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【天界編開始!】黄昏のウェルガリア【累計100万PV突破】  作者: 如月文人
第三部【天界】編

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第七百九十一話 迷宮城(後編)



---三人称視点---



「では行きますよ! ――魔力探査マナ・スキャン開始!」


 シーネンレムスは両眼を瞑り、眉間に力を籠めながら、魔力探査マナ・スキャンを開始した。

 ラサミス達は息を潜めて、三十秒ほど待った。


「ん……ん……んっ……。 この南部エリア全体に多数の魔力反応がありますな。

 数は……ちょっと分からないけど、百以上はありそうですね。

 それ以外にも強い反応を四つほど北西のエリアから感じます、

 これが味方の魔力反応と思われます」


「そうか、敵の数が百近いとなると色々と厄介だな。

 とりあえずレフ団長達との合流を最優先としよう。

 だからこれから先は戦闘は最低限にとどめるぞ」


「魔王陛下、オレもその考えに賛成だ」


「うむ、カーマイン。 そこに居るのは確かジウバルトであったな」


「は、はい! 魔王陛下、そうでございます!」


「ここから先の索敵や罠解除は貴公に任せたいと思う」


「は、はい! 謹んでお受けします」


「うむ、期待しているぞ」


「レフ団長達とバルデロンが一緒と思うから、

 向こうも索敵や罠解除は問題ないだろう。

 とりあえず皆、慎重に慎重を重ねて先を進もう」


 ラサミスの言葉に従い、レクサー一行は慎重に迷宮上を進む。

 南門から本殿の正面の入り口まで続く大路は、長さ約三百メーレル(約三百メートル)。


 その左右に立ち並ぶ藍色の円柱は、約八メーレルごとに一本。

 円柱の直径が二メーレル程あるので、

 柱と柱の間隔は、およそ六メーレルである。


 大路を巡回している天使兵や機械兵は、

 ラサミス達が柱の陰で隠れているのに気付いてないようだが、

 移動中の姿を発見されたら、

 その瞬間に連中が襲って来るのは間違いないだろう。


 故にラサミス達が迷宮城の本殿に辿り着くには、

 凡そ三十五本の円柱の影から影へと、

 天使兵達の反応を避けて渡って行く必要がある。


「少々手間がかかるが、

 ここは安全策で戦闘は回避して行くぞ。

 兎に角、移動の際には細心の注意を払え」


 レクサーの策は概ね正しかった。

 無理をすれば、ここに居る面子ならば、

 周囲の天使兵や機械兵を複数相手しても勝てるだろう。


 だがこのエリアには、まだ未知の敵が居る可能性がある。

 まあ未知の敵でも一体や二体なら、ラサミス達も勝てるだろう。


 だがそれらの敵がリンクにリンクを重ねて、

 数十体が襲いかかって来れば、

 ラサミス達も無傷ではいられないだろう。


 だからこの場は魔王の言葉通り安全策を選んだ。

 周囲の敵を警戒して、

 円柱の影から影へと延々と移動する。


 左に五メーレルほど離れた大路を、

 天使兵や機械兵が床を鳴らして、南下して行く。


 このような行動を何度も繰り返して、

 気がつけば、半分ぐらいの距離まで進んでいた。

 しかしまだ半分に過ぎない。


 ここで一度でも敵と遭遇すれば、全て水の泡になる。

 敵とエンカウントすれば、自分達だけでなく、

 この南部エリアに居るだろうレフ団長達にも危険を及ばす可能性がある。


 恐らくレフ団長達も固まって行動しているだろうが、

 彼等が六人全員無事とは限らない。

 現にこのパーティも合流前に一人が死んでいる。


 もし一人でも欠けていれば、

 一人は荷物持ち(サポーター)なので、

 レフ団長達の戦力は実質四人となる。


 レフ団長やカチュア、ミネルバは百戦錬磨の猛者だが、

 この状況ならば、油断していれば彼等と言えど危ない。

 そしてレフ団長達ならば、その事実に直ぐに気付いて、

 彼等もラサミス達と合流を目論むであろうが、

 迂闊には他のエリアへ移動出来ない。


 となると安全地帯でずっと待機している。

 というのは充分にあり得る事態だ。


 ならば数に余裕があるラサミス達が動いて、

 彼等と無事に合流を果たす。

 というのはこの場における最善策かもしれない。


 それから三十分後。

 遂に最後の円柱に辿り着いたラサミス達は、

 「ふう」と長く大きなため息をついた。

 周囲の天使兵や機械兵もここまではやって来ないようだ。


「……皆、お疲れさん」


「嗚呼、無事にここまで来れたな」


 と、魔王レクサー。

 そしてラサミス達は、柱の陰から前方を覗いた。

 その瞬間、ラサミス達の表情が僅かに和らいだ。


 そう、そこには見慣れた顔があった。

 レフ団長を先頭にカチュアとミネルバとバルデロン。

 そして荷物持ち(サポーター)の女性竜人のタチアナの姿も見えた。


「これはついてるな」


「カーマイン、ここまで辛抱した甲斐があるな」


「まあね、兎に角、彼等と合流しよう」


「嗚呼」


 そしてラサミス達は、レフ団長に近づいた。

 こちらの姿を確認するまでは、

 レフ団長も険しい表情をしていたが、

 ラサミス達と分ると、彼等も安堵の表情を浮かべた。


「ふう、棄てる神が居れば、拾う神も有り。

 というやつだな、どうやらこれで助かったようだ」


「レフ団長、一人少ないようですが……」


「ラサミスくん、残念だがもう一人の魔族兵。

 確かケーヒルは、合流前に敵に見つかって……」


「そうですか、でも他の皆は無事で良かったです」


「うむ、レフ団長、ご苦労であった」


「魔王陛下もご無事でしたか」


「嗚呼、我々は美味く合流出来てな。

 色々とついていたようだ」


「魔王陛下、合流して気が緩む気持ちも分りますが、

 とりあえずレフ団長達と一緒にもう一度円柱に隠れましょう」


「そうだな、シーネンレムス。 そうしよう」


 こうしてラサミス達は、

 レフ団長達とも合流を果たして、

 人数を11人から16人と増やした。


 だがまだ油断出来る状況ではないので、

 各自、周囲を警戒しながら円柱の影へと戻った。


次回の更新は2026年6月14日(日)の予定です。


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