第七百七十七話 大天使の矜持(中編)
---三人称視点---
「――五月雨突きっ!」
「――ペンタ・トゥレラッ!!」
「――デス・ジャグリングッ!」
「――ハイパー・トマホークッ!」
「う、うわあああァァァッ!!」
「糞っ! コイツら、思っていた以上に強いっ!」
アーリア、ミネルバ、ジョルディー、バルデロン等は
得意の武器スキルを駆使して、
智天使ケルプの護衛である天使兵と機械兵に
確実にダメージを与えて、その数を減らしていく。
大天使相手なら苦戦はするが、
天使兵や機械兵は今の彼女等からすれば、
比較的に戦いやすい相手であった。
またニャラード団長やレフ団長の率いる部隊も
この神殿内に陣取る天使兵と機械兵を確実に撃破していった。
だが神殿内には、ケルプの火炎属性魔法。
また破壊された天使兵や機械兵が身体から、
煙を吐き出しており、周囲には焦げ臭い匂いが漂っている。
そこでヨハンは、耳錠の魔道具で通話を始めた。
『ラサミスくん、想像以上に神殿内の煙が濃くなっている。
これ以上、悪化すると一酸化炭素中毒になる危険性がある。
厳しいかもしれんが、親玉であるケルプを
ボクか、キミで討ち取ろう!』
『そうですね、エリスの治療魔法である程度は、
治療出来そうですが、あまりゆっくりしてはいられないですね。
ではヨハン団長とオレが力を合わせて、奴をやりましょう』
『いやボクら二人だけでは駄目だ。
ジュリーくんにジウバルトくん。
それとクロエ、カリンとメイリンくんにも手伝ってもらおう』
『自分で良ければ、加勢しますよ』
と、耳錠の魔道具越しに答えるジュリー。
『オレもやりますよ』
『勿論、私もやるわよ!』
『うん、わたしも弓で加勢するわ』
『ならアタシは得意の魔法で!』
と、答えるジウバルト、クロエ、カリン、メイリン。
『とりあえずボクとラサミスくんで奴と戦う。
ラサミスくんは背中の「吸収の盾」を
左手に持って、頃合いを見て吸収機能を使ってくれ!』
『はいっ!』
『キミの吸収が間に合わない時は、
ボクが「魔封陣」を発動する。
「魔封陣」を発動したら、
能力全快で奴を攻めるぞっ!』
『了解ですっ!』
『良し、じゃあ行くぞっ!
中衛、後衛の皆はフォローを頼むぞっ!』
「ふっ、こそこそと作戦会議か。
それも良かろう、だが私は簡単には討てんぞ。
ハアァァァッ!」
ケルプはそう言って、左腕に魔力を注ぎ込む。
そして左腕を前に突き出して、
無詠唱で中級火炎魔法「ファイアバースト」を連発した。
「燃え尽きろ!」
ケルプの左手の平から緋色の炎が解き放たれて、
ラサミスとヨハン目掛けて急接近する。
「これぐらいなら躱すぞ!」
「は、はいっ!」
ヨハンの言葉に従い、
ラサミスもステップワークを駆使して、
上下左右を自由自在に動いて、迫り来る緋色の炎を回避する。
だがヨハンは全て躱しきったが、
ラサミスは何発かよけ損なって、
着弾する前に左腕に持った「吸収の盾」に魔力を篭めて、
二、三発ほど目立たない感じで緋色の炎を吸収した。
――だがこれでケルプは、この吸収能力に気付いたかもしれん。
――長時間戦えば、完全にその事に気付くだろう。
――だから吸収は最低限にとどめておく!
そして何とか緋色の炎を躱しきった二人。
そこでクロエ、メイリン、カリンの三人が反撃に転じる。
「――シャドウ・パイル連射ッ!」
まずはクロエが闇属性の錬金魔法を発動。
すると彼女の周囲に闇色の風が巻き起こり、
その風が太い杭のような形状と化した。
そしてケルプ目掛けて、闇色の杭が連射された。
「洒落臭い! ――疾走」
一方のケルプは自身の走力を加速して、
迫り来る闇色の杭を次々と躱すが――
「そこよ! ――シューティング・ブリザードッ!」
お次はメイリンが短縮詠唱で上級氷結魔法を唱えた。
そしてメイリンの漆黒の両手杖の先端の金剛石が眩く光り、
凍えつくような大冷気が迸った。
凍えつく大冷気がケルプ目掛けて、放射状に高速で放たれる。
「食らうものか! ――フライ・ハイッ!」
対するケルプの上級飛行魔法を発動させて、
漆黒の両翼を羽ばたかせて、神殿の天井まで飛翔したが――
「狙い通りよっ! ――ピンポイント・ショットォッ!!」
技名コールと共に、カリンが英雄級の弓術スキルを放つ。
カリンの弓から放たれた金の矢がケルプの左腕上腕部に命中。
「ぐ、ぐっ!?」
流れるような連係攻撃。
この一連の攻撃にはラサミスとヨハンも両目を瞬かせた。
だがケルプにしては、一瞬にしての窮地。
だからまずは右手の白銀の長剣を鞘に収めて、
左手に刺さった金の矢を抜くが、
その際に激痛で「うっ」という声を漏らした。
その間隙を突くべく、
ジウバルトがスリングショットを構える。
躊躇なく金属製の球を発射。
――――シュッ!
すると投擲された球がケルプの眉間に命中。
その衝撃は見た目では分からないレベルだ。
今の一撃でケルプの眉間の辺りの骨は陥没して、
空中を羽ばたいていた漆黒の両翼も力を失い、
重力の法則に従って、急降下するが――
「……アーク・ヒールッ!」
薄れゆく意識の中で、
ケルプは上級回復魔法を発動して、
目映い光を宿した左手で自分の眉間を触った。
それによって陥没した骨も治癒されて、
朦朧としていた意識がハッキリと戻った。
「……味な真似を!」
するとケルプの中で激しい憎悪が渦巻いた。
仮にも大天使である自分がちっぽけな少年に、
ちっぽけな武器で傷つけられたのだ。
それによってケルプの自尊心は傷つき、
その打ち合わせするのは、
この場に居る敵の全滅が一番の良薬であった。
「赦さんぞ、貴様等を赦さないぞっ!」
再び漆黒の両翼を羽ばたかせて、
ケルプは神殿の天井付近まで上昇して、
両手の平を合わせて、全力で魔力を解放した。
「貴様等、全員! 焼き尽くしてくれるわぁっ!!!」
次回の更新は2026年5月12日(火)の予定です。
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