激突、クロルのライバル!?《決闘前》
「ここが竜の住まう山、煉獄火山っす!」
体感温度、50℃余裕超。
辺りは灼熱地獄。真っ赤っか。マグマも垣間見える火山地帯。
自分の吐く息が痛い。
上を見上げると、たくさんある中の一つの山の天辺からマグマが噴出していた。噴火が至るところで起きている。
よく見ると、山の周りを巨大な怪鳥がバッサバッサと飛行していた。そのうちドラゴンでも出てきそうだ。
気分はドラゴンを退治しに来た勇者様。はあ。
それにしてもクソ暑い。気分はやっぱり最悪。
そんな地獄へ、俺は来てしまった。
「アッチィィィィィッ!!!」
どうして皆平気そうなんだ?
「あ、すいません。魔王様魔術忘れてるんでしたね」
そう言って彩香は右手から綺麗な青光を発生させ、俺に振りかけた。
すると、熱感が急に収まってゆく。
どうやら全員魔術で対策済みだった。
「お前ら…この……このこのこの!」
とりあえず彩香の頭をくしゃくしゃにしたった。
「わっ! ま、魔王様っ……!」
「このこのこの」
あんまりムカついてないけど彩香の髪がさらさらで気持ち良いため、少しの間だけ楽しんでいたら、
「へっ、ガキ苛めとは随分と偉くなったもんだな。クロルっ!!」
変なイケメンが現れた。
うわー絶対これ面倒臭いことになるパターンだわこれー。
こいつからプンプン臭うもん。
これから戦うぜオーラがプンプンするもの。
そんな面倒臭いオーラを放つのは赤髪のイケメン。しかし、明らかに人間ではない。
背中には赤い翼、そして尻尾。耳は鋭利でまるで刃物のよう。民族服っぽい服の隙間からは鱗に覆われた体表が見てとれる。
体型はスマートと言ってもいいが、鋭い流線型を思わせるフォルム。ついでに瞳も鋭く、赤くギラついた輝きを放っている。
竜人と言われて納得のいく容貌だ。強そう。
「レーヴァテイン様、ガキ呼ばわりはヒドイっすよ」
彩香は心外そうに言う。
まあ見た目は完全にどう見てもガキンチョだけどな。
「うるさい! こんなへなちょこな奴に何時までもくっついてるお前らなんぞガキだガキッ!」
あら。なんか煽り耐性低そうな奴ですな。とても感情的だこと。
何というか、思ってる事が顔に出やすいタイプだな。分かりやすい。
それに比べて、彩香はというと、
「ふふん、レーヴァテイン様だって竜王様や長老様にご執心じゃないっすかー」
悪戯な笑みを浮かべ、軽く挑発。
さすが彩香。見た目と中身のギャップがたまらん。
「な、なんだとっ!?」
おほっ。分かり易っ!
彩香を睨んでいると思っていたら、突然こちらに振り向きギロリと視線を向けてきた。
「おいクロルっ!!」
「な、なんだ?」
他人の名で呼ばれるのは慣れないが仕方無い。
「決闘だ! この前の決着を今付けてやるっ!!」
なんだと?
「この前のって何だよ」
「レーヴァテイン様、魔術伝達でお伝えしたように現在の魔王様は記憶を失ってまして……」
「……っ!? ぐ、ぐぬぬ……」
「ムフフ。拙者、竜人一派の頭領を見るのは初めてでござるが中々に面白いお方にござるなあ」
リンが口元を手に当てニヤけながら話に参戦してきた。
レインは一向に沈黙。というかここへ来るまでほとんど喋らずだ。クールイケメン枠を狙っているのだろう。ムカつく奴め。
だが、クールイケメン枠はもう俺で一杯さ。
「……なんだコイツは」
赤髪イケメン、いや赤髪イケドラゴンメンのレーヴァテインがとても不愉快そうにリンを睨む。
「その子はうちの期待の新人のリンちゃんっすよ。まだ幹部級じゃないすけど実力はもう一桁台と言っても過言じゃないっす」
「ほう。だが俺達が抜けてから幹部級の一桁台も随分と減って下の奴らが繰り上がっただけじゃないのか?」
「むっ。わちらだって頑張ってるんすよ?」
レーヴァテインの馬鹿にしたような口振りに頬を膨らませ怒りを露わにする彩香。
「ところで幹部級って何よ?」
「は?」
前々から気になってたんだよね。
とりあえず強そうってのは分かるんだが。
せっかく仲良くしようと思ってレインに話しかけてみたのに半眼で睨まれてしまった。
「んなことも知らなかったのか?」
ム、ムカつく……!!
「拙者が説明するでござる!」
おう、リンは優しいな。
手を元気よく上げて俺の元へ駆け寄ってきたリンがにこやかに説明してくれる。
「幹部級は、城内会議の議員達に推薦されて認められた者が成れる魔王城の幹部みたいなものでござるよ。強くないと成れないでござる」
あの俺を馬鹿にしくさっていた奴らか。
あいつらの推薦がいるのか。
「議員の奴らに決められるのか? あんな頭の堅そうな連中にか?」
「あの中には幹部級もいるでござる。幹部級達で構成される下院、貴族達で構成される上院。この二つの院の討議で城内会議は行われているのでござるよ。まおーの言う頭の堅い連中っていうのは恐らく貴族達のことでござろうな」
「なんだかイギリスの二院制みたいだな」
「エゲレス? なんでござるか?」
「あ、何でもねえ。じゃあさっき彩香らが言ってた一桁台ってのは順位的な何かか?」
彩香とレーヴァテインはまだ何か言い争っており、こちらを見向きもしない。
好都合なのでそのままにしておく。
このまま何もないまま帰れたらいいのだが。
「そうでござるな。でも単純な強さだけじゃないのでたとえ一桁台とはいえ、めっちゃ強い! とは限らんのでござる」
「へえ。知略に長けてたり人望が厚かったりとかそんなんか?」
そういや、紅が成りすましていたシャトラ・ラネーゼは五位ってなってたな。中々凄い奴だったんだな。紅に乗っ取られたけど……。
「まっ、そんな感じでござる。幹部級は我々魔族の要と言ったところでござるな」
「その要の幹部級も昔と比べ、随分と減ったらしいがな。おかげで今は貴族のアホ共が調子に乗る始末だ」
レインがやや感情の乗った声音でそう言ってきた。俺に、ではなく貴族に恨みがあるのだろう、遠くの空をキツく睨んでいた。
「まあ幹部級が減ったのはお前のせいなんだがなっ!」
ピクッ。
彩香の頬がピクッと痙攣した。
表情が消え、無表情に近い顔色。
「まあいい。そんなことはどうだっていい。俺はお前と決着が付ければそれでいい。クロルっ! 記憶が無くても構わん、俺と勝負しろっ!!」
俺に宣戦布告してきた。やはりこの展開か……っ。
――だが、それより彩香の様子がとてもおかしかった。
今は元に戻ってるが、あのままレーヴァテインが口を滑らしていたら……どうなっていたか。




