第七百八十一話 剣聖対智天使ケルプ(後編)
---三人称視点---
「――ゾディアック・スティンガーッ!!!」
ほぼ零距離からの「ゾディアック・スティンガー」。
ヨハンの白銀の聖剣の切っ先から、黄緑色の衝撃波が放たれて、
智天使ケルプの腹部を暴力的に貫いた。
ケルプの腹部に大きな空洞が生まれ、
貫通した黄緑色の衝撃波は、
その背後に居た天使兵と機械兵も巻き込んで、
その進行方向を阻む物を容赦なく次々と打ち砕いていった。
床を抉り、敵兵を貫き、止まる事無く突き進んで行く黄緑色の衝撃波。
そして神殿の壁を綺麗に撃ち抜くと、
天に昇るような軌道で、空に吸い込まれるように消えていった。
「ふ、不覚……こ、この私がっ……」
腹部に大きな空洞が生じて、ケルプの生命力が急速に失われていく。
ケルプはふらふらと体を揺らせて、最後の言葉を呟いた。
「わ、私が死んでも……他の大天使が居る……ぐはぁっ!?」
それから間もなくして、ケルプは息を引き取った。
ケルプのソウル・ストーンの力は失われて、
数秒後にはケルプの心臓部にあるエンジェル・コアも停止した。
するとケルプの身体が徐々に消えて行き、
最後には力を失ったソウル・ストーンとエンジェル・コアだけが残り、
その姿は完全に消滅した。
「……これは回収しておこう」
ヨハンは地面に落ちた二つの石を拾い、
自分の携帯ポーチの中にしまいこんだ。
そしてその数秒後に、ヨハンの全身に物凄い力が漲った。
全身から溢れ出る力と万能感。
そしてヨハンは、腰のポーチから自分の冒険者の証を取り出す。
レベルの表記を見て、ヨハンは「なっ」という声を漏らした。
「凄い、レベルが89まで上がっている」
ほんの少し前までは、ヨハンのレベルは84だった。
それが一気に5も上がった模様。
尚、取得したスキルポイントは80であった。
「ヨハン、そんなにレベルが上がったの?」
「アーリア、本当だよ」
「ちょっと団長、見せてよ」
「いいよ、クロエ」
「あ、アタシも見たい」
クロエとカリンがヨハンの冒険者の証を凝視する。
すると確かにレベルの項目が89となっていた。
「凄い! 凄い!」
「うん、これはとんでもないわ!」
と、はしゃぐクロエとカリン。
「はしゃぐのはそれぐらいにしておこう。
まだ敵が残ってるからね。
ラサミスくん!」
「はい、ヨハン団長!」
「とりあえず協力して、
残った敵を倒そうじゃないか」
「はい、そうしましょう」
「うん、じゃあ全員協力して残敵掃討を行うぞ!」
そしてラサミス達とヨハン達、
それ以外の部隊も協力して残敵掃討を開始した。
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「残敵、処理、終了。はあ、はあ、疲れた」
ラサミスが声を枯らしてそう言った。
彼だけでない、周囲の皆も非常に疲れた表情をしていた。
だがこの神殿周辺の残敵掃討は無事に終わった。
しかし天界遠征軍も兵士8人、荷物持ち2人。
といった感じに十人近くが犠牲者となった。
これで天界遠征軍は、
この楽園エリアだけで252人から230人まで人員を減らす事となった。
「思った以上に被害が出ましたね」
「嗚呼、特に天使兵の捨て身の自爆攻撃が効いた。
だが被害状況は想定内とも言える。
とりあえず神殿の入り口の巨大な岩を破壊して、
魔王陛下達と合流を果たそう」
「そうですね」
その後、魔導師やレンジャーなどの職業が協力して、
ニャラード団長が陣頭指揮を執って風魔法などを駆使して、
神殿の入り口の巨大な岩の破壊に成功。
「うむ、どうやら無事に合流出来たようだな」
「ええ、魔王陛下。 それとこのエリアを支配する大天使も倒しました」
と、ニャラード団長。
「そうか、それはご苦労であった。
我々もこの岩を破壊して中に入るか、検討したが、
万一に備えて、ここに待機する事にしたんだが、
その結果、貴公等に負担を強いる結果となったな」
「いえいえ、魔王陛下の御身に万一の事があれば、
この天界遠征軍の土台が揺らぎます。
ですので陛下の判断は間違ってないと思います」
「そう言ってもらえると、心情的にも楽になる」
「では中へ案内します。
既に残敵掃討は終えてるので、ご安心ください」
「嗚呼」
そしてニャラード団長の案内のもと、
レクサー達魔王軍一行は神殿内部に入って、
無事にラサミス達と合流を果たした。
「おお、カーマイン! 無事であったか!」
「魔王……陛下、何とか無事さ」
「この神殿エリアの敵は駆逐したのか?」
「嗚呼、とりあえず天使兵と機械兵は全滅させたよ。
この奥にある祭壇エリアに、
ここのエリアを支配していた大天使ケルプが保持していた
コアらしき石を二つ捧げたら、次のエリアへ行ける。
と、祭壇エリアで自動音声が流れてきたよ」
「そうか、とりあえず先に行く目処は立ったようだな」
「でも少なくない被害が出た。
ここの戦いでも十人近くの戦死者が出た。
全体で見れば、人員も230人前後まで減っただろう」
「そうか、だが最悪の数字ではないな」
「まあな、でも先はまだ長い。
だから次のエリアへ行く前に、
この神殿とその周辺でキャンプを張って、
疲れた精神と身体を休めたい、と思ってるんだが……」
「そうだな、それが良かろう。
では体力に余裕がある者を優先して、
この神殿とその周辺にキャンプを張って、
このエリアにあるあの美味い水。
またあの一角兎や鹿のような獣を捕獲して、
食事にしようではないか。
このエリアでは空腹にならないそうだが、
やはり戦場においての食事と休憩は大事だからな」
「そうだな、マライア達――魔物調教師。
それとレンジャーや銃使いや弓使いにも
協力してもらって、このエリアの獣を捕獲してもらおう。
前に食った時は、なかなか美味い肉だったしな。
良い息抜きにもなるだろうさ」
「うむ、では早速だが準備にかかろう」
「嗚呼、そうだな」
こうして天界遠征軍は、無事にこの「楽園エリア」を攻略した。
予想していたよりかは、被害を抑えられたが、
それでも初期に比べたら、二十人近くの人員を失った。
その事も考慮して、
魔王レクサーは兵士達に休暇を与えた。
そして兵士達も魔王の計らいに心から喜んで、
まずは食料を確保する為に、神殿外に狩人達を派遣した。
次回の更新は2026年5月21日(木)の予定です。
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