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【天界編開始!】黄昏のウェルガリア【累計100万PV突破】  作者: 如月文人
第三部【天界】編

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第七百八十三話 美酒佳肴(後編)



---三人称視点---



「うん、うまい!」


 焼けた肉を頬張りながらメイリンが呟いた。

 荷物持ち(サポーター)のバックパックからビール瓶を取り出して、

 初級の氷結魔法でキンキンに冷やしていたので、飲み応え充分だ。


「あ゛〜、うますぎる。」


 メイリンだけでなく、ミネルバも喜びの声を上げた。

 やはり肉にはビールが合う。

 沢山のスパイスを使ったこの肉を、熱々のまま口の中に放り込み、

 数度噛んだところでまたビールを飲む。


 しっかりと染み込んだスパイスと、それに負けない肉の旨み、

 それを冷えたビールで喉の奥へと流し込む。

 これで美味くないわけがない。


 気がつけば、メイリンやミネルバだけでなく、

 周囲の他の部隊の兵士も酒をあおっていた。


 ガツガツと肉を食べ、ビールを飲む。

 おまけに勝利の美酒。

 これに勝る兵士の癒やしはない。


 ラサミスやエリスはあえて飲酒を控えていたが、

 木皿に盛った肉や野菜は次々と食べる。


「なかなか良い食べっぷりだな」


「あ、魔王……陛下」


 気がつくと近くに魔王レクサーの姿があった。

 魔王の両隣には大賢者ワイズマンと親衛隊長が立っていた。


「……ここ、座っていいか?」


「あ、どうぞ、どうぞ」


「では失礼する」


 そう言って魔王はラサミスの右隣に座った。


「カーマイン、貴公は酒を飲まないのか?」


「嗚呼、酒はそんなに好きじゃねえんだ。

 それにこの天界で飲酒したら、

 どうなるか分からないからな」


「酒が抜けなければ、治療魔法をかければ良い。

 次はいつこのような場を設けれるかは分からんぞ」


「まあね、でも一応、部隊の隊長として、

 いつも万全な状態を保っておきたいのさ」


「貴公は真面目だな」


「そりゃどうも!」


 ラサミスもレクサーも微笑を浮かべる。

 悪くない雰囲気だ。

 するとレクサーが真剣な表情で言葉を紡いだ。


「今回の戦いも無事に勝利で終えられた。

 だが既に人員が230人まで減っている。

 この先、何度戦うか分からない状況だ。

 しかし余は勝利の為なら、

 ある程度の犠牲は仕方ないと思っている」


「まあアンタの立場ならそう言うだろうね」


「嗚呼、貴公等にも負担を強いるだろう。

 だがこれはウェルガリアの命運を掛けた戦い。

 だから余も余の部下も全力を尽くす。

 その上で貴公等の負担と犠牲を強いる事になるが、

 貴公としては、どう思う?」


「ん~」


 レクサーの問いに、ラサミスは暫し考え込んだ。

 彼としてもこの戦いに覚悟を決めて挑んでいる。

 最悪、死の覚悟も出来ている。


 だがその上でラサミスは生き残るつもりだ。

 ウェルガリアの未来は大事だ。

 

 でもそれと同じくらいエリスやラミレスは大事だ。

 勿論、連合ユニオンの仲間や周囲の仲間も大事だ。


 だから自分のやれる限りの事はする。

 その思いはこの天界遠征を決めた頃から同じであった。


「別にそれがオレ達の仕事だし、役割だからな。

 オレだけでなく、周囲の皆も覚悟を決めて、

 この天界遠征に参加しただろうしな。

 でもオレのやれる範囲では、

 自分だけでなく、周囲の味方も助けるよ。

 その上で大天使共もぶっ倒すさ」


「頼もしいな、貴公には期待してるよ。

 邪魔したな、余はもう行く事にする」


「うっす、お疲れ様です」


 そしてレクサーはこの場から去った。

 それと入れ替わるように、

 剣聖ヨハンとその一派がこちらにやって来た。


「良い感じにリラックスしてるね。

 ボク達もお邪魔していいかな?」


「ヨハン団長、勿論良いですよ!」


「はい、はい、はい、輪切りの焼いたジャガイモもあるわよ!」


 と、クロエが輪切りのジャガイモを乗せた大皿をキャンプ用の机の上に置いた。


「おー、それは楽しみッス!」


 ご機嫌に声を高めるメイリン。


「んじゃ早速頂くッス!」


 メイリンはフォークを刺し、しっかり焼けているかを確認。

 ジャガイモは、しっとりと焼き上がり、黄金のように黄色く輝いていた。


 一口食べてみると香ばしい香りが口の中に広がる。

 一口、二口と手は進み、すぐに食べ切ってしまう。


「美味すぎる!!!」


「確かにこれは美味しいわね」


「ああ、何個でも食えるな」


 メイリンだけでなく、

 ミネルバとジウバルトもジャガイモの輪切りを口の中で頬張る。


「皆、楽しんでいるようで何よりだ」


「あ、ヨハンさん。 お酒はどうですか?」


「メイリンくん、悪いが止めておくよ。

 ボクはあんまり酒が強くないからね」


「そうですか、残念ッス!」


「しかしラサミスくん、こうして皆で食事を摂ったりするのは、

 楽しいもんだね、これだけ見ていたら、まるでキャンプだ」


「そうッスね。 これはこれで楽しいですよ」


「嗚呼、この先どうなるか、分からないから、

 今は今で楽しむべきだろうね」


「ええ、戦う時に戦う。

 休める時に休む、それが冒険者の鉄則ですからね。

 だから今は勝利の美酒に酔いしれましょう」


「そうだね、ボクは飲まないけど、

 皆は気が済むまで飲むが良いさ」


 こうして天界遠征軍は、最初のエリア――楽園エリアの攻略に成功。

 だが252人の内の22人がこのエリアで戦死した。


 残されたエリアの数はまだ分からない状況。

 そんな中でもラサミス達は、勝利の余韻に浸り、

 かがり火に照らされながら、肉を食い、酒を飲んだ。


 先の事は分からない。

 大天使や熾天使してんし相手に何処まで戦えるか、分からない。

 でもラサミス達も伊達や酔狂でこの天界まで来た訳ではない。


 この遠征の着地点はまだ見えないが、

 ラサミス達も一つ一つ問題を処理して、

 最終的には天使長相手にウェルガリアの安寧を勝ち取るつもりだ。


 だが今は休む。

 そう自分達に言い聞かせて、

 あるじを失ったこの楽園エリアで、

 仲間と共にゆっくりと心も体も癒やされる一時を過ごした。



次回の更新は2026年5月26日(火)の予定です。


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