を掴んで、
風車を回すように斧槍を旋回させた。
この大車輪はレフ団長の独創的技だ。。
一回転、二回転、更に斧槍を回す。
そして高速回転した黄金の斧槍を白龍目掛けて投擲する。
「げ、げはぁぁぁっ!?」
投擲された斧槍が白龍の胸部を抉った。
一度、二度と回転した斧槍の斧刃が白龍の白い皮膚を切り裂く。
「――リバースッ!」
間髪入れず、レフ団長が念動力を発動する。
すると白龍の胸部に刺さった斧槍が
レフ団長の手元に滾り寄せられた。
そしてレフ団長は右手で斧槍をキャッチする。
「白龍と言えど、
近距離で我々の高レベルのスキル技を食らえば、
確実にダメージを与えられるようだ。
だから皆、このまま下がらず此奴を追い込んでいこう。
但し白龍の攻撃には細心の注意を払おう。
負傷した際には……ラサミスくん、君に回復魔法をお願いしたい」
「了解しました、レフ団長」
相手にダメージを与えつつ、
自身の被害は確実に減らす。
それは一見、簡単のように見えて実は難しい。
だがこの最前線に居るこの五人ならそれも可能であった。
彼等はウェルガリアでも名うての勇者達。
例え相手が白龍であろうとも、
いつものように平常心で確実に相手を追い詰めて、
自分達の役割である龍殺しを全うしようとしていた。
次回の更新は2026年6月28日(日)の予定です。
ブックマーク、感想や評価はとても励みになるので、
お気に召したらポチっとお願いします。




