第七百七十八話 大天使の矜持(後編)
---三人称視点---
「――我は汝、汝は我。 我が名は大天使ケルプ。
我は力を求める。 偉大なる炎の精霊よ、我が願いを叶えたまえ!
嗚呼、炎よ! 全ての物を焼き尽くせっ!!」
その呪文を唱えると同時に、
ケルプの両手に炎が集まり……やがてその炎は鳥の姿を取る。
「天の覇者、炎帝よ!
我が名は大天使ケルプ!
我が身を炎帝に捧ぐ!
偉大なる炎帝よ。 我に力を与えたまえ!」
ケルプは、そう口ずさんで両手を前に突き出した。
攻撃する座標地点は、ラサミス達が居る地点。
近距離が故に、魔法の威力は少し低めに設定。
但し速度に関しては最高に設定。
そして最後の呪文を大声で叫んだ。
「――火の鳥っ!!!」
そして発動する神帝級の火炎属性魔法。
炎で出来た鳥は、真っ直ぐラサミス達に向かって飛ぶ。
まともに食らえば、ラサミス達といえど、
重傷、下手すれば焼き殺される危険性もあった。
それぐらいの強力な魔力と威力を秘めた一撃だ。
だがラサミス達も只の木偶人形ではない。
無数の鳥の形を取った炎がラサミス達に迫る中、
剣聖ヨハンは冷静な表情で出るべき行動に出た。
「――我は汝、汝は我。 我が名はヨハン。
我は力を求める。 母なる大地ウェルガリアよ!
我に大いなる守護を与えたまえ! 『魔封陣!!」
するとヨハンの聖剣の刀身が輝く白光で覆われた。
半瞬後、輝く白光で覆われた聖剣がケルプの放った火の鳥を魔力ごと呑み込むように吸収した。
「――吸収能力かっ!」
「……想像以上に魔力が濃い!
ラサミスくん、まずはキミが速攻をかけろ!
ボクは体調が戻り次第、追撃するよ!」
「はいっ!」
「技の温存はするなよ。
キミの「黄金時間」ならば、
二回は得意の技や能力を使えるだろうよ」
「はい、では早速、全力で行きますっ!!!
――明鏡止水っ!」
ラサミスは有言実行すべく、明鏡止水を発動。
これによってラサミスの全身に力が漲り、能力値も倍加された。
少々、気が早いように思えるが、
ラサミスは「黄金時間」を一回使える状態。
だからヨハンの言葉に従い、出し惜しみする事無く能力を使っていく。
「――疾走」
まずは疾走で走力を強化。
そして左手に持った「吸収の盾」を再び背中に背負い、
右手に斬魔刀を持ったまま、全力で床を蹴った。
「――早い! 強化アビリティを使ったのか!?」
「さあな? それよりオレからのプレゼントだ!
喰らいなっ! ――零の波動っ!!」
次の瞬間、ラサミスの左手から白い波動が迸り、
智天使ケルプの身体に見事に命中した。
「なっ、これはぁっ!?」
ケルプは、咄嗟に自分の力や魔力が下がった事を理解した。
そしてケルプにかかっていた支援魔法や強化能力が強制解除された。
「――雷神剣っ!!!」
ラサミスは、続いて神帝級の刀術スキル「雷神剣」を放った。
ラサミスの斬魔刀に雷光が宿り、
狙いをケルプに定めて、斬魔刀を振った。
それと同時に稲妻が斬魔刀から解き放たれた。
「させるかっ! ――ルミナス・ウォールッ!!!」
ケルプは今後の展開の為に、
とっておきであるディバイン・ガードは温存して、
代わりに神帝級の障壁を張った。
そして解き放たれた稲妻が目映く輝いた障壁に衝突すると、
数秒間のタイムラグが生じた後、
爆音が生じて、強烈な爆発が巻き起こった。
「ラサミスくん、奴はこれくらいでは死なんぞ!」
「ヨハン団長分かってます!
だからここからラサミス仕込みの最強コンボで攻めます!」
爆発により視界が悪化するが、
ケルプらしき人影は神殿の頂上から、
神殿の床までゆっくりと降下していた。
無傷ではないだろうが、
ケルプもまだたっぷりと余力を残した状態。
だからここからは全力で攻めるっ!
ラサミスはそう胸に刻みながら、
右手に斬魔刀を持ったまま、再び全力で床を蹴った。
距離が迫る、後十メーレル(約十メートル)。
更に距離が迫る。 そこでラサミスが動く。
ラサミスはまずは腰を落として、突きを放つ姿勢を作る。
「――無明三段っ!!」
そして踏み込むと同時に、三つの突きを放った。
小手、逆小手と胴体を狙うが、
小手は体捌き、そして逆小手は白銀の長剣で払われたが、
最後の胴狙いは綺麗に決まった。
「ご、ごほっ!!!」
斬魔刀の切っ先がケルプの腹部に突き刺さる。
だがケルプの左手で斬魔刀の刀身を掴んで、
力尽くで斬魔刀の切っ先を腹部から抜き去ろうとする中、
ラサミスは左手で斬魔刀の柄を持ち替えて、
軸足を右足から左足に変えた。
「――ローリング・ナックルッ!!!」
ラサミスは前へ出る勢いを利用して、押し出すように右拳を前へ突き出した。
そしてその右拳がケルプの顔面に命中する寸前に内側に回転を加えた。
コークスクリューのジョルトブロウ。
その必殺パンチがケルプの眉間を綺麗に打ち抜いた。
「ぶほっ……」
会心の一撃が決まり、ケルプが酩酊したように、
身体をフラフラとさせて、後ろに数歩下がる。
ここで勝ちを確信するラサミス。
だが結果的にそれが油断に繋がった。
ケルプはよろめきながら、身体をラサミスに預けた。
それから自分の左手をラサミスの腹部に当てた。
そしてケルプは残された魔力を解放して、叫ぶように砲声した。
「――フレミング・ブラスターッ!!!」
次回の更新は2026年5月14日(木)の予定です。
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