第七百八十七話 新エリアへ(中編)
---三人称視点---
意を決して転移ゲートに入るラサミス達。
すると予想以上に早く転移されて、
「楽園エリア」から新エリアにやって来た。
転移ゲートの転移先は少し高台になっており、
ラサミスはやや周囲を見下ろすような視点になっていた。
「ここが新エリアか……」
頭上にはまん丸い月が見える。
黄緑色の奇妙な光に満たされた夜空。
黒いタイルの敷き詰められた地面。
そして周囲に漂う濃密な霧。
「ここは夜をメインとした世界なのか?」
先の楽園エリアは基本的にずっと日が照っており、
常に明るい世界であったのに対して、
この新エリアは夜をモチーフにしているような印象を受けた。
などとラサミスが思っていると、
転移ゲートからエリス、メイリン、ミネルバが現れた。
「あ、ラサミス! ちゃんと居たのね」
「おお、エリスも来たか」
「あたしも居るわよ!
というかこの新エリアなんか暗いわね」
「メイリン、そうなんだよ。
このエリアは夜が主体のエリアっぽいぞ」
「……どうやらそのようね」
「ミネルバ、全員が揃うまで時間がかかりそうだから、
待ち時間の間にオレ達だけで軽い探索をしておこうぜ」
「悪くないわね、でもとりあえずウチの連合の全員が
揃うまでは待つ事にしましょう」
「それもそうだな」
とりあえずラサミス達は、仲間が出揃うのを待った。
程なくして、ジウバルト、ジュリー、マリベーレ。
バルデロンが無事に転移を終えて姿を現した。
一人あたりの転移時間が三十秒から一分とすると、
230人全員が転移するにも数時間はかかりそうだ。
その事を後から来た魔王レクサー一向に伝えると――
「そうだな、全員が揃うまで時間もかかるであろうから、
その待ち時間の間に軽い探索をしておこうか。
但しこの近辺に限定するぞ。
この新エリアに隠された罠がある可能性もあるからな」
「流石、魔王陛下! 話が分るぜ~」
こうしてラサミス達は、他の部隊と協力して、
この新エリアの探索にあたる事となった。
ラサミス達は高台から周囲を見渡した。
その視線の先の五百メーレル(約五百メートル)くらい先に、
魔物らしき動く物体の姿が見えた。
「アレは地上で言うところの、
ゴブリンやガルム、ガーゴイル、トロルに似てるわね。
というかまんまそれに見えるわね」
双眼鏡をのぞき込みながら、そう言うミネルバ。
「ミネルバ、オレにも双眼鏡を貸してくれ」
「ええ、いいわよ」
そしてラサミスも双眼鏡をのぞき込んだ。
ミネルバの言うように、
見知った魔物や魔獣の姿が視界に入る。
しかしここは天界だ。
地上と同じ魔物が居ても……おかしくないか。
現に楽園エリアでは、一角兎と遭遇した。
だからこの天界に魔物が居るのは、
特別珍しい事ではないのかもしれない。
「とりあえずあの魔物を軽く狩ってみないか?
どの程度の強さか知っておいても悪くないかろう」
「アタシもジウくんと同じ意見ですね。
似た目はゴブリンで激強という事もあるかもだし」
と、ジュリー。
「自分もジュリー殿の考えに賛成です」
「あたしも! それにこのエリアで長距離狙撃も試してみたいし!」
と、バルデロンとマリベーレも相槌を打つ。
「そうだな、じゃあ魔王……陛下やヨハン団長やレフ団長にも声をかけてみよう。
念の為に安全な布陣を組んで、狩りをするとしよう」
こうしてラサミス達は、
レクサー一行やヨハン、レフ団長と共に魔物狩りをする事となった。
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「ガアアアアッ!!」
「これで約二十匹っ!」
ラサミスは斬魔刀を振り回して、眼前のゴブリンを斬り捨てた。
ここまでゴブリンやガルム、ガーゴイル、トロルらしき魔物と戦ったが、
強さや知能に関しても地上――ウェルガリアに居た個体と大差なかった。
「一応は魔物として徘徊しているが、
警備目的の為の魔物の配置ではなさそうだな」
と、魔王レクサー。
「ええ、まるで歯ごたえがありません」
余裕げな表情でそう言うレフ団長。
「となると魔物自体に気を配る必要はないですね。
後は水場の確保、あるいは食料の自給ですね」
ヨハンが尤もな指摘をする。
「食料に関しては、無理に確保する事もなかろう。
熾天使共の話によれば、
この天界では空腹にならないそうだからな。
まあ水場は欲しいが、前のエリアで大量の水を確保したし、
いざとなれば初級水魔法で水を生成すれば良かろう」
「私も魔王陛下の考えに賛同します。
見た感じあまり食料になるような物はなさそうだ。
まあ魔物を無理矢理食うという手段もあるが、
貴公等もゴブリンやガルムなどは食いたくないだろう」
大賢者の言葉にラサミス達も「確かに……」と控えめに頷いた。
「とりあえずこのまま安全に探索を続けよう。
だが気になるのは、あの遠方にある大きな城だな」
「やはり魔王陛下も気になられますか」
と、レフ団長。
「当然であろう、恐らくあの大きな城が今回の攻略対象だろうな」
レクサーが右手の人差し指で遠方を指した。
その先には、あまりにも巨大な建築物が天をつくように建っていた。
青光りする尖塔と、奇妙な彫像群によって構成されるその城は、
レクサーが指摘するように、
この「迷宮エリア」の攻略対象の巨大な迷宮であった。
その巨大な城の周囲を高い城壁と広い水路が囲んでいた。
入り口らしき場所は北部と南部エリアに城門があるくらいだ。
「如何にもって感じだな。
あそこに間違いなくこのエリアを護る大天使が居るだろうな」
「嗚呼、余もカーマインと同じ事を考えていた。
だがとりあえずは全員が揃うのを待つぞ。
その後にあの城をどう攻略するか考えよう」
「そうだな」
そしてラサミス達は、
探索を終えて、仲間が出揃うのを辛抱強く待った。
次回の更新は2026年6月4日(木)の予定です。
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