第七百九十二話 迷宮探索(前編)
---三人称視点---
二名の犠牲者こそ出たものも、
ラサミス達は、被害を最小限に抑えて仲間との合流を果たした。
これで人員は11人から16人に増えたが、
その内の三人は荷物持ちなので、
実質的な戦力は13人であった。
だがこの13人は、天界遠征軍の中でも選りすぐりの勇者達。
この13人が居れば、大抵の敵には勝てるだろう。
しかしまだこの迷宮城の全てを理解した訳ではないので、
ラサミスとレクサーは今まで通り、敵の戦闘を避ける。
と周囲の仲間に名言した。
「それが良いでしょうな。
この13人で南部エリアに陣取る「白龍」と戦う事になるでしょうから、
無駄な戦闘は極力回避すべきでしょう」
と、レフ団長も賛成の意を示した。
「この迷宮城のギミックもまだ完全に把握してないもんね。
あの本殿にもどんな敵が居るか、分らないしね」
「ミネルバの言う通りだ。
オレ達は最低でも「白龍」とこのエリアを護る
力天使メルキセデクと戦う必要がある。
恐らく白龍もメルキセデクも桁違いの強さだろう。
だからその前に魔力を無駄に使う事は避けたい」
「うむ、余もカーマインと同じ考えだ。
ここから先全く戦闘しない、という訳にはいかぬだろうが、
無駄な血を流すのは控える事にしよう」
「嗚呼、じゃあジウバルトやバルデロン。
お前等二人が先頭に立って、周囲の様子を探ってくれ」
「嗚呼」「はい」
こうしてラサミス達は、
16人で的確な陣形を組んで、迷宮探索を再開した。
ジウバルトとバルデロンは、索敵スキルを使いながら、
柱の陰から慎重に前方を覗いた。
先程までレフ団長達が居た場所には敵の姿はなかった。
そしてその十メーレル(約十メートル)くらい先に、
「迷宮城」の本殿が屹立していた。
ラサミスはそこで既視感を感じた。
その見た目は昔、何かの本で読んだ東洋の島国の城に似ていた。
そう確か「ジャパング」という東洋の島国の建築様式だ。
屋根は黒々とした瓦葺き。
壁は黒塗り、柱と格子窓は朱塗り。
そして左方向の大路の真ん中と接する辺りに正面入り口が見える。
その正面入り口を護るように、
全長三メーレル(約三メーレル)はありそうな巨大な機械兵の姿が見えた。
見た感じ前エリアの「楽園の神殿」で、
交戦したあの巨大な機械兵と似たような雰囲気を感じた。
その大きな機械兵――巨大な戦闘バイオロイドの両手に、
大型のレーザー大剣が握られていた。
全長150セレチ(約150センチ)、重さ10キール(約10キロ)で、
見るからに威力がありそうで、ジウバルト達も表情を強張らせた。
「見た感じ前エリアの「楽園の神殿」で戦った奴と似ている気がする。
多分強さも同じくらいだろう」
「ええ、私もジウバルト殿と同じ意見です」
と、バルデロン。
「でも勝てなくはない……相手だよな?」
「ラサミス……団長、アレとやり合うつもりなのか?」
「見たところ、あそこ以外に出入り口はなさそうだしな。
それにここに居る13人で一度戦っておきたい。
どうせ「白龍」やメルキセデクとは戦うんだしさ」
「しかし魔王陛下は、無駄な戦闘は避けるべきと仰ってる」
そう言ってジウバルトが魔王レクサーに視線を向ける。
するとレクサーは僅かに表情を緩めた。
「本殿の出入り口を確保出来るのであれば、
決して無駄な戦いではないだろう。
ここは多少リスクをおかしてでも戦うべきだ」
「……良し、決まりだな。
じゃあ陣形を組んで奴と戦うぜ。
前衛はオレと魔王陛下、ミネルバ、レフ団長にカチュアさん。
中衛は大賢者殿に親衛隊長、ジュリー。
ジウバルト、バルデロンで行こう。
そして後衛はエリス、メイリン、マリベーレ。
荷物持ちの三人も基本後衛待機。
状況に応じて武器やアイテムを必要な仲間に手渡して欲しい」
ラサミスの指示は的確であったので、
誰も異論は挟まず、言われたように陣形を組んだ。
そしてそれぞれが支援魔法や強化能力をかけて、
ラサミスとレクサーが先陣を切って、
門番である巨大な機械兵と対峙した。
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「グォルアアアアアアァッ!!」
「くっ……コイツ! かなり早いっ!」
戦いが始まって既に五分以上が経ったが、
巨大な機械兵の動きは、とても俊敏で無駄がない。
対峙していたジウバルトも暗黒物質製の大鎌で応戦するが、
体格差による差は如実に表れていた。
「くっ……パワーの差が激しい!」
よろめくジウバルトの頭上に、
巨大なレーザー大剣が高々と振りかざされる。
まともに喰らえば、ジウバルトも一撃死であったろう。
両目部分のカメラ・アイを光らせて、
巨大な機械兵は眼前の半身半魔の少年を一刀両断すべく、
斬り捨てようとしたが――
「そうはさせぬわっ!」
魔王レクサーが間に割って入り、
両手に持った魔王剣アルガンレカムで、
レーザー大剣による斬撃を受け止めた。
ギュワアアアンッ!
という耳障りな衝突音が周囲に響く中、
ジウバルトは全力でバックダッシュした。
「魔王レクサー! 独りで戦うのは危険だ!」
「カーマイン! 心配無用だ。
この程度の敵など余独りで充分だ」
「魔王陛下、油断は禁物ですぞ!」
「シーネンレムス、差し出口を叩くな。
余は余の臣下を護るのも魔王の責務の一つ。
この程度の機械仕掛けの人形如き、恐るるに足らず!」
そう言って再び魔王剣を構えるレクサー。
その姿は非常に雄々(おお)しく、時に優雅であった。
「カーマイン達は余のフォローを頼む。
大丈夫だ、余独りでコイツを破壊してみせるわ」
いつになく好戦的な魔王の姿に、
ラサミス達もやや気圧されながらも、
彼の言葉に忠実に従い、
彼の周辺で武器を片手に、いつでもフォロー出来る体勢を取った。
次回の更新は2026年6月16日(火)の予定です。
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