護衛は噂の的になる
逆玉の輿もそれはそれで大変
「まあ、見て。杜若様よ」
「代々冬椿家に仕える護衛だっていうのに、薫子様の婚約者になったとか」
「身の程知らずもいいところだよな」
「どうして自ら辞退されなかったのかしら」
俺は杜若大地。学園の姫、冬椿薫子の護衛にして婚約者。今日は朝からずっと学園中の噂の的になっている。…まあ、言ってしまえば嫉妬だろうな。正直気持ちはわかる。
「まあ杜若家も家柄はいいっていえばいいし、弟もいるから後継者の心配もないしな」
「逆シンデレラストーリーみたいな?」
「それにしたってさぁ」
…と、周りが話しているとそこに割って入る奴が一人。
「おいおい、お前ら大丈夫か?相手はあの冬椿家の次期当主だぞ?下手な噂を流すと、自分で自分の首を締めることにならないか?」
「夏橘様…そ、そうですわね」
「それになかには大地と薫子様の仲を祝福してる奴らだっているんだから、噂もほどほどにな」
「わ、わかりました…それではご機嫌よう」
「はいはい、ご機嫌よう」
そいつは周りの噂話が止むと、俺に近づいてくる。
「…大丈夫か?大地」
「ああ。ありがとうな、千種」
こいつは夏橘千種。冬椿家や春桜家と並ぶ名家の生まれで、薫子繋がりで俺とも仲がいい。この学園では珍しく家柄だけで人を判断しない、いい奴だ。
「いいっていいって。しかしお前も大変だなぁ」
「まあな。けど、長年の片思いが思わぬ形で叶ったんだ。幸せだよ」
「おーおー、お熱いことで」
からかい混じりに千種が言う。こういうこいつの気安い所が俺は気に入っている。
「じゃあ、薫子が待ってるから俺はこれで」
「あいよー、薫子ちゃんによろしくー」
「はいはい、ご機嫌よう」
千種に別れを告げて薫子の元に向かう。だから、千種が独り言を言っているのなんて全く気付かなかった。
「しっかし、幸せ者だねぇ、大地は。…薫子ちゃんに告白すら出来ずに撃沈したやつもいっぱいいるっていうのにさ。ま、俺は薫子ちゃんの幸せのために応援はしますけどね」
-…
薫子の教室に着いた。薫子はいつも通り、机で本を読みながら俺のことを待っていた。
「…お待たせ、薫子」
「あら、大地。迎えに来てくれたのね、ありがとう」
「?いつものことだろ」
「だって、放課後にわざわざ迎えに来てもらえるなんて…なんだか恋人同士って感じがするわ」
…自分でも顔が赤くなるのがわかった。薫子はこういうことをさらっと言うから油断ならない。
「…お、おう」
「あら、大地、大丈夫?顔が赤いわ」
薫子が俺の額に手を伸ばす。冷たい手が心地いいけど、俺の顔は余計に赤くなる一方だった。照れ隠しに薫子をからかう。
「だ、大丈夫だって。ほら、行くぞ。お姫様」
「まあ!お姫様だなんて、大地ったら」
この可愛いお姫様を守るためなら、俺はなんだって出来るさ。
千種君は千種君でやがて運命の人と結ばれる…と思います




