第七百九十四話 白龍(前編)
第百十八章 白龍
---三人称視点---
正面入り口を越えると、
その先は広い空間があった。
苔を付けた岩に地面を埋め尽くす玉砂利。
そして沢山の木が等間隔で並んでいた。
また中庭といえる程の広さがあり、
ここでならば大人数でのバトルも可能であった。
いかにもという雰囲気であったが、
今のところ敵らしい姿はなかった。
「敵の姿は今のところないが、
前方から物凄い魔力の波動を感じるな」
そう言いながら、魔王レクサーやその一行は、
懸命に目をこらして前方を見据えた。
「全員、今まで通り陣形を組んでおこう。
それと強化魔法や強化能力もかけておこう」
「そうだな、余もカーマインの提案に賛成だ」
その後、支援職などが味方に一通りの強化魔法などをかけた。
「陣形も的確に組んでおこうぜ。
前衛は魔王陛下、オレ、ミネルバ、レフ団長、カチュアさん。
中衛に親衛隊長殿、大賢者殿、ジュリー、ジウバルト、バルデロン。
そして後衛はエリス、メイリン、マリベーレ、更に荷物持ち三人。
この合計16人で白龍に挑もう」
「うむ、妥当な布陣だな。 余は賛成だ」
「……私も賛成です」
魔王と大賢者がそう言うと、
周囲の者達も反論する事無く、素直に従った。
「しかし白龍というからには、
光属性、それと火炎属性を所有している可能性が高いな」
「そうよね、名前通りなら白い大きな龍でしょうし、
ブレス攻撃の類いも持ってるでしょうね。
その場合、定石通りなら火炎ブレスの可能性が高いわ」
と、メイリン。
「仮にもこの迷宮エリアを護る龍だ。
弱いという事はまずないだろう。
白龍がどれくらいの大きさで、
こちらの戦い方も変わるだろう」
と、レフ団長。
「ならば余とカーマインが接近戦を挑み、
白龍を引きつけようではないか」
「え? オレがやるの?」
「何だ、嫌なのか?」
「いや嫌というわけではないが……。
どんな近距離スキルを持ってるかも分らんじゃん?」
「それを暴く為にも前線には、
攻撃力もあり防御力も高い攻撃役を置く必要がある。
それは余か、貴公が適役であろう」
「まあ……そうだな、分ったよ」
「カーマイン、頼りにしてるぞ」
「嗚呼……」
そしてラサミス達は、ゆっくりと庭園内を突き進んだ。
すると前方から突き刺すような闘気。
また非常に膨大な魔力が周囲に漂い始めた。
「……全員、前上方を見ろ!」
レクサーがそう言ったので、
ラサミス達も言われるがまま、前上方を見据えた。
すると空に龍が舞っていた。
白い鱗に身を包まれた巨大な龍が、泳ぐように空を飛んでいる。
その姿は一言で言うなら、巨大な白い龍であった。
両手には鋭い漆黒の鍵爪。
頭の両側からは、二本の太い黒角がやや反り気味に立ち、緋色の鋭い両眼。
真っ白な硬皮と鱗。 背中に生えた大きな白い両翼。
そして太くて長い尻尾。
「ギエエエッ!!!」
白龍が轟くような雄叫びを上げた。
空を舞う白龍はその鋭い双眸を細め、その口から鋭い牙が見えていた。
全長はかなり大きい。
最低でも十メーレル(約十メートル)はありそうだ。
この白い龍が白龍である事は間違いなかった。
「……何という膨大な魔力を放っているのだ。
それでいて神々しい、只の龍ではないな」
魔王レクサーがそう一言で上空の白龍を表現する。
「嗚呼、これは少々厳しそうだな」
ラサミスはそう言って、乾いた唇を舌で舐めた。
「まさかアレほど大きいとは予想外だ。
あの大きさだと地上に降り立った時に、
こちらが白兵戦を挑むのは、命懸けになるだろう」
「レフ団長、ならばどうすべきかしら?
ここは上空に目掛けて、魔法攻撃を仕掛けるべきよ」
「カチュア、ならば俺の電撃魔法が有効だろう。
相手が白龍とはいえ、
電撃魔法を無効化出来るとは思えんからな」
「レフ団長、貴公が電撃魔法を使った後に、
私が魔王級以上の水属性攻撃魔法を放ちましょう」
「大賢者殿、成る程、感電を起こすのですね!
確かに白龍といえど、
魔力反応や自然現象は無視できない筈」
「レフ団長、シーネンレムス。
余も面白い策だと思うぞ。
とりあえず相手の出方を伺いたい。
まずはこちらから仕掛けてみるべきであろう」
「ええ」「御意」
「――では行きます! 我は汝、汝は我。 我が名はレフ。
竜神ガルガチェアよ、我に力を与えたまえ! 『トニトゥルス』!!
レフ団長が呪文を唱えて、彼の頭上で雷鳴が響き渡った。
そして次の瞬間、レフ団長の頭上に雷光が発生して、
轟音と閃光が生じて、白龍目掛けて解き放たれた。
「――舐めるなよ、小さき者共っ!!!」
「なっ……アイツ、喋ったわよ!?」
「ほ、本当ですわっ!?」
思わず驚きの声を上げるミネルバとエリス。
その最中にもレフ団長が放った雷光が白龍に迫るが――
「ハアァァァ……アアアァッ!!!」
白龍が吠えると、白龍の周囲に霧のような魔力の壁が生じた。
その直後にレフ団長の雷光が着弾。
それと同時に爆音が生じるが、
レフ団長の雷光を全て無効化した訳ではなく、
白龍の周囲にバチバチと電撃が散っていた。
「良し、完全に防ぎきった訳ではなさそうだ。
大賢者殿、追撃をお願いしますっ!」
「了解致しましたっ!」
シーネンレムスはそう答えると、
両手に持った白樫の杖を頭上に掲げた。
「大賢者の力を見せてみましょう!」
ここで長らくベールに包まれていたシーネンレムスの本領が発揮されようとしていた。
一千年生きる大賢者の真の力。
その姿を見据えながら、ラサミス達も固唾を呑んでいた。
次回の更新は2026年6月21日(日)の予定です。
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