第七百九十三話 迷宮探索(後編)
---三人称視点---
「ハアァァァッ……アアアァッ!」
魔王レクサーは雄叫びを上げながら、
魔王剣アルガンレカムに闇色の闘気を宿らした。
これはある種の付与魔法に近い現象だ。
「喰らえっ! ――ブラッディ・ソーンッ!!」
ここでレクサーは得意の剣技を繰り出した。
横一線に繰り出された薙ぎ払いが巨大な機械兵の腹部を捉えた。
金属音が響くと同時に、巨大な機械兵の腹部に確かな傷跡を刻み込んだ。
「――ギ、ギギギ……ッ!」
巨大な機械兵は低く唸ると、
視線のフォーカスをジウバルトからレクサーへと移した。
AIシステムによって、ターゲットの変更は成された。
この辺は通常の機械兵と同じようだ。
「ギォラァァァッ!!」
雄叫びと同時に、
レーザー大剣が横薙ぎに振られる。
まともに喰らえば、大怪我は免れないだろう。
だがレクサーは滑るようなステップでそれを回避。
「――マタドール・ファングッ!!」
相手の隙を突く返し技で魔王剣で巨大な機械兵の胸部を突く。
それによって、巨大な機械兵も慌てて後ずさりした。
「流石は魔王様だ、本当に強いっ!」
ラサミスも思わず驚きの声を上げた。
彼もレクサーとは一騎打ちした仲だが、
流れるようなステップワーク、回避からの反撃の速さ。
そして魔王剣から繰り出される剣技の数々。
そのどれを取っても、超一流レベルに達していた。
だがそれでも巨大な機械兵相手に一人で戦うのは、
レクサーといえど多少の不安があった。
「魔王陛下、お一人で戦わないでください。
我々も助太刀します!」
「そうッスよ、スタンドプレーは良くないっスよ」
レフ団長とカチュアがそう言って加勢した。
尤もカチュアに関しては、
魔王に対して少々不遜な物言いであったが、
当人であるレクサーはさして気にしてなかった。
「ここは自分が電撃魔法で攻めます!
メイリンくんっ!」
「ハイッス、レフ団長、何スか?」
「俺が電撃魔法を使ったら、
君は氷結魔法、いや水属性魔法で攻めろ。
そしたら魔力反応「感電」が発生する!」
「ああっ! 確かに! 機械相手には有効な戦法っスね」
「そういう事だ! では行くぞ!
ハアァァァッ! サンダーボルト!!」
レフがここで初級電撃魔法「サンダーボルト」を連発した。
初級といえど連発された電撃魔法を全て躱す事は不可能に近く、
巨大な機械兵は二、三発ほど直撃を受けて、
「ウオオオォッ」という呻き声を上げた。
「ここで行くッス! ――アクア・スプラッシュッ!」
事前の打ち合わせ通り、
メイリンがここで中級水属性魔法を放射した。
メイリンの杖の先端から、水が迸り、
電流を浴びていた巨大な機械兵に命中。
「ヴァ、ヴァルギアァァッ!!!」
電流を浴びた状態での水属性攻撃。
それによって魔力反応「感電」が発生。
そして巨大な機械兵は、地獄のような悲鳴を上げた。
だが敵のピンチは自分の好機。
レフ団長はここで一切の躊躇いを覚える事なく、
止めを刺すべく、次なる一手を打った。
「――我は汝、汝は我。 我が名はレフ。
竜神ガルガチェアよ、我に力を与えたまえ! ――トニトゥルス!」
レフ団長がそう呪文を紡ぐなり、雷鳴が響き渡った。
そして次の瞬間、上空に雷光が発生して、
けたたましい轟音が沸き起こり、閃光が巨大な機械兵に命中した。
「ヴ、ヴ、ヴァ、ヴァルギアァァッ……アアアァ!!!」
感電状態で更に強力な電撃を浴びた事によって、
巨大な機械兵の機械回路は完全にショート状態となり、
全身から白い煙を吐き出して、
その機械の身体が燃えるように赤熱した。
「ヴァ、ヴァルギァァァッ……」
迸る咆哮、それはまさに最後の断末魔であった。
そして全身を何度も痙攣させながら、床に倒れ込んだ。
それからしばらくするとそのまま動かなくなった。
その姿を見てレフ団長とメイリンが「良し」と右手を握りしめた。
「成る程、機械相手には有効な戦術だな」
と、感心気味にそう言う魔王レクサー。
「……想像以上に上手く行きました」
「あ、レフ団長。 名案が浮かんだッス!」
「メイリンくん、何だい?」
「この先の扉に多分ボス、白龍が居る可能性が高いですよね?
そのバトル最中に天使兵や機械兵が加勢する可能性もあるので、
ジウくんが隠形で天使兵や機械兵を釣って、
あたしとレフ団長で標的を感電させまくる、というのはそうでしょうか?」
「成る程、悪くない案だな。
魔王陛下、この策を実行して宜しいでしょうか?」
「嗚呼、構わんぞ。 敵を減らしておいて損はないからな。
その戦法ならさして労力をかけず、敵を減らせそうだ」
「良し、ならば早速実行するぞ。
ジウバルトくんとメイリンくん、準備は良いか!」
「はい」「ハイッス!」
その後、隠形をかけたジウバルトが天使兵や機械兵を
良い感じに釣りだして、レフ団長の電撃魔法。
メイリンの水属性魔法で魔力反応「感電」を引き起こして、
三十分くらいの間に二十体近くの天使兵と機械兵を感電死させた。
「うむ、充分の戦果と言えるだろう。
だがあまり敵を減らしすぎても、
敵に怪しまれる可能性が高い。
だからこれぐらいにしておこう」
魔王レクサーの言葉に周囲の者達も無言で頷く。
そして再び陣形を組んで、本殿へ続く正面入り口の前に立った。
「では行くぞ」
魔王はそう言って、正面入り口の中へ一歩踏み出した。
次回の更新は2026年6月18日(木)の予定です。
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