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激突、クロルのライバル!?《運命の出逢い》





――此処から解放して欲しい。



切実に、そう目が訴えていた。


その瞳には悪意の欠片も見当たらない。


ただ純粋に救いを求めていた。



だからだろうか――俺は頭で考える前に巨人の元へ歩みを進めていた。


左手に神器の小刀を握りしめて。



先程の鬼神の如き恐ろしい姿、狂ったように暴れ回った姿が脳裏によぎるのに俺の歩みは止まらなかった。



近寄った瞬間に嬲り殺されるのでは、それどころか今この瞬間に石化してしまうのではないか、と不安は尽きない。


だが、今も尚視線は交わしたまま、俺は巨人の元へ近づく。



「魔王様っ!?」



彩香の悲鳴のような声が聞こえた。



「なっ……ば、馬鹿なのですか……?」



雪子さんも動揺しているらしい。


長老からも戻るように怒鳴られた。


しかし、歩みは止まらない。



なんでだろうな、分からん。



正直、打算的な考えはあったかもしれん。


ほとんど勘だが、こいつを助ければ必ず役に立つ時が来る、と。



――そして、俺は奴の足元まで辿り着いた。



「グルアァァァ……」



痛みに呻く巨人。肩の辺りを必死に掻いている。


やはり、この小刀は神器に大きな影響を与える代物らしい。



肩の傷口を見ると、鮮血と共に何か黒くモヤモヤした物が見てとれた。


……なんだあれは? すごく嫌な感じがする。



ふむ、何にせよ俺のやる事は決まった。


とりあえず――――!



「待つのじゃ! お主、何をしようとしてる!? まさか、その戒めの鎖を……!?」



長老がやけに慌てた様子で叫ぶ。


そりゃそうか。なんせ、化け物を封じてるこの鎖をぶった斬ろうとしているんだからな。


――この神器殺しの小刀でな!



「ていっ」



パキンッと澄んだ金属音。




「グルアァァァァァァァァァッ!!!」



「やっぱり鎖の方も神器だったか」



鼓膜が痺れるほどの轟音。


鎖から解放され、元気よく立ち上がった巨人による咆哮だ。


しかし、最初に感じた禍々しい気配はもう感じ取れない。


むしろ、晴れやかさから来る喜びの雄叫びのようだ。



「……お? あれは……」


巨人の咆哮によって追い出されるように、奴の肩から徐々に黒くモヤモヤとした怪しげな物体が……。




黒くモヤモヤした物体は煙状となり、部屋の出口目指して一目散に飛んでいく。



「なんだあれは?」


「この気配……まさか」


「あれって魔王様の……!?」



俺にはまったく心当たりはないが、俺の部下達は一様に驚愕の表情。

長老も驚愕の表情。

さらにはレーヴァテインも驚愕の表情。


ついでに俺も驚愕してみた。



「な、なんだってー!?」


「だまれクロル! 余計なもん持ち込みやがって……」



えー。

レーヴァテインに怒られた。



「余計なもんって……あれ俺のなのか?」


「ああ。ありゃあどう見ても悪魔だろうが」



いや、どう見ても分かりませんが。


というかなんでその悪魔が巨人の体内に入ってたんだ?


と、考えていたら、部屋の出口付近で留まった黒煙から何やら声が聞こえてくる。



(……助かったぞ……今代の契約者よ……我は同胞の集まる場へと赴く。西だな?)



「……? ああ。西にずっと行けば魔王城がある。そこにたくさん悪魔がいるんじゃないか? たぶん」



(クク。そなた……今代の契約者の匂いがするが、どこか違和感があるな……面白い……)



そう言い残し、黒煙は去っていった。





「やっぱりてめえんとこの悪魔なんじゃねえかっ! 何だ、何を話していたんだコラッ!!」



「な、な、なんだよ」



揺らすな揺らすな。

俺だけ揺らしてどうする。


揺らすのは女のおっぱーだけで十分だ。



「ま、魔王様ーっ! そんなことより、そこにいては危険です! 早くヘラクレスから離れてくださいっす!!」



お、そうだった。

目の前に真っ黒い巨人がいたんだった…………あれ?



黒くない。


黒くない巨人が目の前に落ち着いた様子で佇んでいた。


先程の邪悪めいた黒色でなく、淡い灰色といった感じだろうか。



「……アアン? やんのかコラ」



巨人の視線に気が付いたレーヴァテインがガラの悪いヤンキーのような態度で絡みだした。


お、よく見ると巨人の瞳から怪しげな気配が消えている。魔眼も無くなってるんじゃないか?



もしかして、今までこいつが暴れてたのって……さっきの悪魔のせいじゃね?





(そうです。そうなのです。貴方様のお陰で助かりました)



「えっ?」



今、俺の心の台詞に対してどこかの女の子が反応したような……?



(……もしかして、気付いてませんか? こっちです。こっちですよー)



馬鹿な、こんな儚げな可愛らしい声音の女の子に気が付かないなんてあるわけ無いやろがッ!!!



声のする方向に振り向いてみる。

そこにはゴツい体型の巨人しかいなかった。


うーん、どこだろう。

もしかして、巨人の後ろの影に隠れているのか?



そう思い、巨人の横に回ってみるが誰もいない。


ふむ、気のせいだろうか。



「なあ、女の子の声聞こえなかったか?」


「は? あいつらのことか?」



彩香や雪子さんのいる方を指差し、レーヴァテインは答えた。


……むむ。

やはり俺の聞き間違い、幻聴か。



(あの……。目の前にいるんですけど……)



目の前……だと……?



いないぞ?


もしかして、透明化してるのか?


そう思い、両手を突き出し、あちこち探ってみる。


ぐへへ。

こういう場合、ハプニングで女の子のおっぱーに触れてしまうのはもはやテンプレだな。



……ん?


何も感触がない。


柔らかくない!


もしかして…………







胸に悩む少女なのか?



なるほどな……



興奮してきた。





なら、俺が手伝ってやろう。


もみもみもみ。


もみもみもみ。



しかし、手の平をグーパーグーパーと開いては閉じてはしてるが、肌の感触はおろか、何の感触もあらへん。



なんでや!



(あの……何をしてらっしゃるのですか……?)



「いや、君のことを見つけようと思ってな」



もみもみもみ。


もみもみもみ。



いない。



(だーかーらー)



ちょっと拗ねたような、可愛らしい声音で彼女はそう言い、



(ここにいるじゃないですかー)


     

何故だか、ガチムチ体型の巨人がこちらへと走り寄ってきた。





ドスン、ドスン、ドスン、と豪快な足音を撒き散らしこちらへと走り寄ってくる。



おいおい、マジかよ……落ち着いたかと思ったらまた暴れ出すのか……?


助けを求めるようにレーヴァテインの方を見てみる。


が、



「……」



あれ?

戦闘態勢を解いてる……?



「おいレーヴァテインよ、巨人がこっちへ向かってきてるけど迎え撃たないのか?」



「アン? その必要はねえだろ。今のあいつには殺気がねえ。こちらが手出さねえ限り安全だ。それより、他にやる事がある」



そう言い、奴は巨人の方へと歩みだした。



(ひっ……さっきのこわい人……)



え、なんで女の子が怖がってるの?


やっぱり近くにいるのか。


「大丈夫。安心しな。君は俺が守る。この赤い奴は見た目はヤンキーだが、中身は純情ロマンチカだから怖がることはない」



(……!)



自分でも何言ってるから分かんね。


でも幼馴染の為、自分より遥かに強大な敵に立ち向かっていたアイツがそれほど悪い奴ではないことは何となく分かる。



「記憶喪失のてめえに何が分かる! まあ記憶喪失でなかろうと変わらねえけどな」



やべ、プンプン怒ってる。


それより、あいつは巨人に何をしようとしてるんだ?




「――今のお前に出来るか分からないが、石化された奴らを元に戻す事は可能か?」



――そうだった。


今、赤い瞳を揺らし、切実な表情をしながら、これまで死闘を演じてきた者に頼みを乞うこいつはその為に、その為だけに今までで戦い続けてきた。



石化された幼馴染、同胞達を助ける為に。


竜人一派の頭領としての大量の仕事をこなしつつ、この火山で竜王と共に強大な敵に立ち向かう。


並大抵の覚悟では出来ないと此処へ来る途中、長老は言っていた。




(う……こわいけど……わるい人ではなさそう……が、がんばってみます……!)



いや、君が頑張る必要はないぞ?


頑張るのはそこのゴッツい巨大のおっさんなのだから。


所で、この可憐な声はどこから聞こえているんだ……?


さっぱり分からん。



ため息を吐き、何となしに辺りを見渡してみる。



「……お? おお!?」



吃驚仰天。石像達が光を放って――



「リーシャ……!」




石像に劇的ビフォーアフター以上に劇的変化が訪れたのはその後のことであった。

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