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激突、クロルのライバル!?《神器の力》

「…………その、ナイフが神器……すか?」



「…………」



「ふざけてるんですか? 貴方は……」



「ふむ……」




四人から微妙な視線を頂きました!


俺の手にしている神器は、一見小さなナイフに見えるかもしれない。


だが、こいつには莫大な力がその小さな刀身に凝縮、内包されているに違いない。



「皆よ、感じないのか? こいつから溢れ出る力ってヤツをよっ!!!」



「何言ってるのか全然分かりません」



雪子さん、冷たいです。

雪女だけに。



「それで、その小刀でどうするつもりじゃ?」



「えー、あー」



どうすんだろ?



「ウフフ。ではその神器の効果の程を私達に見せて頂きましょう」



ガシッ。



「え、なんで雪子さん俺の襟首掴んで、えええええええええええっ!!!??」


「えいっ」



投げ飛ばされたァァァァァァッ!!!


激戦地の真っ只中へ一直線なんだけどおおおおぉぉぉっ!?






飛んで♪飛んで♪飛んで♪飛んで♪飛んで♪飛んでー♪


回って♪回って♪回って♪まわーるー♪



「ゴアァァァァァァァァァァァ!!!」



一直線に飛行する俺に気づいた巨人は拳を振りかぶり、迎撃体勢を整え始めた。


あと二秒後には全身がバラバラになった俺の死体が盛大に宙を舞うだろう。


本日二度目の死。


俺、終了のお知らせ。



――正に、巨人の右ストレートが俺の顔面を粉々にする瞬間、いや一瞬早く、俺の顔面に衝撃が走った。



「ゴフッ!?」



「チッ。余計な手間掛けさせやがって!」



「赤頭領、借りができたな」



何者かに顔面を強打され、そのまま地面に衝突する寸前、誰かに受け止められ、肩に担がれた。


声からして俺の顔面を強打したのがレーヴァテイン、今俺を担いでいるのはレインか。


俺を担いだ瞬間、レインは凄まじい速度でその場から後退、彩香達の元へと戻った。



「雪子ちゃん、あれはやり過ぎっす。いくら魔王様でもヘラクレスの一撃を受ければ即死っすよ?」



「すみません……」



肩を縮め、眉を申し訳無さそうに曲げた雪子さん。顔立ちがお人形のように整っているのでどんな表情でもふつくしい。


小さな彩香に怒られてしゅんとする雪子さん、という光景は中々に微笑ましいものであった。


ボソッと「死ねばよかったのに」と聞こえたのはきっと気のせいだろう。




まさか、いくらなんでも今日会ったばかりの奴にそこまで非道な真似はしないだろう…………いや、俺ってクロルなわけだから一応知り合いなのか……!?


だがそんなことより……



じーっ。


雪子さんがヤンデレを彷彿とさせる虹彩を失った瞳で睨んできた……。



それに対し、恐れつつも雪子さんへ恨みがましい視線を必死に送っていると、突然今までとは違った咆哮が俺達を襲った。



「グギャアアアアアアァァァッ!!!」



そちらへ向くと、なんと巨人が肩を抑え苦悶の表情を浮かべていた。



「グルアァァァァァ…………」



しかも呼吸も荒く、息も絶え絶え。さっきまでの雄々しさが嘘のようだ。



「どうしたんすかね……?」



彩香達も一様に疑問の表情を浮かべている。


巨人はとうとう膝を突き、錯乱状態とまで言える程の暴れぶりを見せ始めた。


そして、肩にある何かを振り払うかのように、肩の周りを掻きだした。



肩に何かあるのか……?


巨人の肩の辺りを目を凝らして見てみる。



……あ!



・・・ナイフ刺さってね?






うむ、この事から一つの仮説が立てられる。



あの巨人は先々代魔王の神器である巨人。その恐ろしさは先ほどの戦闘っぷりで重々承知。


その神器の巨人――ヘラクレス・バアルには生半可な攻撃は無効。


長老の話によると、



「奴は竜王様の火炎、レーヴァテインの奥義を幾度受けようとも自身の持つ恐るべき自己回復能力で復活しよる」


戦闘力もあれで全力じゃないらしい。


「ほれ、奴の身体に鎖が巻き付いとるじゃろ? あれのお陰でそれなりに動きを封じておるのじゃ。まあ、あの鎖だけでは心許ないから竜王様とレーヴァテインが気張ってくれとるのじゃが……」



そんな凄まじい怪物が、あーんなちっこいナイフが刺さったくらいで悶え苦しんでいる。



――そこから導き出される真実はただ一つ……!


そう、ずばり、俺の神器には――――神器に対して何かしらの効果をもたらす代物と見た!!


どうだ?この俺のバーローも腰を抜かす推理ぶりッ!


クク、そろそろ雪子さんにも俺の良さが分かってくれるはずだ。


なんせ俺には主人公補正が――「そんなこと見れば分かります。貴方は黙ってて下さい」



……てなことを皆にお伝えしたら辛辣な目をした雪子さんにバッサリと切り捨てられてしまった。ぐすん。



「……なら、あのナイフを使って戦えばいいんだな?」



そう言うと、レインは右手に黒い刀身の剣を携え巨人の元へ駆け出した。



「援護するっすよー」



彩香が何処からともなく白い札――式神を手に持ち、巨人に向かって投擲した。





彩香の投げた式神はやがて形を変え、白い蛇へと変化を遂げた。

白蛇はレインに追い越す速度で空中を駆け抜ける。


その蛇に追随するが如くレインは速度を上げ、巨人に相対した。



竜王とレーヴァテインは先ほどの戦闘で大分消耗しているらしく、手は出してこない様子。


連中は「俺らが苦戦してた奴相手にやれるもんならやってみろや」的な視線を向けていた。



上等だコラ。


やってやんよ!


彩香達が。




「グッ!? ゴアアアアアァァッ!!!」



巨人の叫び声に振り返ってみると、白蛇が奴の体をぐるぐる巻きにして動きを封じていた。


錯乱状態の奴はこの状況に焦り自身のパワーを奮えずにいた。


そこへ黒髪の黒騎士が颯爽登場。


驚異の跳躍力で巨人の体を駆け登ってゆく。その間斬撃を食らわすことも忘れない。


肩へ着地したレインはすぐにナイフを引き抜いた。


この一連の動きをアイツらは巨人と目を合わせずこなしやがった。視界が制限されているのにも関わらず、この正確な動きっぷり。


さすが俺の部下だわ!ハッハッハ!!



「グギャアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!」



顔を歪めド派手に叫び声を上げる巨人、ヘラクレス・バアル。





「……チッ」



巨人からナイフを引き抜いたレインは華麗に着地を決めたが、不快感に顔をしかめナイフを俺の足元へと投擲した。



「ふむ。神器は持ち主にしか扱えんからのう」



長老が俺の横でレインの方を眺めながら言った。



「ふーん」



ナイフを拾いながら俺は未だ苦しみの雄叫びを上げる巨人を見やる。


……すげえ辛そうだな。


しかも身体を鎖で雁字搦めにされているから痛みに身体をよじることもままならない。


……なんか可哀想に思えてきた。あれだろ、アンデットモンスターが聖水をぶっ掛けられたような辛さなんだろ?



そんなことを考えていたら、思わず巨人の辛そうな瞳を凝視してしまった。


瞬間、目が合う。



……あれ、確かあの巨人って強力な魔眼を……!?



「――!? お主、まさか奴の目を見ているのであるまいな……!?」



――冷や汗がどっと溢れるのを感じる。



だが、俺は吸い込まれるように奴の視線から目を背けずにいた。

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