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【連載中】MOBILE FORMULA 2135 -スターライガ∞ 逆襲のライラック-  作者: 天狼星リスモ(StarRaiga)
【Chapter 3-4】Focus on Escort

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【184】厄介な依頼

 トランシルヴァニア島――。


オリエント連邦最大の淡水湖であるヴワル湖の中央に浮かぶ、筆頭貴族シャルラハロート家の元領地の一つ。


島自体は現在もシャルラハロート家が所有しており、同家の屋敷である旧ヴワル王城や歴史的価値を活かした観光施設が建てられている。


しかし、それはこの島の表向きの姿。


関係者以外立ち入り禁止の区画にはスターライガの本部施設が隠されていた。



「――以上が今年度の事業に関する年度報告の途中経過だ」


今年の仕事納めが来週金曜日(12月23日)に迫る中、スターライガ代表代行ライガ・ダーステイはトランシルヴァニア島地下の本部執務室でデスクワークに励んでいた。


年度報告書はまだ未完成であるが、彼は顔パスで執務室を訪れた来訪者にその途中経過を見せながら説明する。


「ええ、報告ありがとう。ここ最近は大変な3か月間だったわね」


短めのハーフアップで纏めた空色の髪とワインレッドの瞳が特徴的な来訪者の名はレガリア・シャルラハロート。


筆頭貴族シャルラハロート家の現当主で世界一の総資産額を誇る実業家、そしてスターライガの共同創設者の一人だ。


3年前のルナサリアン戦争時までは最高指揮官として自らMFに搭乗していたが、現在は戦禍を被った事業の立て直しを優先し現場を離れていた。


「3年前ほどじゃないさ。国防海軍の第13独立艦隊が活躍しているし、宇宙の方もマリン達が頑張っているしな」


ルナサリアン戦争は地球人類の存亡を懸けた総力戦であった。


今回の対テロ戦争も決して楽な戦いではないものの、第13独立艦隊こと短距離戦術打撃群やスターライガから独立した人物が興したプライベーターなどが世界各地で奮闘している。


ライガの個人的見解となるが、彼が経験してきた戦争の中では厳しさはあまり感じられなかった。


「その第13独立艦隊は此間こないだもルナサリアン残党の弾道ミサイル攻撃を阻止したみたいよ」

「ソフィン王国の一件だろ? 一応俺達も緊急発進の準備はしていたが、それが徒労で済んで良かったぜ」


学生時代までさかのぼれるほど古い付き合いであるレガリアとライガは短距離戦術打撃群の話題で盛り上がる。


弾道ミサイル発射の緊急速報が流れた時はスターライガチームも戦闘態勢に入ったが、幸いにも核ミサイルがオリエント連邦に飛来することは無かった。


「俺だ――分かった、応接室に通してくれ。今からそっちに向かって対応する」


世間話に花を咲かせていたその時、ライガの執務机に置かれている内線電話機がコール音を鳴らす。


彼は話を中断すると受話器を取り上げ、予定に無い来訪者への対応について指示を出す。


「悪いなレガ、来客対応をしないといけなくなった」


通話を終えて受話器を戻したライガは社長椅子から立ち上がり、ポールハンガーに掛けてあるブレザーを着用しながらレガリアに事情を説明するのであった。


「連邦情報総局のエージェントだ。ちょっとした面倒事を押し付けられるかもな」



 スターライガ本部には複数の応接室があるが、いずれも同じインテリアで特筆すべき特徴は無い。


映画やドラマでよく見るフォーマルな感じの部屋だ。


「突然の訪問に対応して頂きありがとうございます、ダーステイ代表」


そんな応接室の一つに入室すると、先に部屋へ通されていた来訪者が待っていた。


パンツスタイルのレディーススーツでキャリアウーマンに扮する彼女はソファから立ち上がり、アポ無しで訪れたにもかかわらず面会に応じてくれたことに感謝の言葉を述べる。


わたくしは連邦情報総局のレギーナ・ピスクンと申します」


キャリアウーマン――レギーナ・ピスクンは自己紹介しながら名刺を差し出す。


じつは彼女は3年前にもスターライガと接触しており、その時の経験を買われて今回も依頼発注の交渉を任されていた。


「最高経営責任者代行、ライガ・ダーステイだ」


名刺を受け取ったライガは不審な点は無いと判断し、自らも役職と名前を名乗ってからソファに腰を下ろす。


「お嬢さんが来たってことは、政府や軍が表立って動けない案件なんだろう?」

「流石ですね。その通りでございます」


開始早々鋭く切り込んできたライガの一言に営業スマイルを浮かべるレギーナ。


物腰柔らかな佇まいでカモフラージュしているが、その正体は国家のために働く冷酷無比なエージェントだろう。


もしかしたらレギーナ・ピスクンという名前さえ偽りかもしれない。


「単刀直入に申し上げます。あなた方に対し最重要人物の保護を依頼したいのです」


ここで駆け引きをしても無駄だと判断したレギーナは早速本題に入る。


「……その最重要人物とやらは訳アリのようだな」


仮に最重要人物がオリエント連邦の人間であれば、オリエント国防軍を動員する大義名分には困らないはずだ。


あくまでも民間企業である自分達に話を持ち掛けてきた時点でライガは訝しんでいた。


「ええ……我が国の外交戦略に関わる人物ですが、正規軍を動かすと議論になるかもしれません」


口頭説明よりも資料を見せた方が早いと言わんばかりに、レギーナはアルミ製アタッシュケースから封書を取り出すのだった。



 面会の場で依頼受注を決めたライガは契約条件の最終調整を法務部に任せると、自身は依頼内容である《最重要人物の保護》の作戦立案に取り掛かる。


「――急ぎの仕事が入ったから、今日中に仕上げてしまうつもりだ」


だが、その前にやるべきことがある。


それはヴワル市郊外の自宅の妻ルチルに電話を掛け、夕食の準備は必要無くなったと伝えておかないといけない。


「徹夜にはならないだろうけど……雪が結構降っているし、今日はこっちに泊まろうと思う」


作戦規模が小さいので作業の労力自体はそれほどでもないが、あいにく今日のヴワルは吹雪に見舞われている。


外は既に真っ暗で帰宅困難な状況になりつつあるため、ライガは安全策を取ることにした。


幸いにもスターライガ本部には会社法や労働基準法に従い、企業規模に見合った快適で暖かい仮眠室が設置されている。


「明日の昼前にはそっちに帰れるよ。じゃあ、また明日……愛してるぜ」


久々に共に過ごせることを楽しみにしていた妻に残業を詫びつつ、私物のスマートフォンでの通話を終えるライガ。


「(まさか、あいつの妹さん――しかもシングルマザーが保護対象とはな……)」


さて、デスクワークに戻ったライガは資料を見るなり頭を抱える。


レギーナから渡された資料には保護対象の個人情報が記載されていたのだが、その内容と添付写真はあいつ――スターライガの元メンバーとの血縁関係を明示していた。


「(この時期の移動手段として車は心許無い。どこかのタイミングで航空機への乗り換えが必須だろう)」


ともかく、資料を参考にライガは大まかな作戦を練る。


保護対象を回収する時には自動車を使うことになるが、雪道では高速走行は難しい。


道路状況に左右されない航空機も保護対象の自宅敷地内には着陸できないし、道路を塞ぐわけにもいかない。


「(要人O.S.と接触する部隊以外に戦力を出すかは迷うところだ)」


他に考慮すべき点としては投入戦力の規模がある。


「(護衛戦力を堂々と展開すると耳目を集めかねないが、武力を伴う妨害行為の可能性もゼロではない)」


戦力は闇雲に投入すればいいというモノではない。


作戦自体の秘匿性と敵対勢力出現のリスク――ライガは難しい選択を迫られていた。


「(とりあえず草案を仕上げて、フランシスが定時で上がる前に見てもらうか)」


作戦決行のリミットまでは1週間ほど猶予がある。


ライガは白兵戦の経験が豊富な保安部員フランシスと今日中に協議するべく、執務机の上のキーボードを打ち始めるのであった。

【マリン】

プライベーター業界内で2番手の規模・実績を誇るキリシマ・ファミリーの創設者。

独立以前はスターライガに在籍しており、そこでMFドライバーとしての操縦技術やビジネススキルを学んだという。


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