激突、クロルのライバル!?《リンside》
自分は竜人一派の頭領の後をつけていた。
理由は明白。
殺す為。誰にも知られることなく暗殺する為。
そう、自分は感情の無い殺戮人形。
そうやって今まで生きてきた。
夜道に潜み、依頼人が指定した者を殺す。
時には男を色香で惑わし、殺した。
時には女をも惑わし、殺した。
全ては依頼されたから。
自分はこれからもそう生きていくのだと、そう思っていた。
でも――
『リン~暇か? 遊びに行こうぜ』
『今日は楽しかった。また遊ぼうなー』
『えっ、ちょ、まっ……』
『お前のおっぱいを忘れるものか』
最近、変な友人が出来た。
ホントはとても偉い上司なのだけど、そのヒトはとても変わった人で、自分のことを友人のような扱いで接してくれた。
自分が暗殺を生業とする忍者だと知っているのに、数多くいる魔族の部下の一人としてでなく、友人として接してくれた。
妙な気分だった。でも嫌な感じではない。
普段は感情をコントロールして陽気に振る舞ってみたり、自分なりの語尾を付けたりして相手に明るい印象を抱かせたり……
男性の三歩後ろを歩く貞淑な女性に成り、相手に落ち着いた印象を与えたりと、殺す相手が油断するような女を演じているけれど、この人の前だと自然体でいられた。
それでも語尾は相変わらずだけど。
――だけど、その変わった友人も今日死んだ。
これからは今までと変わらず殺しだけの日々を送るだけ。
そう、大して変わりはしない。
自分には感情など最初から無いのだから。
だから涙も出ない。
彩香殿のように涙も出ない。本当に彼を想うならば涙の一つも出るはず。
泣こうと思っても泣き方を知らない。
けれど、そんな自分に嫌悪する暇なんて存在しない。
自分はただ、標的を殺すのみに存在する。
此処へ来る前からの依頼。
竜人一派が魔王城へ戻る可能性は元より皆無。いずれ敵になるならば早期に手を打つという判断だろうと上司は言っていた。
自分はただ、依頼を遂行するだけ。
これは私怨ではない。
・ ・ ・
見えた。
崖の縁に佇む異様な人影が一つ。
岩陰から様子を窺い、時期を待つ。
一瞬のミスも許されない。
背後から首元を刎ねる。それだけ。
……標的が地面に腰掛けようと動いた。
……今!
音一つ立てることなく、気配を微塵も立てずに背後に降り立つ。
あとは手に持つ刃を標的の首元へ……。
――瞬間、脳裏にあの人の笑顔が蘇る。
馬鹿な……っ!?
初めて、手元が狂った。
殺しで致命的なミスをしたのは人生でも初めてかもしれない。
「ああん? 何してんだテメエ」
気付かれた。
殺される。正面からでは確実に勝てない。
「……ったく。転移魔術でも使えたらセーレも一瞬で呼べたものを。ソーサラーの一族も早く連れ戻したいところだ」
突然の乱入者。
それは自分の上司でもある人物で……。
「レイン。これは貴様の差し金か?」
「さあな。だが、お前が生きていると困る奴らもたくさんいるって訳だ」
「そうか……」
標的の感情が高ぶってゆくのが傍目で見ていても分かる。
二人がかりなら、あるいは……。
「レイン殿、依頼は続行でござるか?」
「まあな。それに、お相手の方もやる気満々みたいだしな」
「グルアアアアアアァァァッ!!!」
まるで竜の雄叫び。
轟音と共に辺りに突風が押し寄せ、肌にピリピリと痛いものが走る。これでは迫力に飲まれる……。
「……どうやら拙者は虎の尾を踏んでしまったようでござるな」




